マイスターと世界遺産の知の旅へ by 山本厚子

世界遺産への旅Vol.16 ミーソン聖域(ベトナム)

前回ご紹介したベトナムの世界遺産「古都ホイアン」から南西へ約40kmにもうひとつ、世界遺産があります。
1999年、世界文化遺産に認定された「ミーソン聖域」と呼ばれるヒンドゥー教の遺跡です。

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ここはベトナム中部でかつて栄えたチャンパ王国の聖地。チャンパ王国は、現在のベトナム中部南端に住むチャム族の祖先とされる「古チャム人」が、2世紀末に建国したと考えられています。
そして、ミーソンの遺跡は、4世紀、国王バドラヴァルマンがヒンドゥー教のシヴァ神を祀るために創建した木造の祠堂に始まります。

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ミーソン遺跡の入り口
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遺跡のある場所まではカートで移動。とても暑いので助かります。
散策にはサングラス、帽子、水は忘れずに!

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敷地内の地図。かなり広いです

7世紀以降にはレンガを使った神殿が次々と建立され、8世紀から13世紀に建てられた建物が現在まで残されています。建物を形づくるレンガは幾重にも積み重ねられていて、とても堅固なのですが、漆喰やセメントなどの接着剤を使った痕跡がなく、ここにチャンパ王国の高い技術が認められているそうです。

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人の大きさと比べるとかなり大きいことがわかります

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建物の装飾もかなりいたんでいます

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廃墟のようにも見え、神秘的な雰囲気

素人の目には接着剤のことまでわかりませんが、草の生えた遺跡をじっくり見てみると、カンボジアのアンコール遺跡に似ているように思われます。アンコール・ワットはクメール人によって建てられた、やはりヒンドゥー教の寺院ですので、似ているのは当たり前なのかもしれません。ここミーソンの方が時代をさかのぼる分、荒々しくて、洗練されていない感じはしますが、シヴァ神を象徴するリンガが数多く見られるところなど、アンコールを彷彿とさせます。また建物に施された草木や花、動物などの彫刻が緻密で美しいことも見るものの目を捉えて離しません。

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シヴァ神を象徴するリンガ

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アンコールの遺跡を思い出させる

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20170129mysonDSC08916.JPG緻密なレリーフの数々

チャンパ王国は11世紀以降、ベトナム北部に建国された大越国と抗争となり、都もベトナム中部の南へと遷都。こうした背景があり、1895年にフランス人によって発見されるまで約500年にわたり、ミーソン遺跡は人々に忘れさられていました。発見後、保全調査や修復が行われていましたが、ベトナム戦争で投下された爆弾によって大きく破壊されていまいます。今も爆弾の大きな穴の痕跡を見ることができます。
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損傷が大きな遺構には屋根も設置されています
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ベトナム戦争時の爆弾の跡
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現在も修復が行われています
現在は国際協力のもと、修築と保存作業が進められています。
 
 
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今は亡き王国の聖なる地・ミーソン。雄大な山並みに囲まれ、荘厳に満ちた空間は、ヒンドゥー教の世界観と先人の豊かな創造力を静かに語りかけてくるようです。

 

※ホイアンやダナンから日帰りのオプショナルツアーが用意されています。旅行会社やホテルで予約するのがおすすめです。

 

■ベトナム・1999年登録・文化遺産
■ミーソン聖域
(My Son Sanctuary)

(文・山本 厚子)

 

 

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