マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

第10回 2021年の世界遺産員会はオンラインで開催! この夏、日本で2件の新たな世界遺産誕生に期待が集まる

5月10日、IUCN(国際自然保護連合)よりユネスコの世界自然遺産に推薦されている「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(沖縄、鹿児島)について「登録」の勧告が出されました。ヤンバルクイナやアマミノクロウサギなどが生息する奄美・琉球の島々が、生物多様性において重要な地域であると認められたのです。この記事を書いているのは5月中旬なのですが、下旬にはもうひとつの推薦物件である文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道、青森、岩手、秋田)に対しても勧告が出される予定です。この記事が公開された時には、すでに判明していると思いますが、どのような結果になったでしょうか。

沖縄北部のやんばる地域に生息する絶滅危惧種ヤンバルクイナ(写真:Adobe Stock)

通常、その遺産の保有国からユネスコ世界遺産センターへ推薦されると、ユネスコの諮問機関、つまり自然遺産の場合はIUCN、文化遺産の場合はICOMOS(国際記念物遺跡会議)が現地調査を実施し、調査結果が報告されます。その際に世界遺産委員会の決議と同じ「登録」「情報照会」「登録延期」「不登録」の4段階で勧告が出されます。世界遺産委員会では必ずしも諮問機関からの勧告通りに決議されるわけではありませんが、「登録」という勧告は、そのまま決議される可能性がかなり高いと思われます。

今年の世界遺産委員会は7月16日~31日に開催が予定されています。これまで年に1度開催されてきましたが、昨年は新型コロナウイルス感染症の流行のために中止。今年も当初は中国の福州で予定されていたものの、新型コロナの影響を考慮してオンラインに切り替えられました。今年の世界遺産委員会は、例年と異なり、延期された2020年と合わせて2年分の審議が行われます。

本来なら2020年から1度に取り扱う件数の上限を35件(それ以前の上限は45件)に、1国の推薦枠を1件に制限することになっていました。すでに世界遺産の登録が1,000件を超え、資産の保全管理が行き届かないことやユネスコの財政難などの懸念から2016年に決定されていました。しかし、2021年は2年分の審議となるため、日本からも2件の世界遺産の誕生の可能性があるわけです。このコロナ禍において世界遺産誕生が少しでも明るいニュースとなるとよいですね。今から7月の世界遺産委員会が楽しみです。

 北海道・北東北の縄文遺跡群を代表する青森県の三内丸山遺跡(写真:Pixabay)

 

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