いよいよ都道府県をまたいでの旅が解禁されました。さあ、どこへ行こうと盛り上がり気持ちと、もう少し自粛しようかしらと迷う気持ちがいったりきたり。わくわくする次の旅への想いを心に貯めて、あたためておく「旅心貯金」。もう少し貯金してもいいし、パッと使ってしまってもいい。旅恋厳選、旅心を誘う記事をお届けします!#旅心貯金 #旅恋
国内外の美味を求めて旅するフードライター・江藤詩文さんがご紹介します。
第20回 世界中が注目するはずだった美食の宝庫・サガへ(佐賀県)
「ちょっとサガって、それどこよ? もしかして島?」
2019年10月、香港の、ロシアの、カナダのフードライターから、次々に問い合わせが入りました。
大好きな温泉湯豆腐。こちらは源泉を持つ「旅館 大村屋」の朝食
そんな風に“世界における知名度“では、ちょっぴり残念だった佐賀県。実は「食の宝庫」と呼びたい美食県です。海の幸なら、有明湾を中心に名物の海苔や新鮮な魚介類、呼子のイカ、さらに、それらを生かした、江戸前とはまったく異なるスタイルの鮨。ブランド牛の佐賀牛に、ブランドいちごの「さがほのか」などフルーツや野菜。そして世界的に注目が集まっている緑茶「うれしの茶」。
水出し緑茶。伝統文化に現代的なプレゼンテーションを取り入れて
若手茶農家7人がお茶文化を伝えるプロジェクト「嬉野茶時」を発足
ご存じの通り、嬉野は温泉地として有名で、泉質のよさから「美肌の湯」と称されています。さらに食まわりに目を向ければ、こちらも世界から高く評価されている、400年以上の歴史がある有田焼があります
有田焼を世界に広めるのに貢献している窯元「李荘窯」の器
「和多屋別荘」では世界的なシェフがデザインした器に料理を盛って
そんな佐賀にお酒好き女子3人が集まって、朝から活イカを肴にお酒を飲み、お腹がはちきれるほど食べた旅がなつかしい…。
佐賀平野に広がる中村牧場で育った牛肉を味わえる「佐賀牛なかむら」
佐賀県はこの春、ほんとうは世界のガストロノミーの舞台になるはずでした。“レストラン界のアカデミー賞”といわれるアワード「アジアのベストレストラン50」のランキング発表と授賞式が行われ、アジアのフードシーンに影響力を持つシェフやジャーナリスト、インフルエンサーが世界中から600人以上も集まり、数日に渡って盛大なパーティやイベントが開催されるはずだったのです。
東京の会場にこじんまりと集まった日本からランクインしたシェフたち
「サガは島?」なんて言っていた冒頭の彼らが、佐賀の美味を味わうたびに、美しい器を手に取るたびに、「ワーオ!」「アメージング!」なんて驚き、それらはSNSでただちに世界中に発信されていたはず。そう思うと無念でたまりません。
まずは国内旅行ができるようになったら、佐賀のあれこれをバンバン投稿して、彼らをうらやましがらせてやろう。性格の悪いわたしは、密かにそう目論んでいます。
取材・文/江藤詩文