水戸と言えば偕楽園、偕楽園と言えば梅。というわけで、3000本の梅が咲き誇る梅の名所では、現在、「チームラボ 偕楽園 光の祭」が開催中です。昼はのんびり梅を愛で、夜は光り輝くアート空間にどっぷり。今すぐ、水戸へ出かけよう!
マスクをしていても梅の香りにくらくら
金沢の兼六園、岡山の後楽園と並ぶ日本三名園の偕楽園は回遊式庭園。早咲きから遅咲きまで約100品種の梅があり、2か月以上、梅の花が楽しめることで知られます。天保13年(1842)に開園した偕楽園は、水戸藩第9代藩主・徳川斉昭により、藩主や藩士のみならず庶民にも開放する目的で造られました。梅は春を告げる花として詩歌の題材となるとともに、実は梅干しとして軍事や飢饉の際の非常食となることから、広く植樹されました。倹約を徹底し、実用を重視した斉昭の考えがあってのことでした。
園内に入れば、そこはもう、梅の楽園。桜より花が小さくぽつぽつと咲く梅は、ときに地味な印象を受けますが、ゆっくり歩きながらそのふくよかな香りを楽しみ、愛らしい姿を観賞するのがおすすめです。
園内には斉昭自らが設計し、茶会などが開かれた好文亭があります。木造二層三階建ての本体と、奥御殿から成り、奥御殿には竹の間やツツジの間、紅葉の間など10室の和室があり、雅な襖絵に目を奪われます。また楽寿楼と呼ばれる最上階からは千波湖などを見晴らす眺めも。お殿様気分を味わってください。
つつじの間と竹の間
好文亭・楽寿楼からの眺め
日本遺産の弘道館は大河ドラマのロケ地
斉昭が偕楽園とともに造成に力を注いだのが藩校の弘道館で、ここも梅の花が満開です。NHK大河ドラマ「青天を衝け」では竹中直人さん演じる斉昭と、のちに徳川慶喜(草彅剛さん)の子供時代が描かれました。「尊攘」の書が掲げられた部屋や武術の試験が行なわれた対試場などで昨年11月に撮影されたそうです。
近世日本の教育遺産群として、日本遺産にも登録された弘道館は当時の藩校としては最大規模で、学問・武芸から医学・薬学・天文学などまで幅広い武士教育が行なわれました。ここでの教えはのちに水戸学として発展し、明治維新への原動力になりました。
扁額 斉昭による「游於藝」(げいにあそぶ)
弘道館の対面には水戸城二の丸跡が広がります。新たに復元された大手門が聳えていますので、合わせて散策してみましょう。
復元された大手門
【ちょっと寄り道・吉久保酒造】
水戸市に蔵を構える吉久保酒造、代表銘柄は「一品」「百歳」です。12代目となる社長の吉久保博之さんを中心に若いスタッフが集まります。創業は寛政2年(1790)、米穀商から転業。地酒として長く親しまれる酒造りは、市内の笠原水源から湧き出す軟水を用いています。笠原水源は、水戸市の水不足解消のために水戸黄門こと水戸光圀が上水道の笠原水道を引いた水源。安全で美味しい水ということで、今も人気があります。
そして吉久保酒造の新たな試みが鯖と一緒に飲むお酒、「SABA de SHU(サバデシュ)」。茨城県は国内有数の鯖の水揚げ高を誇るということで、鯖の旨みを愉しむために、数種類の日本酒をブレンド。焼き鯖も締め鯖も鯖煮にも合う! さらに鮭専用の「Salmon de SHU(サーモンデシュ)」も開発。感性が光る新たな魅力のお酒を生み出しています。
偕楽園を舞台に光り輝く卵や竹林を歩く行列
再び偕楽園へ。「チームラボ 偕楽園 光の祭」を楽しみます。デジタルテクノロジーにより、自然を破壊することなく、「自然そのものが自然のままアートになる」という光のアート空間です。東門から入ると、まず、不思議な音楽とともに好文亭の前に広がる庭園の松やツツジなどが光り輝き、昼間とは違う雰囲気に驚きます。
呼応する松とつつじ / Resonating Pine and Azalea
teamLab, 2021, Interactive Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi
順路に沿って進むと、次々と作品が展開します。人々が足を踏み入れると、それに合わせて光の線の集合が生まれ広がる作品や、木々の中に点在する卵のような光のovoid(卵形体)。この卵はゆっくり光を放ち、さらに人が手で叩いたりすると、光の色を変えます。それと呼応するように周りの木々も色を変え音色を響かせながら変化していきます。卵はまるで命が吹き込まれたかのように、空間を彩り人々と戯れているかのようです。
具象と抽象 - 陽と陰の狭間 / Abstract and Concrete - Between Yin and Yang
teamLab, 2021, Interactive Digital Nature, Sound: Hideaki Takahashi
自立しつつも呼応する生命と呼応する大杉森 / Autonomous Resonating Life and Resonating Giant Cedar Forest
teamLab, 2021, Interactive Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi
さらに無数の花々が映し出される樹齢800年の太郎杉や台風で倒木となった次郎杉などがあり、そして孟宗竹の林の前では多様な肖像群の行列がゆっくり動きます。作品はコンピュータプログラムにより、リアルタイムで描かれ続けているということで、この瞬間の絵は二度と見ることができないそうです。行列と一緒に歩いて対峙することで同じ時空を感じられるかも。
増殖する生命の巨木 - 太郎杉 / Ever Blossoming Life Tree - Giant Taro Cedar
teamLab, 2021, Digitized Nature, Sound: Hideaki Takahashi
Walk, Walk, Walk - 孟宗竹林 / Walk, Walk, Walk - Moso Bamboo Forest
teamLab, 2021, Digital Installation, Endless, Sound: Hideaki Takahashi, Voices: Yutaka Fukuoka, Yumiko Tanaka
光、映像、音楽などによるまったく新しいアートな偕楽園の姿を体験してみてはいかがでしょう。
イベントは2021年3月31日まで。18時~20時30分(最終入場20時)
取材協力:茨城県広報PR事務局、チームラボ
取材・文/関屋淳子