三方五湖と日本海
東京駅から長野・富山を経由し石川県・金沢駅までつながる北陸新幹線。来る3月16日には金沢から福井県・敦賀が延伸、途中駅は小松・加賀温泉・あわら温泉・福井・越前たけふの5駅です。東京から敦賀までは最短で3時間8分、福井県がぐっと身近になります。
福井県は敦賀市と今庄町の間にある木の芽峠を境に北を嶺北、南を嶺南と分けて呼んでいます。嶺北は福井市を中心とする越前地方、嶺南は関西に近い若狭地方で、両者は気候や文化が異なります。
敦賀をぶらぶら
新幹線開業間近の敦賀駅。徒歩15分ほどのところに氣比(けひ)神宮があります。祭神は伊奢沙別命(いざさわけのみこと)など7柱で、記紀にも記される由緒ある社です。重要文化財の正面の大鳥居をくぐり、境内に進むと清々しい空気が満ちています。
主要社殿は戦後の再建ですが、格式ある佇まい。「奥のほそ道」で俳人・芭蕉も訪ねています。まずは道中の安全を祈願して旅を始めましょう。
敦賀は古くから大陸との玄関口として栄えた港町。入江が多いリアス式海岸の敦賀湾では新鮮な海の幸が水揚げされるとともに、敦賀ふぐや敦賀真鯛などの養殖も盛んです。北陸の冬の主役といえば越前がに。雄の漁期は3月20日までですので、味わっておきたいものです。
海鮮丼専門店の「うお吟」は県内外から多くのグルメが集まる有名店。真鯛やハマチ、烏賊、蛸などをふんだんに使った海鮮丼やかき揚げの天丼などが人気ですが、季節限定のスペシャルメニューが「越前蟹スペシャル」。
ズワイガニの身を蟹味噌と合えて盛り付け、北海道産のウニとイクラ、さらに鮪や鰤、鯛などのたっぷりの海鮮ネタも楽しめるという、一日10食の限定食! 一人前で蟹を半身使うという贅沢さもさることながら、どこをどう食べても美味しすぎるのです。海鮮ネタに仕込まれる胡麻と胡瓜、大葉がいいアクセントになっています。提供は3月まで、この丼を食べに敦賀に行く価値ありです!
景勝地・三方五湖を堪能
敦賀から西へ美浜町へ向かいます。電車ではJR小浜線美浜駅で下車すると、目の前に2023年6月にオープンした道の駅「若狭美浜はまびより」があります。開業から5か月で20万人が来訪したというこの施設、1階にはお土産探しにぴったりな直売所の「みはまの市場」やカフェ、キッズスペース&託児所、2階には食事処や居酒屋、ほかに講演会などが開催できるイベントレンタルスペースもあります。
掲示板には電車の時刻が表示されるので(左下写真)、飲み食いしても安心、駅近の道の駅って、レアケースですよね。さらに周遊バスなどの発着場所でもあるので、とにかく便利なのです。
国の名勝に指定される三方(みかた)五湖は、三方湖、水月(すいげつ)湖、菅(すが)湖、久々子(くぐし)湖、日向(ひるが)湖の5つの湖の総称です。5つの湖はすべてが繋がっているのですが、淡水、汽水、海水と違った性質をもつため、水の色が微妙に異なります。そして海水魚から淡水魚まで様々な魚が生息し、水鳥も多いことからラムサール条約に登録されています。
また、水月湖の湖底には、7万年の歳月をかけて積み重なった「年縞」と呼ばれる縞模様が形成。この年縞を解析することで当時の自然環境のデータが得られるそうで、考古学や地質学における「世界のものさし」となっているとのこと。地層好き、考古学好きの方はぜひ「年縞博物館」でその詳細を!
まずは神秘に包まれる三方五湖を船で巡ってみましょう。発着は美浜町レイクセンター、日本初となる再生可能エネルギーを活用した「電池推進遊覧船」(太陽光パネルから蓄電された電気の力のみで進む)に乗船です。
ガイドの案内のもと、遊覧のコースは久々子湖を出発し、難工事のすえ、人の手により岩盤を削って造られた浦見川を通り水月湖へ。
湖のほとりには秘湯の宿・虹岳島(こがしま)温泉が佇み、左手には菅湖が見えます。豊かな自然を感じるとともに、驚くのは遊覧船は走行音がほとんどないのです。本当に静かに湖を走るので、野鳥も逃げずに、寛いでいます。冬には多くの野鳥が羽を休めていますよ。
三方五湖、今度は全景を見に三方五湖レインボーラインへ。リフトやケーブルカーで登った先、美浜町と若狭町の境に立つ梅丈岳の山頂は公園として整備され、「天空のテラス」と名付けられた足湯やソファー席がある5つの展望テラスがあります。
山頂からの景色は三方五湖や若狭湾が一望できる360度のパノラマ! 絶景です。また、美浜町出身の歌手・五木ひろしさんの「ふるさと」の歌碑があり、タッチすると曲が流れて、マダムたちがうっとりしていました。
趣の異なるテラスで絶景を堪能し、のんびりゆったり。絶景とともにレインボーの傘やレインボーライン名物のブルーソフトクリームの記念撮影もお忘れなく。
後編は鯖街道の起点、小浜周辺をご紹介します。
協力:福井県嶺南振興局 青々吉日
取材・文/関屋淳子