ニホンノカタチ 旅恋ver. by yOU(河崎夕子)

第31回 温故知新!かつお節をこよなく愛する若きイノベイターのこれまでとこれから(後篇)

現在渋谷の「かつお食堂」を切り盛りする店主の「かつお」ちゃんこと永松真依さんにフォーカスします。前編では彼女がかつお節に惚れ込んで食堂をオープンさせるところまでのお話でした。https://www.tabikoi.com/you30/

2017年にオープンしてからも変わらずに、実直にかつお節と向き合っていたかつおちゃんの手がける「かつお節ごはん」はすぐに話題となって、店に行けばいつでも行列ができていました。長い列の後ろに並んで店内を覗けば、とびきりの笑顔でかつお節を手削りして、その合間に「かつおはどんなルートで回遊しているのか」「どこで水揚げされてどこでどう作られているのか」を怒涛の早口で話す様子は、さながらエンターテナー。

これを毎日開店中ずっとやっているわけだから尋常ではありません。

さすがに体調を崩して、自分一人で全てをやっていたことが原因だと気づいてからは、個人戦からチーム戦に切り替えるようになっていきました。自分自身に課していたあれやこれやを他人に任せることで、肩の力を抜いて毎日が過ごせるようになったのは、本当につい最近のことだとか。

間借りしていた店舗から自分の店を構えて体制が整ってきた現在は、世界中から注目されるようになり、有名アーティストやシェフも海外から足を運ぶほど。

それでも今も土日は1日に100人分のかつお節を手削りしているというから驚きです。

かつお節ごはんは毎日70~100人分提供する

「好き」を形にするというのはなかなか難しいこと。

「好き」のその先で学びや経験から知識を増やし、じっくりと時間をかけて「形にする」を実現させていった彼女は、周囲の職人さんからもやっと認めてもらうようになり、それまで聞けなかったことを聞けるようになり、より知識が増えると同時に問題点にも気づき深く考えるようになりました。そこで、食堂の体制が整ってできた時間を次世代に繋ぐ「食育」にあてたいと思うようになったのです。

全国の保育園でのワークショップや、そのお母さん世代向けのワークショップを手がけるようになると、新たに気づくこともありました。

なかでも、子供たちがかつお節を削って口にした時のシンプルな反応に「本能」を感じたと言います。かつおちゃん自身が、かつておばあちゃんの削る姿に感動して手にしたかつお節との出会いの原点に戻って、あまり難しく考えすぎずに自由なスタイルで、かつお節や出汁のポテンシャルを伝えていきたいと思えるようになりました。

フワフワもガリガリもかつお節はそれぞれの美味しさがある

これから先はと尋ねれば、より知識や経験を深めると同時に食堂では次世代を育て、海外にも出汁のことを伝えていけるようになるために、英語の勉強も始めたそう。

既にフランスに行くことが決まっているかつおちゃん、これからも回遊魚かつおごとく自由に泳ぎ周りながら、かつお節伝道者として活躍していく姿に目が離せません。

彼女の削る姿もおばあちゃんに負けない美しさだろう
 (2018年一緒にイベントを開催した際に撮影)

書籍「鰹節を手削りする 美味しい暮らし: 日本の味いただきます 」(主婦と生活社)
2023年2月17日に発売になりました。私も撮影で関わらせていただいています。

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