「日本人の心のふるさと」と古くから親しまれる「お伊勢さん」こと、伊勢神宮(正式名称・神宮)。世界中から参拝者が訪れ、日々外宮内宮とも賑わっています。
私の初めてのお伊勢参りは、和歌山に取材で赴いた帰りに「そうだ!伊勢神宮に行こう!」と紀伊半島をぐるりと周って行く計画を立てたところ、あまりにも紀伊半島は広く、海岸線を行く列車で4時間近くかけてようやく到着したら、もう既に閉所まで30分!慌てて駆け足で参拝してヘトヘトになった...という苦い思い出。
その後二度三度と訪れる機会を得て、その特別な空気に触れてエネルギーをいただいてきました。
これは少し前のことですが、お伊勢参りの後、伊勢市駅発の電車まで時間があったので、せっかくなら帰路に着く前にと駅周辺を散歩したときのこと。駅を挟んで逆側に歩いてぶらぶらとしていたら、ふと見つけた古い建物。「二軒茶屋もち」と暖簾があって和菓子屋さんのようでした。木造の趣と軒先の赤い丸型ポストの風景にぐっと惹きつけられて、そのまま角を曲がって路地に入っていきました。
古民家が立ち並ぶ細い路地は、とても魅力的な風景でした。昔「裏路地マニア」という異名をいただいて、雑誌などで裏路地を紹介していたことがあったのですが、正に吸い寄せられるような、不思議な魅力を持つエリアでした。
古い路地はタイムスリップしたよう/
伊勢志摩エリアの軒先には「笑門」という注連縄が年中飾られている
ひと気の少ない路地を更に進むと古民家だけでなく、蔵が立ち並んでいました。そしてその先には川が流れ、一気に視界が開けました。
比較的広いその川には船着場のようなものがあって、そこには白い木造の建屋。それはまるで古い駅舎のようで一気に写欲が上がりました。かかっている看板が見えて対岸に渡ってみることに。
看板を見れば。「え?河崎?」 驚きに声をあげてしまいました。よくある名前ではないため、こんな場所でまさか自分の姓と同じ二文字を目にするとは思ってもみませんでした。まるで導かれたかのようで不思議な気持ちでした。
その後調べたところによると、この町は江戸時代から伊勢市の中心を流れる全長およそ7㎞の「勢田川」の水運を利用した問屋街で、商人の町として発展したそうです。伊勢神宮への参拝客への物資を供給する「伊勢の台所」とも呼ばれていました。当時の面影が感じられる町並みの古民家や蔵は、今はカフェやショップとして活用されています。
私が見つけた船着場も現在は写真スポットとして人気だそうで、元々は伊勢市内を走っていた路面電車の駅舎をイメージして造られたものだったとか。
伊勢神宮をお参りした直後にこの町に出会ったのは、単なる偶然ではなかったような気がしました。この町の景観は、かつて栄えた歴史に思いを馳せるだけの見応えがありました。
そろそろ伊勢参りの時期でしょうか。そしてまた「河崎」にも足を運んでみよう。