日本随一の米どころ、魚沼でお米グルメと感動に出合う旅/前編 (新潟県・魚沼市)

日本人のソウルフード、お米。皆さんは、どんなお米がお好みですか? 数ある品種のなかでも「魚沼市産コシヒカリ」は独特の甘みがあり、冷めても美味しいと賞される不動の人気米。そこで、その一大産地である新潟県魚沼市を訪れ、炊きたてのごはんやお米を使ったグルメをたっぷりと堪能してきました。

さらに現地では迫力満点の芸術や知る人ぞ知る絶景など、心潤す出合いも盛りだくさんに体験。魚沼市の魅力をふんだんに詰め込んだ12日の旅を、2編に分けてレポートします。

 

東京からわずか1時間30分! 日本が誇るブランド米「魚沼市産コシヒカリ」の里へ

魚沼市は新潟県南東部にあり、周囲を2000m級の山々に囲まれた自然豊かな街。昼夜の寒暖差が激しいことが特徴で、国内有数の豪雪地帯としても知られています。その環境を生かし、ミネラルたっぷりの雪解け水で育てた「魚沼産コシヒカリ」は日本トップクラスの品質を誇ります。

そんな魚沼市の玄関口・浦佐駅へは、東京から上越新幹線で約1時間30分。到着後の市内観光にはレンタカーを利用すると便利です。

旅のスタートは、知られざる芸術スポットで神業彫刻を鑑賞 「西福寺」

西福寺は、室町時代後期の天文3年(1534年)に開山した曹洞宗の古刹。こぢんまりとした素朴な風情のお寺ながら、実は市内きってのアートスポットでもあります。参拝者のお目当ては、何といっても名匠・石川雲蝶(いしかわうんちょう)の彫刻です。

正面は雲蝶の彫刻が集まる「開山堂」。曹洞宗の開祖・道元禅師や寺を開いた開山様を祀るお堂。右は本堂

雲蝶は幕末から明治初期にかけ、おもに新潟県で活躍した彫刻家。寺社仏閣での作品づくりに専心し、彫刻以外にも絵画から漆喰細工、組子細工などの建築装飾まで多彩な分野で人並外れた才能を発揮しました。新潟県各地には今も作品の1000点以上が現存し、西福寺にはそのうちの20数点が残っています。

「越後のミケランジェロ」の異名をもつ雲蝶。境内には記念像も

なかでも境内にある「開山堂」では多くの雲蝶作品を見られます。その作品群は芸術性の高さから県の有形文化財に指定され、お堂は日光東照宮に劣らないとして「越後日光開山堂」とも呼ばれています。

中に入ると、まるで別世界。天井から欄間、壁の隅々まで五間四方の空間を雲蝶の作品が埋め尽くし、圧巻の美しさです。特に天井一面に彫刻を施した「道元禅師猛虎調伏の図」は制作に6年を費やしたという大作で、緻密な透かし彫りはもはや神業。岩絵の具による鮮やかな彩色は幕末の制作当時のままというから驚きです。

「道元禅師猛虎調伏の図」は雲蝶の代表作。龍神が虎退治をして道元禅師を守る物語がモチーフ

遠近法を取り入れた透かし彫りの欄間や、一刀彫りで仕上げた高さ2mの仁王像など傑作揃い

雲蝶作品は本堂にも。写真は襖絵「孔雀遊戯の図」

見る角度によって彫刻の人物の表情が変わったり、床板におしゃれな節隠しを施してあったりと、遊び心に富んだ細工も鑑賞のポイントです。節隠しの埋め木細工は50カ所以上もあるとのこと。ぜひ、訪れた方は探してみてくださいね。私はひょうたんやアヤメ、唐辛子などを見つけましたよ。

本堂の廊下や門扉に見られる埋め木細工も見どころ

西福寺

 

芸術で心を潤した後は、ご当地グルメに舌鼓 「レストランモンブラン」

1972年に創業し、魚沼市で「元祖」を名乗る地域密着型のファミリーレストラン。日常づかいはもちろん、家族の記念日に、親戚の集まりに、そして友人や同僚との飲み会にと、あらゆるシーンで親しまれている市民の憩いの場です。

