世界中に自由を呼び掛けるアメリカの象徴
台座を含む高さは約93m、右手に世界を照らすトーチを掲げ、左手には1776年7月4日と記された独立宣言書をもつ「自由の女神像」。そして、足元には奴隷制と専制政治を象徴する鎖と足かせを踏みつけて立つ、この誰もがよく知るニューヨークの観光スポットを今回は取り上げます。
自由の女神像は、アメリカ独立100周年を祝って、フランスから友情の証として贈られたものです。フランスの政治家エドゥアール・ラブライエが発案し、フランス国民から寄付を募りました。彫刻家フレデリック・バルトルディが制作を手掛け、女神の顔には彫刻家の母の面影を残すといわれています。ただし、強風が吹く海上に巨大な像を建てることは難しく、この問題を解決するために、パリのエッフェル塔の設計者でもある建築技師ギュスターブ・エッフェルが協力しました。
フランスで完成した女神像は小さく分解され、アメリカへ運ばれました。台座部分はアメリカ国民に寄付を呼び掛け、アメリカで制作。こうして1886年に女神像が完成したのです。
世界遺産には、1984年、普遍的価値をもち、人類の創造的資質を示す傑作として登録されました。19世紀の鋼鉄技術の粋を集めて建設された女神像は、100年以上にわたって、私たちに自由と民主主義の尊さを訴え続けているのです。
リバティ島に建つ自由の女神像を訪れるには、フェリーで行かなければなりません。マンハッタンの南に位置するバッテリーパークにフェリー乗り場があります。ただし、世界各国からの観光客でたいへん混み合ううえ、セキュリティチェックに時間がかかるため、いつも長い行列を作っています。見学するなら朝一番で出かけましょう。フェリーチケットをインターネットで予約するのもおすすめです。
9.11のテロ事件以降、内部の見学は制限されていましたが、2009年7月4日から王冠部分の展望台への入場が再開されました。今のところ、入場者数が制限され、予約が必要となっています。台座にある自由の女神像博物館までなら、比較的入場しやすいようです。
私のお気に入りは、リバティ島ではなく、スタテン島へ渡るフェリーの船上から自由の女神を眺めることです。このフェリーは同じくバッテリーパークの東側の方から出航しているのですが、なんと無料!スタテン島に住む人のための通勤通学用のフェリーなのです。ちょうど自由の女神像の真横を横切って行くので、よく眺めることができます。マンハッタンのビル群を海上から眺めるのも壮観。天気が良ければなおさら気持ちいいのです。ぜひお試しを!
■アメリカ合衆国・1984年登録・文化遺産
■自由の女神像(Statue of Liberty)
(取材・執筆 山本 厚子)