2回に分けて、カンボジアのアンコール・ワットと、アンコール・トムをご紹介しましたが、今回は周辺にある遺跡をご紹介します。
◆タ・プローム
密林に埋もれた遺跡を
巨大な榕樹が呑みこむ
「タ・プローム」は、アンコール・トムを造成したジャヤヴァルマン7世が母を弔うために造った大乗仏教の寺院です。
東西1000m、南北700mの広大な敷地で、今まで見てきた遺跡と同じように第一回廊、第二回廊とあり、
中心部には中央祠堂がそびえる造りですが、遺跡の傷みは激しいです。ここで何にもまして驚かされるのは、
崩れかけた遺跡を呑みこもうとしているかのような巨木たちです。これは、ガジュマルの一種で、
スポアン(榕樹)と呼ばれています。修復にあたって巨木は取り除かれませんでした。
取り除くと余計に遺跡にダメージがあるからだそう。長い年月をかけ、朽ちていく遺跡と根を伸ばす巨木が
作り上げた空間は神秘的でさえあります。
この空間を見ると、人間の力が及ばない、自然の大きな力を感じずにはいられません。
タ・プロームにも四面の観世音菩薩の塔が見られる
中央祠堂近くにはデヴァター(女神像)も
スポアンに覆われているが、よく見ると木々の間からデヴァターの顔がのぞいている(中央あたり)
第一回廊に根を伸ばすスポアン。遺跡が崩れそうなのか、支柱で補強してある
東門に絡みつくスポアン。長い年月をかけて遺跡を覆っていく
現在も修復工事が進行中
(文・山本 厚子)