店内は和洋を織り交ぜた昭和風のインテリア。懐かしさとともに居心地の良さを感じる

メニューにはハンバーグやカレー、丼物、ラーメンほか、和・洋・中の料理からスイーツまでバラエティー豊かな品々が並びます。

なかでも今回は看板メニューの「特製タレかつ丼」をいただきました。これが、運ばれてきてビックリ。ごはんの上に、長さ20cm近くもあるカツが3枚もそびえ立っているではありませんか! まさしく店名のごとく、ヨーロッパアルプスの最高峰「モンブラン」のようなビジュアルなのです。

左/「特製タレかつ丼」1480円、大盛り無料 右/もはや顔より長いヒレカツ。ワイルドにガブっと食らいつくのが流儀⁉

 

このメニューの誕生は10数年前。まかないで、カツに天つゆをつけて食べたことがヒントになったそうです。そのためカツをくぐらせるタレは甘辛で、カツオやいりこの出汁に醬油などを加えた和風味。素材となるヒレ肉は叩いて薄く伸ばしてから揚げているため歯切れがよく、ほどよいやわらかさで、サクッとした衣と絶妙のバランスです。

これが、あっさりとしたタレと相まって食が進む、進む。魚沼市産コシヒカリを炊いたもちもちの白飯とも至福の相性です。途中、ごはんの中から新たにハーフサイズのカツが現れるサプライズもありつつ、気付けば完食。大満足のランチでした。

レストラン モンブラン

 

老舗酒蔵で魚沼産米を使った日本酒造りを見学「越後ゆきくら館(玉川酒蔵)」

新潟県は言わずと知れた日本酒王国。なかでも「玉川酒造」は寛文13年(1673年)に創業した、県内でも指折りの老舗の酒蔵です。魚沼産の良質な米と清らかな水を使った日本酒は、国内外の品評会で数多くの栄誉に輝いています。

19代目当主の風間勇人さん。「『越後ゆきくら』は日本酒の2大鑑評会で最高賞を獲得した自慢の酒」

敷地内には酒蔵見学やお土産販売を行う「越後ゆきくら館」もあります。酒蔵見学は、酒造りや貯蔵の方法を造り手が直々に説明してくれ、とてもわかりやすいことが魅力です。

この酒蔵では先祖伝来の伝統的な酒を守り続ける一方、革新的な酒造りにも積極的に挑戦しています。コンセプトは「人の心を豊かにするお酒」。人の心に寄り添えるよう、喜怒哀楽のそれぞれのシーンに合うお酒を造って提案していきたいそうです。何て、素敵! そんなお酒があったら心強いですよね。

築約160年の土蔵は趣たっぷり。見学コースはひとりから受付、所要約15

見学後は無料の試飲タイム♪ 時期によりお酒の種類は変わりますが、常時810種類の飲み比べができます。この日のラインアップは、代表銘柄の「玉風味」、積雪を利用した雪中貯蔵庫の中で熟成させた大吟醸酒「越後ゆきくら」、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」で金賞を獲得した「イットキー」ほか。そして、運よく搾りたての限定酒にも出合えました! そのフレッシュさはここでしか体験できない貴重な味。いい思い出になりました。

試飲で気に入ったお酒は購入可能。酒粕や日本酒コスメなども販売

左から、創業時から造り続ける「玉風味」、「越後ゆきくら」、爽やかな飲み口の「イットキー」

越後ゆきくら館(玉川酒蔵)

 

米粉を使ったバウムクーヘンが大人気 「お菓子工房まるみや」

魚沼市産コシヒカリの米粉100%で作るバウムクーヘンが評判の洋菓子店。小麦を使わないグルテンフリーの生地は粘りが出にくく、通常のバウムクーヘンを作るより手間も技術もかかるそう。そこで、この店では店内工房で専属のパティシエが一つひとつ心を込めて手作りしています。その味には定評があり、開店後1時間ほどで売り切れてしまうことが多いそうですよ。

創業約100年。先代は和菓子も販売していましたが、現4代目が引き継いだ約25年前から洋菓子専門店に

なかでも「魚沼の木」は一番人気が高く、市が選りすぐりの特産品に送る「魚沼市プレミアム」にも認定されています。食べると、米粉らしい優しい甘さがあり、しっとりとした口あたり。上品な味わいに気持ちがほっこりとします。

