今日も古墳日和 by 多田みのり

【アノ人と一緒に】Vol.6 庭のホテル 東京(水道橋)

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アノ人
都内で気軽にリセットしたい方や、
外国人のお友達を案内したい方におすすめ。
もちろん東京観光や、受験シーズンには受験生にも!

***

東京・水道橋に、口コミで宿泊数をのばしているホテルがあります。その名も「庭のホテル
東京」。世界最大の旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」のトラベラーズ・チョイス・アワード2013では、日本のホテルトップ25の第10位にランクイン。外資や老舗でもないのに、なぜ?と、首を傾げる方もいらっしゃるかもしれませんが、一度足を運んでみればその魅力がわかります。きっと「東京でステキなホテルを見つけちゃった!」と自慢したくなりますよ。

コンセプトは「美しいモダンな和」

JR・地下鉄水道橋駅から徒歩3分。路地を回り込んだところに、緑の植栽鮮やかなエントランスがあります。かつては石臼として使われていたという大きな水盤が、和の情緒を醸しています
そもそも水道橋は、神田神保町の古書店街や大
学、出版社などが多くあり、文化の香り豊かなところ。また小石川後楽園、宝生能楽堂、カトリック神田教会などの名所旧跡も残されています。江戸や明治の歴
史を感じられるスポットが点在したこの地は、ホテルのコンセプトにはぴったりといえます。

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ロビーには間道模様のカーペットが畳と同じ様に敷かれ、大きな行灯から和紙を通して優しい光がこぼれています。足元まであるロビーガラスの外には堀があり小川が流れているのも、涼やかな和の美しさを引き立てています。客室階のエレベーターホールや廊下にも、和紙や木を使ったオブジェや行灯風の灯りが点され旅館のよう。「東京」に来たというより「江戸」に来た、といった雰囲気です。

客室には障子や茶棚、和紙を使ったヘッドボードなど和を感じる意匠があちこちに。バスルームの壁まで木なのには驚きました。けれどとても温かみがあって、妙に落ち着きます。やはり日本人には、こうした自然素材のもつ柔らかさがあっているんだなぁと実感できます。

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20130710anohito06-11.jpg中庭を挟んだ離れにある「日本料理 縁(ゆくり)」は、瓦の大屋根を用いており、整然とした美が存在感を放っています。明治時代に手焼きされた瓦が配された庭には、小川の心地良い水音が響いていました。

オーナーの木下彩氏は、生まれも育ちもこの水道橋。かつてここに建っていた日本旅館がご実家なのだそう。旅館はその後ビジネスホテルを経て、2009年に「庭のホテル 東京」へと生まれ変わりました。そうした言わば我が家のような思い入れのある場所に作ったホテルだからこそ、温もりのある空気感があるのかもしれません。旅館のノウハウとビジネスホテルの利便性を併せ持つ、ホスピタリティ重視の新しいタイプのホテル、それが「庭のホテル
東京」です。

 


細部にまでこだわりぬかれた客室は、居住性抜群!

客室は全部238室あり、4つのタイプがあります。

【スタンダード(18㎡)

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12名向けのダブルタイプ。ビジネス利用でも人気があるそう。
広さは18㎡ですが、立方体に近い間取りと機能性の良さのせいで、
2名利用でも手狭さを感じさせません。むしろカップルには
ちょうど良い距離感かも。

コンフォート(30㎡)

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珍しいバルコニー付きの客室。バルコニーに出ることはできませんが、

グンと広がりを感じられます。大きな窓を通して障子の優しい光が満ち、

心地良さ抜群。エキストラベッドを入れて、ファミリー利用もOK


【スーペリア(24㎡)

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ツインとダブルの2タイプがあり、ご夫婦旅や外国人ビジネス客の

長期滞在などに人気。ダブルルームはキングサイズベッドを用意。

プレミアム(36㎡)

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他の客室とちょっと趣を変え、テーマは「インナーリゾート」。
ガラス張りのシャワーブースの向こうには夜景も眺められるTV付きの
ジャグジーバスをはじめ、充実の設備とアメニティが揃います。
リゾート気分でゆったり過ごせる、ジュニアスイート的な客室です。

***
どの客室にも床からの大きな窓があり、まず明るいのが清潔感を感じさせます。そして天井から壁まで優しい色合いの壁紙で包まれ、和の設えが自然に解け合っています。間取りを正方形に近い形にし、天井も高めに取っているので、使いやすく平米数以上に広く感じます。
また、ホテルの客室というと、モノトーンやエキゾチックなどの非日常感が
20130710anohito06-19.jpgテーマになりがちですが、こちらの客室は「上質な日常」といった感じ。日々の暮らしとかけ離れすぎず、しかし瀟洒な心地良さがあり...という「ほど良さ」が魅力です。「こんなファーニチャーを置けば私の部屋もいい感じになるかも?」なんてヒントにもなる親しみやすさが、リラックス度をさらにアップしてくれます。

