茨城県笠間市と栃木県益子町は関東を代表する陶器の街。この2つの街では、毎年ゴールデンウィーク中に陶器市が開かれます。今年は5月2日と6日をお休みにすると10連休!陶器市めぐって、お気に入りの作品を見つけましょう。
第35回笠間の陶炎祭(ひまつり)2016年4月29日〜5月5日
笠間焼が生まれたのは安永年間(1772〜1781年)のこと。近江の信楽焼の陶工・長石衛門の指導の下、久野半右衛門が現在の笠間市箱田で陶業をはじめました。明治に入るころには窯元は19に増え、厨房用粗陶器の産地として全国にその名が知られるようになりました。戦後、一時笠間の陶業は下火になりますが、釉薬の改良や粘土の研究を重ね、新たな作品づくりに取り組んだ結果、見事復活。地元の窯元に加え、全国各地から集まった陶芸作家は現在300人に上ります。
↑作家それぞれの自由な作風を尊重する笠間焼は、「特徴がないのも特徴」といわれています。こんなかわいらしい置物も!
今年で35回を数える陶炎祭は、瑞々しい緑に囲まれた笠間芸術の森公園のイベント広場が会場。個人の陶芸作家や窯元、販売店が200軒以上軒を連ねます。
益子春の陶器市 2016年4月29日〜5月8日
一方、益子焼の誕生は江戸時代末期、笠間で修行を重ねた大塚啓三郎が当地に窯をつくったのがはじまり。"日用品"であった益子焼を芸術の域にまで高めたのが、陶芸家の濱田庄司です。「民藝運動の父」と称された柳宗悦らとともに民藝運動を推進した濱田は、1924年に益子へ移住。地元の陶工たちへ大きな影響を与えました。現在、濱田の旧宅兼工房の一部は益子参考館として開放され、作品などが展示されています。
↑益子の目抜き通り。販売店の前にもテントが出ます。天気がよいと意外と暑いので、日傘持参で!
益子の春の陶器市には、約50の販売店に加え、新進作家や陶工のテントが500あまり並びます。
陶器市にはなにしろ沢山の店舗が並ぶので、会場で配布されているマップはマストアイテム。時間がある方なら、好みの器がある店舗に印を付けながら、全体を一度ぐるりと回ってみることをおすすめします。特に、益子の陶器市は店舗が広範囲に渡っているので、途中こまめに休憩しながら陶器探しを。会場には、陶器だけでなく、地元のグルメを提供する店も出るので、食を堪能しつつ、のんびり歩いてみましょう。
陶器市の醍醐味は、陶芸作家さんたちと直に会話ができること。作り手の顔が見えるので、選んだ陶器への思い入れもより一層強くなります。また、普段使いに惜しげもなく使えるB級品が格安で手に入るのもうれしいポイントです。釉薬にムラあるから...などの理由でB級品となってしまった陶器たち。色ムラすらむしろ味わいに見え、愛着が湧きます。
↑笠間でB級品として販売されていたマグカップ。普段使いにはまったく問題のない仕上がり
この2つの陶器市は合わせておよそ90万人が訪れる人気イベントで、例年会場周辺は大渋滞が発生します。駐車場も混み合うので、列車で最寄り駅まで移動し、巡回バスなどを利用するのがベターです。
笠間の陶炎祭は、JR水戸線笠間駅から周遊バスかレンタサイクルを利用するのもいいでしょう。益子春の陶器市も真岡鐵道益子駅から巡回バスが20分間隔で運行します。ただし、休日のみですので、ご注意を!
さらに、休日には2つの陶器市を結ぶ路線バスも運行します。45分ほどで2会場を結ぶ上、片道500円と格安です。
いっぱい買物をしたいし、やはり車で...という方は、がんばって早起きをして比較的空いている早朝出かけましょう。4年ほど前にランチを済ませたあと、さて益子の陶器市へ行こうかとのんびり向かったところ、会場のかなり手前で大渋滞に遭遇...。あまりの混雑に恐れをなして、市へ寄らずに帰ったという苦い経験があります。以来、車で訪れる場合は朝イチで出かけるようにしています。
笠間・益子ともに11月にも陶器市が開催されますので、そちらもお見逃しなく!
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(取材・文 川崎 久子)