京都はいつ行っても楽しい。季節ごとに違う顔が見られるし、インバウンドでごった返す観光地へは赴かなくても、ギャラリーを巡ったり、新しい店やなかなか一見では入れない店に在住の友人に連れて行ってもらったり。
そして最近の京都への旅は、私なりにルールを決めていて、完全に1人で過ごす日を必ず設けるようにしています。
なぜなら町のあちこちに目が向けられて、今まで見えなかったものに気づいたりするから。
そんな中、実は長年気になっていることが。
先斗町を歩いていた時のこと、京町家の艶やかな街並みに見惚れながら歩き進めて、ふと見上げれば屋根の上に黒いオブジェらしきものが。
よく見れば、そのディテールといえば、長い髭を持った老人が怖い面持ちで斜め右を見上げて、空を仰いでいるのです。
沖縄では屋根の上にシーサーが据えられている見覚えがあるため「魔除けのようなものかしら。」と思いつつ調べてみると....
オブジェは瓦で造られた「鍾馗(しょうき)さん」と呼ばれる、町屋の屋根の上の小さな守り神でした。「鍾馗」とは中国の道教の神様。平安時代には日本に伝わっていたそうです。
その守り神はどれもが長い髭を蓄えて、中国の官人の衣装を着て剣を持ち、大きな目で何かを睨んでいる様子。京町家の屋根にこれが据えられ始めたのは江戸末期ごろとか。
ある薬屋が厄除けに鍾馗像を屋根に設置したところ、向かいの家も、そしてまた隣の家も...と広がって行ったそう。京都らしいエピソードかもしれませんね。
普段目に入らないものにふと気持ちを唆られるのが旅情というものでしょうか。京都には限らないのですが、神社仏閣で見かける吊灯篭(つりとうろう)も見上げて気になる存在の一つでした。その装飾はそれぞれが異なって美しく、つい見上げてシャッターを切りたくなります。祇園の町では広告用に献灯された吊灯篭が連なり、風情たっぷりに夜の花街を演出していました。
見上げて楽しい京都らしい眺め。最後にご紹介するのは花街の京丸うちわ。これらは夏の風物詩の一つで、芸妓さんや舞妓さん、地方さんが料理屋さんやご贔屓の方に配る名前入りのうちわ。朱色に縁取られた白い丸うちわが並ぶ風景は、正に京都の夏を感じさせるものでした。
カメラを片手に町歩きをすると、気になるものがあちこちに。旅先の町歩き。見上げたり見下ろしたり、1人であてもなくぶらりと歩く時間も楽しんでみませんか。