マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

世界遺産への旅Vol.9 シャルトル大聖堂(フランス)

パリのモンパルナス駅からフランスの国鉄SNCFで約1時間、「フランスの穀倉」と呼ばれるボーズ平野の中心都市・シャルトルに到着します。この町には、1979年、世界遺産に登録された大聖堂があります。13世紀に完成したフランスを代表するゴシック建築で、正式名称は「ノートルダム大聖堂」。パリにも同名の大聖堂がありますが、「ノートルダム」とは「聖母マリア」のことを指すことから、聖母マリアを祀った「ノートルダム大聖堂」はフランス各地で見られます。シャルトル大聖堂は聖母マリアに捧げられたもので、聖堂内には他の誰一人として埋葬されていないのが特徴です。

 

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駅から歩くこと約10分。駅を出ると左手奥に尖塔が見えてくるので、道がわからなくても尖塔を目指せば辿り着きます。

まず目に入ってくるのは2つの大きな尖塔。これは西側にあたります。向かって右側、つまり南の塔は高さ106m、12世紀のロマネスク様式で、見た目はスッキリとシンプルです。それに比べて左側の北の塔は高さ115m、16世紀のゴシック様式で、装飾が華やか。2つの塔はまったく違ったものとなっていますが、共にもともと12世紀に造られたものでしたが、北の塔は1506年の火災で失われた後、現在の塔に再建されました。

歴史を遡ってみると、最初に大聖堂が建立されたのは4世紀頃だといわれています。その後、損壊と再建が繰り返されるのですが、876年、フランス王シャルル二世(禿頭王)から「聖母マリアのベール」(受胎告知の際に来ていた天衣の一部)と呼ばれる聖母マリアの聖遺物が寄贈されました。これにより聖堂の威厳が高まり、人々から篤く崇拝されるようになります。現存する建物の基底となっているのは、11世紀にフルベール司教によって着手されたロマネスク様式の大聖堂です。しかし、1194年の大火事により大部分が焼失。この後、王侯貴族や平民から多くの寄進があり、約26年という短い期間でゴシック様式によって再建されました。

 

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入口から内陣まで身廊(中央廊下)が伸び、その天井にはゴシック建築の特徴である先の尖った尖頭アーチが取り入れられ、天井高は約37.5mにもなります。

 

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正面入り口の真上には、直径約14mの西のバラ窓があります。13世紀のもので、「最後の審判」を表現しているそうです。

 

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見どころは、聖堂の内外に施された約2000体の彫刻群。とくに西側ファサードにある「王の扉口」で見られる彫刻群は、ロマネスク彫刻の傑作と言われ、キリストや旧約聖書の預言者たちを表現しています。

 

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また、ステンドグラスの美しさも見逃せません。170を超える作品の多くは12〜13世紀に制作されたステンドグラスを現在に伝えています。とくに深みのある青色が美しい中世のステンドグラスを讃え、「シャルトル・ブルー」と呼ばれています。なかでも有名なのが、南面にある『美しき絵ガラスの聖母』で、キリストを抱く聖母マリアの姿が描かれています。その他にも計5000もの人物が描かれているそうです。

 

大聖堂内部の見学は無料ですが、有料で見学できる場所が2ヶ所あります。

 

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ひとつは北の塔で、7.5ユーロ(2014年11月現在)。幅の狭い石段を上ると、塔の下部回廊に出られます。ここから南の塔や塔に施された彫刻、聖堂前の広場からシャルトルの町並みを見下ろせます。

 

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もうひとつは、地下礼拝堂(crypte[クリプト])で、3ユーロ(2014年11月現在)。11世紀にフロベール司教が建設した大聖堂で、現存しているのはここだけ。長さが220mもあり、フランス最大の地下聖堂(ヨーロッパ内では第3位)です。ふたつの平行する長く広い廊下があり、その奥には放射状に7つの小聖堂が配置されています。

どちらも時間が決まっているので、事前に確認することをお薦めいたします。

 

 

■フランス・1979年登録・文化遺産
■シャルトル大聖堂
(Chartres Cathedral)

 

(取材・文 山本 厚子)

 

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