そして驚くほどたくさんの、オーナーのこだわりが込められています。例えばトイレと洗面台の間にある、ガラスの間仕切り。ユニットバスなら仕方の無いことと思いがちですが、やはり洗面台のすぐ脇にトイレがあるのって、ちょっといやだったりしませんか?しかしガラス一枚あるだけで、気持ちの上でも見た目でもワンクッション置かれます。女性オーナーらしい心遣いだなと感心しました。

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(左)シャワーカーテンのレールは弧を描くものを設置。目で見るとちょっとした差ですが、

実際に使ってみると格段にスペースが広くなり、使用感抜群です。(中)凸面鏡付きのフェ

イスミラーのほか、歯ブラシなどのアメニティは和紙を模したプラ袋入り、ドライヤーも

そのまま置くのではなく巾着袋に入れてあります。

さらに私が特に気に入ったのが、コンセントの多さ。今どきの旅行、夜は電子機器の充電が欠かせません。しかし大概コンセントの数が足りなくて、順番待ちしたり何かをあきらめたり...。そんな思いはここでは不要です。

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デスクやテレビ周りはもちろん、枕元のナイトランプの下や、セキュリティボックスの

中にまで(ノートPCを充電しながらしまえます)!もうコンセント難民は卒業です(笑)。

目に見えないところの配慮もあります。空調の加湿は、病院などに疲れる蒸気式を採用。一般的な濡れた布に風を送る気化式タイプより断然コストがかかりますが、衛生面での有効性に気を配りました。有名大学が周囲に点在する立地上、受験シーズンには満室になるそうですが、これなら安心ですよね。もちろん別に加湿器の貸し出しもしています。

 確かに「和」は落ち着きますが、「洋」の生活にだいぶ慣れてきてしまっているのも事実。和の美や情緒はアリだけど、不便さはナシでしょ、というのは本音かもしれません。そうした心理を実に良く理解してくれているなぁと思いました。たとえゲストがこのこだわりに気がつかずとも、「なんだか心地良くて...」「すごく使い勝手が良いんだよね」と感じてくれれば良いという控えめさも、「日本らしい美徳」であり魅力のひとつと言えるでしょう。

 


外国人旅行者にも大人気!

「庭のホテル 東京」は、外国人旅行者の利用が多いのも特徴。外国人宿泊者数の当初の目標は全体の30%だったそうですが、今では実に半分が外国の方だそうです。そしてその大半が、口コミによるものだというから驚きです。私が訪れたときにも外国人の方が大勢チェックインしており、噂に違わぬ人気ぶりを目の当たりにしました。

20130710anohito06-09.jpg冒頭にも書いた通り、「トリップアドバイザー」のトラベラーズ・チョイス・アワード2013では、日本のホテルトップ25の第10位にランクイン。また「ミシュランガイド東京・横浜・湘南2013」でも4年連続で「快適なホテル」として星2つを獲得しています。


人気の秘密はまず、アクセスの良さ。徒歩3分の水道橋駅は、東京駅にも新宿駅にも電車で10分ほど。秋葉原や皇居は徒歩圏内にあり、築地にもタクシーを飛ばせばすぐ。富士山にも日帰りするというぐらいアクティブな外国人観光客には、アクセスが良いことは最重要ポイントです。

そして、それでいて「和」を感じられること。外資系のホテルの方が、「慣れ」という意味では使いやすいかもしれません。しかしせっかく日本に来たのだもの、和風も欲しいところですよね。障子の光の通し方や、行灯のほの明るさなど、陰影礼賛的なコントラストにこそ、日本の美しさがあります。ここに泊まればきっと、センスの良い日本人宅に招かれたような、そんな気がするのではないかなと思いました。

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(左)宿泊料金をおさえるために客室にはミニバーを置かず、代わりにビールやジュースの自動販売機を置いて、

通常価格で販売。(中)長期滞在者にはうれしいコインランドリーも設置。右)客室にはスチームアイロンと

アイロン台を完備。スタンダードルームは手狭になるので、エレベーターホールに別途貸出ブースを設置。

ズボンプレッサーもあり。

さらにベルサービスを置かない代わりにフロントをアイランド式にして、スタッフがすぐにロビーに出て来られるようにしています。これにより、チェックインを済ませた後、混み合っていない限りはそのままフロントスタッフがエレベーターホールまで荷物を運んでくれるのだそう。こうした合理的でフレキシブルな対応も、日本らしいなと思いました。

20130710anohito06-32.jpgそして3番目に上げられるのが、リフレッシュラウンジ。空中ガーデンを望むウッディなラウンジには、無料のマッサージチェアを2台設置。グループで宿泊されている場合など、ここでゆったりとおしゃべりすることができます。マッサージチェアに横になりながら、iPadで翌日の観光の下調べ...そんな外国人観光客も多いそう。

隣にはワークアウトルームも。トレッドミルとバイクの2種、ヨガマットがあり、622時までの間、無料で利用できます。海外の方は旅先でもワークアウトを欠かさないことが多いので、きっとうれしいサービスですよね。今月からは近隣のスポーツクラブと提携し、本格的なトレーニングも可能になるそうです(3800円、ウェアやシューズ、利用料すべて込み)。また、24時間利用可能なビジネスコーナーもあります。こうした宿泊者専用スペースの充実も、口コミにより世界へその名を知らしめている一因なのでしょう。

 

お味もコスパも大満足の絶品ランチもぜひ!

