三浦半島の西海岸、小網代湾で画期的な取り組みが本格始動しました。その名も「小網代湾海底熟成ワインプロジェクト」。ワインを海底に沈め、半年間熟成させるプロジェクトです。小網代湾は水温や波の穏やかさが安定することから、海の微振動がワインの熟成を促して味わいに変化をもたらすというもの。公募で集められたワインは約1700本。これをこの12月中に沈め、2022年6月に引き揚げるのです。その現場に立ち会いました!
早朝の小網代湾、風もなく穏やかな沈下日和。この日は150本ほどのワインを10m下の海底に沈めます。地域の観光振興活性化のために始まったこの取り組み、2018年にワインを海に沈めたときは潮に流されてしまったといいます。その後試行錯誤を繰り返し、ケースを保護する鉄の籠で安定感を出すなど、苦労を重ねてきたとのこと。沈下の場所は、以前は若布の養殖場だったところで、湾内のなかでも特に水温が14℃ほどに一定しているところです。
船に積み込みいざ出発。籠には樫の木で作った魚礁を付けています。これは魚をおびき寄せるためのもの。湾内を使わせていただく以上、漁師の方にも利益になるようにということです。ワインボトルは小網代産のニホンミツバチからとれた蜜蝋でコーティングしています。その作業は障がい者就労支援センターの就労者の皆さんが行なっています。
沈下のポイントでゆっくりと引き下ろされるワイン。「美味しくなるんだよ~」と、関係者一同の期待を込めて海の底へ。じつは私もワインを2本、お願いしています。さざなみという天然のワインセラーの中で、じっくり、まろやかに熟成されるワイン。引き揚げの時が今から待ち遠しいかぎりです。
引き揚げられた熟成ワインのボトルには多くのフジツボが付着、見た目もビンテージ感がアップしていますね。熟成費用としては蜜蝋作業や沈下・引き揚げなどで1本2600円。ワインに付加価値を与えるだけでなく、ロマンがありますよね。自分でいただくのはもちろん、贈答用にも喜ばれそう。半年後のご報告もぜひご期待ください!
小網代湾海底熟成ワインについては
取材・文/関屋淳子