フレーバーは、定番としてプレーンの「コシヒカリ」やチョコレートがあるほか、季節により桜味や宇治抹茶味なども。また、前出の玉川酒蔵の日本酒「玉風味」と酒粕を加えた地酒風味のもの、魚沼市産の皇室献上米の米粉を使ったものなどこの土地ならではの商品もあり、お土産に最適です。

上/「お米のバウムクーヘン『魚沼の木』コシヒカリ」(ホールタイプ)1512円(箱入り1728円) 左下/この店初の米粉入り商品「輝きマドレーヌ」(194円) 右下/焼いたままの長さ約60㎝、15ホール分をノーカットで。「まるごと1本焼き『グランドバウムクーヘン』」(ロングサイズ)17280

このほか、越後の大杉をモチーフにしたハードタイプのバウムクーヘン「越後杉」もおすすめ。外はサクッ、中はモチッとした食感で、発酵バターの豊かな風味とキャラメルパウダーが醸す香ばしさが後を引く美味しさです。

お菓子工房まるみや

 

夕食は地元名物の豚モツと魚沼市産コシヒカリの新米の食べ放題 「焼肉 はじめの一歩」

魚沼でホルモンと言えば、豚モツ。地元ではバーベキューに欠かせない食材で、市内には専門店も多く、焼肉店や居酒屋では定番中の定番だそう。こうしたホルモン文化は、70年ほど前に魚沼市と福島県の境に奥只見ダムを建設する際、工夫たちの間で気軽に補給できるスタミナ源として広まったことがはじまりといわれています。

魚沼市内にある人気の焼肉店「焼肉 はじめの一歩」

「焼肉 はじめの一歩」は、魚沼産の豚肉や牛肉など質の高い肉をリーズナブルに味わえる焼肉店です。

今回は醬油、塩、バジル、辛味噌の下味が付いた4種類の豚モツと魚沼市産コシヒカリの新米ライスが60分間食べ放題になる「期間限定!魚沼名物豚もつ食べ放題コース」をチョイス。何と、スープバー&ドリンクバーまで付いて1100円です!

魚沼のモツは生モツながら新鮮で臭みがなく、プリっとした食感。噛むほどに旨みがあふれ出てきます。なかでも爽やかなバジルの風味との組み合わせは意外な発見でしたが、ドストライク。もう何度おかわりしたのか思い出せません()。艶やかな魚沼市産コシヒカリの新米も旨みに富み、豚モツと鉄板のコンビです。

今回のコースは、土・日・祝の昼と金曜以外の平日限定、12月末まで。魚沼市が企画する魚沼産コシヒカリの新米食べ放題プラン「まんぷく魚沼定食」のひとつ 左下/焼肉も注文できる「2時間満足食べ放題コース」もあり

 

古湯・大湯温泉の和風旅館で七湯巡り 「泉湯の宿 かいり」

魚沼の奥座敷・大湯温泉は、開湯1300余年の歴史を誇る山間の温泉地。後編で紹介する奥只見湖や枝折峠の観光拠点にぴったりです。

なかでも「源泉湯の宿 かいり」は3本の源泉をもつ和風旅館。湯量豊富な天然温泉をかけ流しで楽しめます。泉質は肌あたりがやわらかな単純温泉。大浴場には合掌造りの内湯や露天の岩風呂、陶器風呂などがあり、朝と夜で男女の湯を入れ替えて7つの浴槽を体験できるようにしています。私が特に気に入ったのは洞窟風呂です。お籠り感があってリラックスできました~♪

朝食のごはんはもちろん、魚沼市産コシヒカリです。

右上から時計回りに、合掌造りの内湯、岩の湯、腰掛け湯、洞窟風呂。このほか寝湯なども

越後駒ケ岳から流れる清流・佐梨川に面して立つ宿

源泉湯の宿 かいり

 

後編は旅の2日目。奥只見湖周辺の絶景ビューや魚沼グルメをご紹介します。

 

取材協力:魚沼市役所観光課

取材・文 田喜知 久美

 

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