歴史ある遺跡やおおらかな自然、そして美食や笑顔を絶やさない人々......。
さまざまな魅力を秘めるタイ王国をフォトグラファーの yOU(河崎夕子)さんが4回にわたってレポートします。
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さていよいよ第3回目となる連載「タイ/スコータイエリアの魅力」。
今回はバンコクの国内リゾートや近隣諸国に航路を持つバンコクエアウェイズが離発着するスコータイ空港にスポットをあてます。
バンコクのスワンナプーム国際空港から飛び立って1時間あまり、降り立った駐機場から乗り込むトラムから目にするのは、色とりどりの花が咲く花壇に蓮池、そして遺跡の多いスコータイらしいモニュメント。
しばらく行くとオープンエアの可愛らしい三角屋根のターミナルが近づいてきて、南国風で可愛らしく、今では珍しいアナログな設えとフレンドリーなスタッフが迎えてくれました。
利用客が少ないからなのか、とても清潔でのどかな雰囲気にすっかり魅了されてしまったのは言うまでもありません。
・モニュメントに蓮池の向こうに見えるのは、可愛らしいイラストでラッピングされたバンコクエアウェイズの小型旅客機。
・スコータイ空港の旅客ターミナルは木造平屋建て。いかにも南国風の造りだ。
・昔のターミナルを思い出すアナログな光景に思わずシャッターを切る人も多い。
・駐機場はターミナルから離れているため、オープンエアのトラムで移動する。
スコータイ県のサワンカローク地区に位置するスコータイ空港は1992年に建設され、1996年に正式に操業を開始。
現在空港は航空会社のバンコクエアウェイズが所有していますが、元々個人所有だったこの土地の敷地面積はなんと2000エイカー、つまり皇居でおよそ8つ分、東京ドームだとおよそ200個分(!)の8キロ平方メートルに値します。元々医者だったこの土地の所有者は、当初シンガポールへ医療用のチャーター便を飛ばすことを目的に飛行機の離発着を可能に整備を行った後、ビジネスとしての拡大を図って空港を建造することになります。
それがきっかけて完成したスコータイ空港は、世界でも珍しく民間の航空会社が所有する空港として注目を浴びることになりました。それでも空港として利用されている土地は敷地の3分の1に過ぎません。つまりそれ以外の土地の活用がユニークなのが、スコータイ空港の魅力でもあるのです。
・広大な敷地の向こうに管制塔が見える。
・農場や未開発の土地が延々と続く。
現在タイ王国では、限られた天然資源の適切な管理のために「足るを知る生活」を王室プロジェクトの指針として掲げ、身の丈にあった自給自足のライフスタイルを推進し、そのための支援を行っています。
それに基づいて、このスコータイ空港内の農場ではかつての有機農法をそのまま実践し、この広大な土地を活用して、米は種付けから精米、出荷までを行い、他にも様々な野菜や果物を育てています。
ここでの移動は歩くのが困難なために、トラムに乗り込んで敷地内をご案内いただきました。広い水田には白サギやカモがのどかに歩き、その先に精米所や倉庫、そして少し先へ行くと現れた特大サイズのビニールハウスには様々な品種のランがずらりと並ぶ植物園、また先へ行くと、キリンやシマウマが自由に走り回る動物園...。
これらの施設はスコータイが国内中継地として栄えるために、観光産業の一環として整備されたとのことでした。
・敷地内はトラムで移動。
・のどかな田園風景はここが空港であることをすっかり忘れてしまう。
・米は白米のほか黒米や赤米も栽培されている。
・空港の土産物屋では農場で採れた有機米やハーブティーの販売も。
・室内の植物園には様々な品種のランが並んでいた。
・トラムで移動していると見えてきたのは動物園。キリンも自由に駆け回れて解放的だ。
・この敷地内の従業員は90名、また有機農法に欠かせないアヒル1000羽も同じく従業員として(笑)働いているとのこと。
・刈り入れた草などを食べてくれる水牛も飼育されていた。
また敷地内には大型の宿泊施設やレストランなどが併設されていました。
風が吹き抜けるリゾート風な造りのスコータイ・ヘリテージ・リゾートにはスイートを含む68室の客室が用意され、オープンエアのレストランではこの地で採れた作物を中心に、名物のスコータイヌードルや有機米を食べさせてくれます。現在まだ進化中のスコータイ空港。それでも既にこれだけの設備が整った空間は、これからスコータイエリアの観光の拠点として利用客も増えていくことでしょう。
・「スコータイ・ヘリテージ・リゾート」。短期滞在の空港内のホテルとしてではなく、観光の拠点としても利用されそうだ。
・心地よい風が抜けるレストラン。名物のスコータイヌードルも供される
取材協力:タイ国政府観光庁
取材・文:yOU(河崎夕子)
次回はいよいよ最終回。スコータイを離れてバンコクの魅力あれこれをご紹介します。