2017年5月現在、45件の世界遺産登録があり、世界遺産登録数国別ランキングで3位となるスペイン。45件の中から、今回はスペイン南西部、アンダルシア地方にある「コルドバ歴史地区」を取り上げたいと思います。
コルドバは首都マドリードから高速鉄道で約2時間に位置し、セビーリャやマラガに次ぐアンダルシア第3の都市です。
その歴史は古く、フェニキア人の都市国家カルタゴの植民都市があったとされます。その後、紀元前3世紀にはローマに征服され、共和制ローマの支配下に入ります。4世紀になるとゲルマン民族の大移動が始まり、5世紀イベリア半島には西ゴート王国が建国されます。しかし、711年にはイスラム教徒(ウマイヤ朝)がイベリア半島へ侵攻。756年にはアッバース朝によってダマスカスを追われたウマイヤ家がコルドバを首都として、後ウマイヤ朝が樹立されることとなります。
この時、高度なイスラム文明が花開き、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルやアッバース朝の首都ダマスカスとともにコルドバは大都市として繁栄しました。300を超えるモスクが建てられたと伝わっています。しかし、レコンキスタ(キリスト教徒によるイベリア半島の再征服活動のこと)が始まり、1236年コルドバはキリスト教徒により奪還されたのです。
このような歴史から今でも町には、イスラムとキリストの混在した建造物や雰囲気が残っています。
「オレンジの庭」と呼ばれるメスキータの中庭
から見上げるミナレット
なかでも見どころは、メスキータでしょう。後ウマイヤ朝を開いたアブド・アッラフマーン1世により、785年に建設が始められたモスクで、その後何度も拡張されました。イスラムの特徴とされるアーチをもつ列柱が広がる空間が圧巻です。が、レコンキスタ後に改造され、キリスト教のカテドラルがその中央に付け加えられています。2つの世界観がせめぎ合う空間は荘厳でもあり、また異様にも感じます。とにかく見る者の心を捉えて離さない迫力があります。
薄暗いメスキータ内にどこまでも続くかのような「円柱の森」。
かつては1000本あったというが、現在は約850本あるそう
アーチ部分の赤と白の縞々が印象的。
往時は2万5000人を収容できる大モスクであった
入口から一番奥にある、メッカの方角を指し示すミフラーブ。
アラビア文字やアラベスク模様で飾られている
そしてメスキータの中央にはカテドラルがある。
月〜土曜の朝にはカトリック信者のためのミサも行われている
イスラムの赤白の縞々のアーチの上には
キリストっぽい白い装飾で覆われるカテドラル付近
「コルドバ歴史地区」には、 メスキータ周辺に見どころが集まっています。
14世紀、カスティーリャ王アルフォンソ11世により建造された王宮「アルカサル」。イスラム王の宮殿跡地に建てられたもので、ムデハル様式というアラブ式の庭園が見られます。
15世紀には、イスラム勢力が残るグラナダを攻略
するための拠点としての役割を果たした「アルカサル」
グアダルキビル川にかかる「ローマ橋」
ローマ橋を守るために築かれた要塞「カラオーラの塔」。
ユダヤ人街で人気の撮影スポット
建物内の壁の模様や造りが今も見学できる
■スペイン・1984年登録/1994年範囲拡大・文化遺産
■コルドバ歴史地区
(Historic Centre of Cordoba)
(文・山本 厚子)