お茶とサウナと紅葉と。心身をリセットする滞在型美食オーベルジュ「moksa Rebirth Hotel モクサ リバース ホテル」(京都市)

紅葉イメージ

旅恋アンバサダー「世界のファインダイニング」担当の江藤詩文です。みなさま、秋のトラベルプランはもうお決まりですか? 入国制限が緩和されたとはいえ、空前の円安で、わたしの周囲ではこの秋は国内旅行を楽しむ人が多いみたい。そんなみなさまに、紅葉シーズンに訪れたい、とっておきのオーベルジュをご紹介します。

京都郊外。比叡山のふもとで、薪火で焼き上げた大原野菜のおいしさにハマった「MALA マーラ」(※関連記事はこちら)。料理長・宍倉宏生さんの料理を味わえるのが「moksa Rebirth Hotel モクサ リバース ホテル」(以下moksa)です。

エントランス

高野川のせせらぎを眺め、“鏡紅葉”で有名な「瑠璃光院」を過ぎると現れるこじんまりとした一軒宿。ロビーに入った瞬間から、大きな窓を彩る苔庭の美しい自然とお茶の香りに癒されます。ここからはじまる非日常の世界。

正式名称に“リバース”と入っていることからもわかるように、このホテルのコンセプトは”再生”。moksaとは、梵語で”解脱”や”解放”といった意味があるそう。世界中が停滞した2年半を経て、新しい時代に向かって動き出した今の気分にぴったりです。

お茶カウンター「帰去来」でお菓子と共にお茶を体験

そんな”リバース”をサポートしてくれるのが「お茶」「蒸湯」「自然と調和した薪火料理」です。

美しい緑に目も心も休まるカウンター「帰去来」でいただくのは、丁寧に淹れられたお茶。ゲストの体調や好み、季節に合わせて「京都小慢」の中国茶と台湾茶、「hahahaus」の養生茶、「一保堂」の日本茶などが提供されます。

上質なお茶、特にいい中国茶って酔いますよね

読者のみなさまはすでにご存じのように、私は断然アルコール派。しかもmoksaはオールインクルーシブでビールもワインも好きなだけ(※一部を除く)楽しめたりするのですが、実はお茶も大好き。お茶は茶人・堀口一子さんがセレクトしています。

お茶に酔いつつ庭を眺めながら、滞在中の時間の過ごし方をぼんやりと考えます。京都市内には行きたいカフェやレストランがたくさんあり、ついつい予定を詰め込んでしまいますが、ここまで来てしまえば何もない。そうそう、この中庭は雨が降ると風情がいっそう増す気がして個人的にはお気に入り。到着してしまえばあとは”おこもり”が基本スタイルという私のような旅人は、雨が降ったらむしろラッキーかもしれません。

もうすぐこの中庭は赤く染まるそう

これから何をしようかな。時間に追われることなく考える優雅な時間。館内のアートを鑑賞するか、お部屋でのんびりするか、それとも「蒸湯」で整うか。moksaのある八瀬は「窯風呂」発祥の地とされていて、「壬申の乱」で傷を負った大海人皇子の傷を癒すために村人が「蒸湯」を献上したという記録が残っているように、昔から療養・養生の地とされていたとか。「窯風呂」は日本の古式サウナともいえるわけで、そんな歴史的視点からmoksaには3室の異なるコンセプトのプライベートサウナがあります。

このサウナをプロデュースしたのは、“サウナー”さんたちの間では聖地と呼ばれている静岡「サウナしきじ」のお嬢さんである笹野美紀恵さん。サウナ巡りが日課の“サウナー”さんによると、サウナの温度と湿度、比叡山の地下水を使った水風呂とのバランスが”整う”のに最適だそう。

私にとっては、サウナや水風呂エリアのデザイン性が高く、リラクゼーションスペースでドリンクを飲んだりフルーツをちょっとつまんだりできるなどスペースが贅沢に取られているところが、トルコやジョージアで楽しんだハマムを思い出させてくれて、ちょっとした外国気分を味わえました。

炭による浄化作用があるとされる「炭蒸(たんじょう)」

神聖な木とされる檜を使った「檜蒸(ひじょう)」

コラーゲンを活性化させるというミストサウナ「美蒸(びじょう)」

この日はスパークリングのぶどうジュースとフルーツが用意されていました

あちこちにさりげなく飾られたアートはいずれも現代作家による作品。展示品だけでなくお茶カウンターの茶器が作家ものだったりするのですが、見る人に審美眼を求めるようなエッジの効いた作品ではなく、どこかユーモラスだったり、民族的だったり、温かみがあったりするものがセレクトされているから親しみやすい。

特に私が気に入ったのは、沓沢佐知子さんの作品「moksa jin(モクサ ジン)」。ジョージアで愛されている宴会部長「タマダ」(Googleしてみてください)みたいなとぼけた表情ですが、moksaの守護神だそうです。

館内のアート。左上のかわいい像が「moksa jin」です

ゲストルームは31室。苔庭と比叡山ビューの「ガーデンスイート」、高野川ビューの「リバースイート」、コンパクトでひとり旅にも向いている「スタンダード」などがありますが、私のお気に入りは「リラックススイート」。お昼寝したくなる畳と座面が広めのソファ、ベッドがあり、あっちでもこっちでもとにかくゴロゴロできる。用意されているルームウェアも着心地がよく、ひたすらくつろいで(だらけて?)過ごしました。

ゴロゴロ派にぴったりの「リラックススイート」

たっぷりと眠った翌朝の楽しみは朝食ですよね。大原野菜をたっぷり使ったメニューは宍倉宏生さんが考案したもので、ひと品ひと品工夫を凝らして丁寧につくられています。私がmoksaをオーベルジュと呼ぶ理由はここにあります。

朝食は和食・洋食・養生食の3種類からチョイス。宍倉さん流TKGは絶対食べてみて!

朝食後はチェックアウトしてもよいのですが、食いしんぼのみなさまにおすすめしたいのが、前出の別記事でご紹介した「わっぱ堂」細江聡さんが手がけるお弁当。おひとりで畑仕事と料理をやっているため対応できない場合もありますが、事前予約をすれば細江さん手づくりのお弁当を届けていただける(または受け取りに行く)ことも。比叡山を散策して自然の中でお弁当を広げよう。そう思っていたのですが、できたてのお弁当があまりにもおいしそうで、その場で食べてしまいました。

季節の野菜がふんだんに使われた「わっぱ堂」のお弁当

moksaの中庭は11月下旬ごろ紅葉のピークを迎えそうな見込みです。ご近所の「瑠璃光院」の今年の秋の特別拝観は12月12日まで。moksaステイに拝観を合わせて「これぞ日本の秋旅!」を楽しまれてはいかがでしょうか。

moksa Rebirth Hotel

公式サイトから宿泊予約できます

※データは全て訪問時のもの。季節などにより変更されます

取材・文/江藤詩文

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