深川エリア。
江戸時代に漁師町から繁華街に変化していったこの町は、下町風情が漂い魅力たっぷり。なかでも清澄白河は、近年ギャラリーやカフェ、小さな雑貨屋などおしゃれスポットが次々に誕生し、週末ともなれば感度の高い人たちが集まって賑わいを見せています。私自身も東京都現代美術館もあることから、しばしば足を運ぶこの町。ぶらりと散歩したある日の夕暮れ時、駅近くの閑静な住宅街にふと目を引く小さな店を見つけました。こちらは玉うどん、中華麺の製造直売「荒川商店」さん。
店構えが気になってついふらりと立ち寄り
茹でうどんや中華麺だけでなく蕎麦にスパゲッティ、そしてうどん・そば用の汁にワンタンの皮。そしてパッケージも一際目立つのは「荒川の揚げそば」
店頭にところ狭しとすらりと並ぶラインナップ。思わず目を忙しく動かしながら「こういうお店って珍しいですね」と声をかけると「昔は同じような店もあったけど、今はもうほとんどないだろうね」と店を切り盛りする「下町のおかあさん」と言った感じの女性が答えてくれました。
脇島一枝さん、御歳80歳。
かつて立石にあった荒川商店の本店を営んでいた叔母の手伝いで、夫の中夫さんと共に15年ほど修行を積んで、ここ清澄白河に店を構えたのが昭和41年。現在85歳の中夫さんと創業から55年間、二人三脚で続けてきた老舗の製麺直売所でした。
店先の趣ある雰囲気にもグッと心奪われました
朝4時起き。注文の状況で、毎日作る麺の種類も量も異なるとか。
道具や古い工場に萌える私は、お願いして店の奥の作業場にも通していただきました。古い製麺機は年季の入ったゴツゴツとしたボディ。細麺から太麺までを滑らかにカットする円柱の刃がクルクルと回る仕組みになっています。隣に設置された古い秤は「こうやって分銅をぶら下げて使うのよ」と一枝さんが実際に使って見せてくださいました。
麺の太さのみならず、季節によって生地に含まれる水分量も異なり、それぞれの扱い方や茹でる時間が細かく違ってくると聞いて驚きました。全てが長年の経験でわかる職人技。
レトロな製麺機はその武骨さ故にかっこいい
製麺や店先で使われている道具たち。
「なぜここにお店を構えたんですか?」と伺うと「昔はね、その角に床屋さんと八百屋さん、向かいはトンカツ屋さん、裏には豆腐屋さん...とね、本当に人通りの多い街だったんだよ」と一枝さん。
今は閑静な住宅街ですが、お二人が清澄白河にお店を構えた頃、周辺は賑やかな商店街だったそう。
「娘たちには心配されて、そろそろお店を閉めてほしい言われているけれど、体が動くうちは続けたいね」
大切な町の風景の一つ。お元気で1日も長く続けていただきたいものです。
荒川食品 深川支店
東京都江東区白河2-3−6 TEL : 03-3642-8931
時間 : 7:00~19:00 休業 : 日曜日・祝日
アクセス : 清澄白河駅より徒歩4分