20130710anohito06-35.jpg1階の中庭を挟んで、「グリル&バー流(りゅう)」と、「日本料理
縁(ゆくり)」の二つのレストランがあります。中庭は洋と和の二つの表情を持つように設計されていて、同じ庭を眺めているはずなのにまったく違う雰囲気で食事を楽しむことができます。

今回の取材でもっとも期待していたと言っても過言ではないランチ。新鮮かつ珍しい野菜が揃ったサラダバーをいただきたくて、「グリル&バー流」に向かいました。正直なところ水道橋という立地からして、そんなに混んでいないだろうと思っていたのですが(しかも取材の日は朝から大雨)、予想以上の大盛況ぶり。オープン前から何組も並んでおり、あっという間に満席に。予約必須です!

ウィークディのメニューは、メイン料理をグリエ、魚料理、肉料理、パスタ、キッシュ、リゾットから選べるランチセット1,600円〜2,800円(サラダバー、プティスープ、バゲット、コーヒー付き)と、プリフィクススタイルのリュウランチ3,500円(プティスープ、バゲット、コーヒー付き)の2種。

この選べるランチセットが人気で、例えば肉料理の「子牛のコンフィ
軽いブランケット仕立て 季節野菜を添えて」を選ぶと1,800円。このお値段でサラダバーはもちろん、バゲットもおかわり自由。さらには、2杯目のコーヒーやスイーツもランチ利用の場合安くなり、時間制限もなし!さすが、味にも価格にも厳しそうな女性グループが、あちこちで話に花を咲かせているのも納得です。

しかしながら私はちょっと贅沢にリュウランチをチョイス。+500円でサラダバーも付けちゃいました。

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サラダバー

欲張って2皿も。小松菜やわさび菜、赤みずななどのグリーンサラダは、ゴッチョ・ドーロの「エクストラヴァージン・オリーブオイル」とカマルグの最高品質の塩「ペルル・ド・セル」で。葉ものの苦みや辛みと、マイルドなオリーブオイルが絶妙にマッチ!有機人参やパプリカ、フルーツトマトやチェリートマト、生で食べられるとうもろこし(茹でていないのに驚きの甘さ!)などは、ハーブの香り豊かな自家製ドレッシングがよくあいました。

プティスープとバゲット

このバゲットが見事な美味しさ!フランス産の小麦と発酵バターを使った生地を店で焼いており、香りの高さとふわふわの食感が絶品!食べ放題と聞いたときにはニヤリとしてしまいました。スープは優しい味わいのビシソワーズでした。

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★自家製スモークサーモンコンフィ ハーブサラダ添え

スモークサーモンに目がない私。いただかないわけにはいきません。コンフィにしてあるので、とろけるような柔らかさ!パンケーキとクリームチーズをあわせて口に運べば至福の時。セロリベースのソースが香りを添え、奥深くまろやかな味を堪能しました。

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ホロホロ鶏胸肉のタプナード詰め 季節の野菜添え

料理長はジビエも得意ということで、生まれて初めてのホロホロ鶏に挑戦。野性味のあるしっかりとした味わいながら臭みはなく、上品なうま味も感じられます。タプナードの塩気と香りもよくあっていました。季節の野菜も種類が多く、付け合わせのレベルを超えて目でも楽しめました。

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エンドウ豆のティラミス

「発芽」をイメージした遊び心のあるデザートは、お野菜多めで大地の恵みを満喫したランチの仕上げにぴったり。土に見立てたクラッシュクッキーがアクセントになって、最後まで美味しくいただきました。

 

***

最後にもうひとつ。

ホテルでは水道橋という立地を活かして、江戸の歴史や文化に親しむ講座「三崎町サロン」や、ガイドツアー「江戸まち歩き」も開催しています。文化事業に積極的なところも、歴史好きの私としてはうれしい限りです。

都内在住の方にも、地方に住む方にも、海の向こうに住んでいる方にもおすすめしたいホテルです。


★庭のホテル 東京
(電)03-3293−0028
(住)東京都千代田区三崎町1−1−16
(HP)http://www.hotelniwa.jp/

(取材・執筆 多田みのり)

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