東京駅から北陸新幹線で最速2時間10分、新幹線の開通で、とっても近くなった富山。市内には路面電車やバス、レンタサイクルが充実し、コンパクトシティと呼ばれる利便性の高い街です。洗練された施設から老舗店まで、観光ポイントが点在し、歩いて巡ることもできます。コンパクトなのに密にならない、ほどよく楽しむことができる市内は、まさにwithコロナ時代にうってつけの観光地なのです。
市内は路面電車が走り、気軽に移動できる ©(公社)とやま観光推進機構
今回は富山城がある富山駅の南側をご紹介します。最初に訪ねたいのが、富山城の近くを流れる松川です。天然の外堀・神通川の名残りといわれ、明治時代、かつて暴れ川だった神通川を改修し、その後の都市計画とともに現在の松川ができました。川沿いは散歩する人や写生を楽しむ人など、市民の憩いの場になっています。春は約460本の桜が咲き乱れる名所となります。川沿いの桜のトンネルを抜けるのが遊覧船です。
春も冬も素敵な松川沿い
富山城址公園内にある遊覧船乗り場の松川茶屋(駅から徒歩約10分)から、特別に和装の女性3人が同乗する「秋の和のおもてなし・特別便」30分のクルーズを体験しました。桜の樹々が紅葉を始め、秋がゆっくり近づき清涼が川面を揺らすなか、出航です。和装の女性は、操舵手で県のガイドの中村志保さん、箏曲演奏の高橋英里さん、皇風煎茶禮式師範の石黒美千子さん。
秋の和のおもてなし 特別便
軽やかなガイドとともに、琴の音を聞きながらお茶とお菓子をいただくという、優雅なクルーズです。遊覧船は今年で33年目、運行会社の富山観光遊覧船は、お花見のクルーズはもちろん、様々な企画を考えていて、この秋はオリーブオイルソムリエとのブランチクルーズなども開催。この和のおもてなしも、日本でしか、松川でしかできない素敵なアイディアです。
船上はゆったりとした時間が流れます。丁寧に淹れてくださった煎茶とお菓子、そして耳に残る音楽。船は幾つかの橋の下をくぐるのですが、橋の下では琴の低音域が大きく反響し、音が膨らみます。そんな体験も楽しいものでした。
松川茶屋では、人気の富山城抹茶パフェを! 甘いのが苦手な私でも美味しくいただきました。また、松川茶屋内には、「滝廉太郎記念館」(入館無料)が併設されています。明治の作曲家、滝廉太郎は7歳のときに1年8か月を富山で過ごし、富山城址内にあった小学校に通っていました。有名な「荒城の月」は富山城がモチーフともいわれています。1980年代に活躍したヘヴィメタル・バンド、スコーピオンズの荒城の月も聞くことができます。
一番人気の富山城抹茶パフェ
併設の滝廉太郎記念館
次にお城の周辺を散策。市のシンボルである富山城は富山藩前田氏13代の居城として整えられました。往時の面影を残すのは堀と石垣のみですが、復興された天守閣内は「富山市郷土博物館」になっています。前田利長着用の長さが140㎝もある銀鯰尾形兜(ぎんなまずおなりかぶと)は必見!ほんものです。しかもこれ、木製と聞いて、二度びっくりでした。さらに天守展望台からの市内の眺望も楽しんでください。
ほんものの兜、しかも木製!
石垣もチェック!
松川沿いを少し西へ歩くと「高志(こし)の国文学館」が見えてきます。富山県ゆかりの作家や作品が一堂に集う文学館で、館長は「令和」の生みの親である、国文学者の中西進さんです。展示方法がとてもユニークで、万葉集の歌が体感できる体験型装置や、漫画やアニメ、映画など、あまり文学に興味がない人でも楽しめる工夫がされています。富山県出身の藤子不二雄(A)、藤子・F・不二雄のお二人の漫画が同時に展示されているのはここだけとか。また、11月30日までは、やはり同県出身の映画監督・滝田洋二郎展が行なわれ、映画「おくりびと」で受賞した米国アカデミー賞外国映画賞のオスカー像も展示されています。
マンガ好きも映画好きも楽しめる文学館
後編では、新旧が美しく同居する西町界隈をご紹介します。
取材協力:「月刊グッドラックとやま」
取材・文 関屋淳子