ニホンノカタチ 旅恋ver. by yOU(河崎夕子)

第49回 「長野の里山で出会う職人の哲学と想いー「職人館」ー」(長野県佐久市)

長野県佐久市に佇む蕎麦屋「職人館」。

この店の名前を耳にしたとき、「職人」と「館」という言葉の組み合わせに強く惹かれました。まるで、技を極めた人々が集う秘密の場所のような響きを感じたからです。約30年前に築100年の古民家を改築し、農家レストランとして始まったそう。

訪ねた際に印象的だったのは、広大な田園風景と大きな空を抜けた先に、静かに佇む「職人館」があったこと。まるで風景の一部になったかのような静かで美しい佇まいがあまりにも素敵で、建物を眺めながらさりげなく置かれた松ぼっくりに心奪われたり。外観の設にも心奪われて、なかなか中に入ることができませんでした。

佐久の広大な田園と空に囲まれて向かいます

設にこだわりが感じられる美しいアプローチ

そして中に入れば木の温もりに包まれた空間。長い年月をかけて磨かれた職人の哲学が静かに息づいているようでした。ここでは、ただ「食事」をするだけではない、もっと奥深い体験が待っていそう!と期待たっぷり。

中に入ると窓の外にも広がる景色

「職人館」の主人・北沢正和さんは、地元の食材を最大限に生かすことを大切にされています。旬の野菜や野草、地元で育ったそば粉。それらを組み合わせた料理は、見た目も味わいも自然そのもの。季節ごとに変わる野菜や野草を始めとする食材を用いた料理は、いずれも素材重視。口にすると山の香りや土の力強さが広がります。また特に印象的だったのは、佐久春日で育った大豆「さといらず」を用いた手作り豆腐。豆の味がしっかりしていて、食べ応えもあり、まさに大豆本来の豊かな風味が感じられました。これらの料理の数々は、滋味深く、体の中を浄化して、活力を与えるような感覚を受けました。色とりどりの季節野菜のサラダと豆の味がしっかりした手作り豆腐

主役の蕎麦は、地元産の蕎麦粉を石臼で挽いた手打ちの十割蕎麦。しっかりとした中太麺を噛んでいくと、ほのかな甘みが広がりました。まずは塩でお蕎麦の味をしっかりと味わいました。続いて蕎麦つゆで。こちらも出汁がしっかりと効いていて甘めの醤油もしっかり感じられました。それでも最後は蕎麦湯で飲み干すほど。

蕎麦はしっかりした手打ち中太麺。絡みにくいため濃い味の蕎麦つゆだそう

北沢さんの料理には、職人ならではの探究心を感じられました。野草一つとっても、どのタイミングで摘めば最も香りが立つのか、どう調理すれば素材本来の力を引き出せるのか。そうした研究を重ねた末の料理だからこそ、食べる側にもその情熱が伝わるのでしょう。食材への深い理解とこだわりには、まさに「職人」の名がふさわしいと思いました。

そんな北沢さんは、料理だけでなく、食と自然をテーマにした書籍も執筆されています。『なりわい再考 聞き書き 昭和の手仕事職人』という著書もあり、タイトルを見ただけでも惹きつけられますね!

店主の北沢正和さん

食事を終えて一服、窓の外を眺めれば、佐久の穏やかな里山の景色。ここに流れる時間は、都会とはまるで別物です。ゆったりとした時間のなかで、職人が一つひとつ手をかけた料理を味わう。本当に贅沢な体験でした。

「職人館」は、ただ蕎麦を食べる場所ではないのだと思います。土地の恵み、職人の技、そしてそれを受け継ぐ哲学と想いが静かに息づく場所。訪れるたびに、日本の食文化の奥深さを改めて感じさせてくれるのです。

次に足を運ぶときは、どんな季節の彩りが迎えてくれるのでしょうか...。

美しい里山風景が迎えてくれます

「職人館」
〒384-2205 長野県佐久市春日3250-3
0267-52-2010

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