田村酒造
東京の西郊、緑豊かな多摩。自然の森の恵みを受け、美味しい水を活かした酒造や発酵食の個性的な数々のスポットが迎えてくれます。新鮮な空気は散策にも気持ちよく、発酵を巡る知られざる多摩のショートトリップに出かけてみませんか?
古民家カフェや青梅チーズ、スムージー!
羽村市にある「中車水車小屋」は、昔の水車を見ることができる、趣のある珍しい古民家カフェです。店の裏に流れる水路の音を聴き、歴史を感じる雰囲気のなか、ランチ、スイーツ、ドリンクがゆったりと楽しめます。特製のカレーは隠し味に八丁味噌を使い、コーヒーは地元の店「豆香(とうか)」で焙煎された薫り高くこだわりの味わいです。
おまかせランチ、マンデリン(ハンドドリップ)のコーヒー
羽村市には推古天皇の創建と伝えられる「阿蘇神社」があります。清らかな空気に満ち、散策にぴったりです。
阿蘇神社
青梅市「フロマージュ・デュ・ テロワール」は、土地、地域を大切にする“テロワール”を名づけた店。フランスにある乳製品の国立専門学校で研鑽を積んだ、オーナーの鶴見和子さんがチーズを作っています。人気のフロマージュ・ドーメは、フランス語でFromage d'Omé、つまり「青梅のチーズ」という意味。ウォッシュタイプなのにねっとりと柔らかく、青梅の小澤酒造 澤乃井の地酒で仕上げた、絶妙で奥行きのある美味しさです。店の隣に工房を持ち、季節の変化に応じて作るチーズや、アロマフレーバーを足したチーズなど、個性的なラインアップがショーケースに並びます。
フロマージュ・ドーメほか、原材料が地域に根ざしたチーズはお酒もすすむ美味しさ
八王子市「こうじや八王子」は、甘こうじスムージーと発酵素材のおそうざい屋。テイクアウトがメインですが、ウッドデッキのテラスもあります。スムージーは、ほのかな自然の甘み。砂糖の代わりに、甘こうじなど自然由来のものを使っています。国産の無農薬にこだわり、おそうざいの食材にはタンドリーチキンなどのメニューがあります。塩の代わりに塩こうじを使い、腸に良くないとされる小麦粉や食品添加物も極力使っていません。しばらく店に通う方から、腸内環境が整って体調や肌に変化を感じた、との感想も。西八王子駅から5分の店です。
豆乳を使ったスムージー「バナナこーじー」
ビールや日本酒、お酒にも合うチョコレート!
昭島市「イサナブルーイング ブルワリー」は、クラフトビールを自家醸造するブルワリーを店内に持つビールパブで、自家焙煎のコーヒーを出す店でもあります。バリスタの資格を取り、航空宇宙関係も扱うメーカーで機械エンジニアだった経歴のオーナーが2018年に店を開き、2023年は5周年目を迎えました。昭島の水道水は深層地下水で、水の美味しさをクラフトビールにもコーヒーにも活かし、味を日々追求しています。
ホップの薫りを感じ、発酵中に米こうじを加えるという店のフラッグシップ的なビール「CLASSIC PALE ALE(Ordinary Bitter)」は、とても爽やか。メニューは、イギリスのバーフードのようなこだわりの自家製ピクルス「たまごのピクルス」や「あきしま餃子」ほか食事系、発酵系のスイーツなどもあり、ユニークです。店名に使われている「イサナ」は、鯨を意味します。万葉集にも詠まれた古名で、ここ昭島で鯨の化石が発見されて話題になったことにもヒントを得て名付けたそうです。
オーナーの千田さんと。個性的な店で、「CLASSIC PALE ALE」ほかを飲み比べ!
