一重まぶたのすっきりとした目元。
梅干しを食べてきゅっとすぼめたような小さな口。
ふっくら丸い顔をふちどる黒髪。
鳴子のこけしは愛らしい佇まいで、見る人の心をほっと和ませてくれます。こけしをたっぷり満喫する旅は、
鳴子温泉駅からスタート。鳴子温泉郷でのこけしとのファーストコンタクトは、改札窓口のすぐ上の棚に飾られた
ペアのこけし。駅長さんの制服に身を包み、乗降客を見守っています。こけしの駅長さんがいるとは、さすがこけしの街、
鳴子です。
街なかこけし・コレクション
駅員こけしだけではありません!温泉街にはいたるところにこけしが潜んでいます。
駅を出てすぐ、歩道のガードレールは支柱がこけし形。向かい合わせで立っているのが、まるでにらめっこを
しているようでかわいい!
鳴子温泉駅には足湯があるのですが、そこに置いてあった手桶のとっても、なにげなくこけしの形(写真右上)!
ゆめぐり広場に佇むこけしたち(写真右下)。左側の背の低いこけしは、「ねまりこ」と呼ばれる、
鳴子伝統のこけし形です。「ねまる」は座ることを意味する方言で、円筒形のこけしと比べ、
台形型にぷっくりとふくれたボディは、体育座りをするこどもを思い起こさせます。すりすりなでたくなる愛らしさ。
鳴子郵便局前には、昔ながらの円筒形のポストにこけしの頭部が合体。ポストには鳴子こけしの特徴である菊の花が
描かれています。ちなみに、鳴子郵便局の風景印には、こけしと鳴子ダムが描かれています。メール全盛の昨今ですが、
ときには手紙もいいですよね。大崎市総合支所前の電話ボックスには、大きなこけしの頭部がのっています。
絶好のフォトスポット!これらのこけしスポットへは駅からすべて歩いていくことができます。
ご紹介した順番でぐるりとめぐっても30分もかかりません。
自分好みのこけし探し
こけしはすべて工人さんの手作り。1点1点木を削り、顔や胴体を描きます。工人さんによって顔は変わりますし、
例え同じ工人さんが描いたものでも、それぞれ微妙に表情が異なります。居並ぶこけしをじっくり眺め、目の角度、
口の形、胴体の柄などを吟味する。そうして選び抜いた「マイこけし」には、この上ない愛着が湧きます。
こけしを「買う」というより「連れて帰る」と言いたくなるのは、それぞれが手作りの1点ものだからかもしれません。
こけし岡仁でみつけたユニークなこけし。ドロンジョさまやミツバチはっちなど、アニメのキャラクターが
なんとこけしに!こちらは残念ながら非売品でした(東京の百貨店とのコラボで生まれた作品だそう)。
写真左は桜井こけし店、右は髙亀こけし店の作品。この3店とも昔ながらのこけし店ですが、こんなモダンなデザインのこけしも制作しています。
鳴子温泉には、こけしショップや工房が20以上あります。その情報を網羅した「鳴子こけし工房めぐりマップ」は、
こけし好きで知られるイラストレーターの杉浦さやかさんの手によるもの。
鳴子でこけし散歩をするのに便利なツールです。このマップには鳴子在住の各工人さんの代表作が載っています。
工房めぐりの時間がそれほど取れない方は、このマップで好みの顔をチェックし、ピンポイントで工房を訪ねる
のもいいでしょう。私は「日本こけし館」で手に入れましたが、温泉街の土産物店でも販売しています。
工人さんが営むこけしショップの多くは、店頭にこけしの実演コーナーがあり、作業風景を見学できます。
鳴子観光ホテルの向かい側にある岡崎斉の店の店頭で岡崎工人がちょうど作業をされていました。
2寸ほどの小さなこけしに蝋引きをしているところ。こちらのお店は、岡崎工人と奥さんが二人三脚で営むお店。
こけしをあしらったトートバッグや肩たたき(叩く部分がこけしの顔!かわいすぎて使えない!!)、
あぶらとり紙(脂を吸って色が変わるとこけしが浮き出る!)などオリジナルグッズもありました。
私は鳴子観光ホテルに泊まったのですが、ちょうど部屋から岡崎さんの店頭の工房スペースが見え、
灯りの下で作業する風景がとってもノスタルジックでした。
こけし工人さんの「工房」の多くは自宅を兼ねていたりするので、訪ねる前に電話連絡をするのがベターです。
鳴子では毎年9月初旬に「全国こけしまつり」を開催します。伝統こけしの実演販売や絵付け体験など
イベントが盛りだくさんなのですが、なかでもユニークなのがフェスティバルパレード。
伝統こけしをかたどったハリボテが街を練り歩き、こけし柄の浴衣を着た人々が鳴子踊りを披露します。
ハリボテの「なかの人」は毎年一般公募されています。今年は私も参加したい!と今から画策中です。
鳴子温泉について詳しくは
鳴子温泉観光協会 http://www.naruko.gr.jp
全国こけし祭り http://kokeshimatsuri.com
(文・川崎 久子)