大阪市と兵庫県・西宮市にキャンパスを持つ大手前大学。その現代社会学部の観光ビジネス専攻の学生が主体となり、レストランやカフェなどを紹介する「街あるきマップ」を制作しました。街歩きの舞台はキャンパスのある西宮市の夙川・苦楽園・香櫨園エリア。マップ制作過程では、新たな発見や気づきがあったようです。
阪急夙川駅周辺は、高級住宅街が立ち並ぶ屈指のお屋敷町。夙川の河川敷には約1000本の桜が見事な景観を作り出し、また昭和7年(1932)に完成した壮麗な大聖堂のカトリック夙川教会など歴史的な建造物も残る緑豊かで閑静な佇まいが魅力です。関西圏の方にとってはあこがれの地ともいえる場所にキャンパスがあるなんて羨ましいかぎりですね。
春は桜並木に彩られる夙川
カトリック夙川教会
「街あるきマップ」は当初渡邉ゼミ・海老ゼミの数名で計画していた阪神間の文化をテーマとしたマップづくりプロジェクトでした。しかし新型コロナウイルスの影響で広範囲での活動が難しくなったため、大学からの徒歩圏で少人数で調査できるマップ作成に変更。総勢50名の学生が少人数のグループをつくり、制作にあたりました。マップ作成の目的は2021年度の新入生と、本年度からさくら夙川キャンパスに移転した大手前短期大学生に、キャンパス周辺を知ってもらうこと。学生の皆さんはまず調査対象の選定から行ないました。
「大学への起点となる駅に近いことや新入生の気持ちになってお店を選びました。1年生は未成年ですから、お酒を提供するお店でもあまりその部分を強調せずに紹介するなど、配慮しました」「ほかのグループとかぶらないようにしたり、大学生が気軽に立ち寄れるところを選びました」
お店が決まった後は、アポイントを取り、出向いて取材・原稿作成・写真撮影も学生の皆さんが自ら行っています。
「アポイントを取る際や取材の際は、大手前大学の代表として、礼儀正しく失礼のないように気をつけました」「お店のこだわりを伺い、お店の魅力を最大限に伝えることができるように何度も原稿を書き直しました」「ネットの情報に惑わされない、正確な情報を載せることを心掛けました」
校正についても再度店舗を訪ねて確認してもらうなど、丁寧な取材を試みたといいます。
こうして2021年4月に完成したマップは、コロナ禍により対面授業の実施が可能だった4月の1週間の間で、直接新入生たちに手渡すことができ、評判も上々だったそうです。さらにオープンキャンパスでの配布、西宮市観光案内所や市役所(1階または8階)、阪神西宮おでかけ案内所、阪急西宮北口など(無くなり次第終了)でも入手できるようになったとのことで、大学周辺にも周知されているようです。
実際に手に取ってみると、かわいらしいイラストが印象的で、しっかりした店舗情報は、市民の皆さんはもちろん、この地を訪ねた人にもおすすめの内容です。
「協力いただいた店舗様にアンケートを行ったところ、満足のご回答が多かったですね。コロナ禍で地域のイベントなどがなくなってしまった状況ですが、学生との交流を望む声が大きかったことも再発見できました。大学が地域の中で果たしていく役割やコロナ禍で注目される身近な地域への観光についても学生たちは肌で感じることができたのではないでしょうか」と、現代社会学部担当の海老良平先生は話します。
西宮市や観光協会、事業者などと連携した地域活性化プロジェクトも計画中とのことで、今後、西宮の、夙川界隈のさらなる魅力発信が楽しみです。
協力/大手前大学 現代社会学部 観光ビジネス専攻
取材・文/関屋淳子