昭島市「TOKYO CHOCOLATE FARM」(トーキョーチョコレイトファーム)は、シェフショコラティエの大岡英博さんによる本格派ショコラの店。「ル・ショコラ・ドゥ・アッシュ」でも経験を積んだ大岡さんが、美味しいチョコレートをこの地から発信したい、として2018年にオープンしました。ヨーロッパ系の厳選された本場の原材料を使用して質にこだわりながら、買い求めやすい気軽な楽しさを目指しています。お店は、ピンクを基調にポップでカラフル。ボンボンなどすべてのチョコレートがひとつひとつ手作りで、店には絶え間なくお客様が訪れる地元でも人気の店です。クレープやジェラートもあり、「ヴァローナ・カカオ 66%」はビターチョコレートジェラートで、風味豊かな濃厚な味わいはリッチでご褒美感があります。
ピンクの外観! 本格的なショコラのスイーツ
奥多摩町「田村酒造」は、幻の酒と名高い「嘉泉」の醸元。創業200年を迎えた、地元を代表する名蔵です。敷地内には玉川上水の分水が流れ、素晴らしい眺めの庭園を有し、旧水車小屋など登録有形文化財の建造物は残すべき歴史的重みを持っています。かつて当時の天皇皇后両陛下が訪れ、記念碑がたてられました。圧倒的な火力の火入れを彷彿とさせる、昔ながらの酒蔵の高い煉瓦煙突も残されています。仕込み水は敷地内の井戸水で、酒造りに最適な水を使い、丁寧に熟練の腕が造る味わいは日本酒好きにも愛されています。
歴史ある登録有形文化財と試飲や直売所 ※見学の詳細はサイトまで
福生市「石川酒造」は、登録有形文化財に指定された建造物を6棟有する酒蔵です。日本酒作りの芳醇な薫りが漂う酒蔵は古い梁などを手入れして使い、歴史的な長屋門のある当主の居宅も趣があります。蔵を代表する銘酒「多摩自慢」は、美味しい地下天然水を用い、“多くの人の心を満たすように”と名付けられました。
広い敷地内の歴史的建造物の数々、仕込み水も
本蔵のほかに、奥の蔵ではクラフトビール作りも。ヨーロッパの雰囲気を取り入れたイタリアンレストラン「福生のビール小屋」では、自慢の日本酒はもちろん、「TOKYO BLUES」など、現在を意識した新しい味わいを感じるビールや、酒粕を使った魚介のパスタなども味わえます。
「福生のビール小屋」の料理とクラフトビール、直売店「酒世羅」
※見学の詳細はサイトまで
また、福生市にある福生ベースサイドストリートは、アメリカの空気を感じることができる街。横田基地沿いの国道16号には、アメリカンテイストの店が並びます。
まるで映画の世界!レトロなアメリカンスタイルのカフェダイナー「The MINT MOTEL」
レインボーカラー! 「Hoop」はベーグルとカフェの店
立川市「立飛麦酒醸造所」は、2021年12月にオープンしたばかりの新しい醸造所。始めるきっかけとなったのは、西国立にあった『カミカゼ ビール』を再開することでした。立飛麦酒醸造所のコンセプトは、基本に忠実な本格派ビールを提供することで、使用するのは麦芽とホップ、水、酵母だけです。
「立飛ピルスナー」(Tachihi PILSNER)は、世界的な品評会「World Beer Awards 2023」において、ラガーカテゴリーのチェコスタイルピルスナー部門で世界最高のワールドベスト(World’s Best Czechs Style Pilsner)金賞を受賞しました。世界が認めたピルスナーは、雑味がなく“綺麗”で飲みやすい味わいです。醸造所内が窓から見える隣の直営店で、レギュラービールほか、ビールを飲み比べして楽しむことができます。
醸造所を眺めながら、ピルスナーや期間限定の新開発のビールを飲む
多摩に泊まるなら、緑豊かな庭を持つオークラグループの伝統に培われた昭島市の都市型リゾートホテル「フォレスト・イン 昭和館」や、先に紹介した「立飛麦酒醸造所」と姉妹施設の立川市「SORANO HOTEL」 があります。
「フォレスト・イン 昭和館」、「日本料理 昭和の森 車屋」から夜の日本庭園の眺め
知られざる東京を探しに、ショートトリップに出かけてみませんか?
取材・文 マドモアゼル安原