「蔵めぐり」、飲んベえにとってはグッとくる言葉です。でも焼酎蔵も日本酒蔵もワイナリーも蒸溜所も徒歩で巡るのはなかなか難しいものがあるのが実状。バスや電車で巡るという手もありますが、あまり現実的ではありません。観光タクシーをアレンジするか、あるいは誰かが犠牲(=ドライバー)になるか。
酒蔵の煙突の高さは15~20mほど。かつては酒米を蒸す工程で使われていたが、いまではほとんどがその役目を終えている。
そんな時、広島県東広島市の西条の存在を知りました。広島駅から電車で40分ほどの場所にある西条は、兵庫の「灘」、京都の「伏見」と並ぶ、日本三大酒どころのひとつ。現在は7つの酒蔵が営業していて、そのすべてがJR西条駅から徒歩圏内にあるのだとか。私のなかの飲んべえの血が騒ぎだしました。
いくつかの蔵では、仕込み水を無料で提供。
お酒造りに適した気候と豊富な地下水の恩恵を受けた西条は、大正から昭和にかけて酒造りの街として名を馳せ、今も7つの蔵元がお酒を造り続けています。そして、西条駅周辺の東西 約1kmは、「西条酒蔵通り」と呼ばれ、そこに7つの酒蔵が連なっているのです。
多くの蔵では、無料、もしくは有料の試飲を行っていて、ほろ酔い気分で、赤レンガの煙突(12本あるそうです!)やなまこ壁、西条格子など独特な風情を残す街並みを歩くのも楽しいはず。多くの酒蔵の入り口付近には、「仕込み水」を汲める井戸もあり、「仕込み水」の飲み比べも楽しそうです。
賀茂鶴酒造では有料で飲み比べも。
観光客向けの設備がもっとも充実しているのは、大吟醸酒を全国に先駆けて商品化した「賀茂鶴酒造」。オバマ元大統領が来日した際の『すきやばし次郎』での会食でふるまわれた「大吟醸 特製ゴールド 賀茂鶴」は同蔵のフラッグシップともいえるお酒です。
「賀茂鶴酒造」は、酒蔵・一号蔵を改装し、見学室直売所としてオープンさせていて、酒造りの工程がわかりやすく学べるほか、遊び心あふれるフォトブースもあります。筆者もおとなげなく、はしゃいでしまいました(笑)。
西条がある東広島市の観光マスコット、のん太。駅から徒歩3分ほどの場所には、のん太大明神も!
時間と胃袋に余裕があれば、東広島のご当地グルメ「美酒鍋(びしゅなべ)」もご賞味あれ。こちらは、豚肉や鶏肉、野菜を、塩・こしょうと日本酒だけで味付けする鍋料理。酒蔵通り周辺では、多くの飲食店で美酒鍋を提供しており、筆者は、夜、居酒屋でいただきました。
もともとは蔵人たちのまかない料理で、利き酒に影響がないようシンプルな味わいになっているのだとか。なるほどさっぱりといただけて、ぜひ自宅でも応用してみようと思いました。日本酒の影響で肉がまろやかになり、また、加熱することでアルコール分は飛ぶので、お酒が苦手な人でも美味しくいただけると思います。
美酒鍋は自宅でも応用できそう!
そうなんです。日本酒のおいしさもさることながら、今回、改めて広島の食材の豊富さを再認識しました。瀬⼾内海に⾯した広島に来たからには、やはり見逃せないのは魚介類。全国的には牡蠣が有名で、筆者も広島駅に到着し、早速、お好み焼き屋で牡蠣焼きを堪能しましたが、四季折々の豊かな海の幸に恵まれています。
「比婆牛」を使った料理。脂が上質のため、冷菜でも美味しくいただけると、レストランのご主人が教えてくれました。
⼤⼩の島々が浮かぶ瀬戸内海は波が穏やかな一方、⼲満差が⼤きく、季節によって⼤きく⽔温が変わるため、⼀年を通してそれぞれの季節の⿂が楽しめます。西条の「山陽鶴酒造」にある食事処「割烹しんすけ」でいただいた、お造りにもときめきました。身が弾けるようにぷりぷりなのです。広島市内で食べた比婆牛も美味しかったなあ。広島県庄原市生まれの、首都圏にはほとんど流通せず希少な和牛ですっきりとした上質な脂身が特徴です。
マンホールも酒蔵通り仕様!
また季節を変えて足を運ばねばとの決意のもと、後ろ髪をひかれながら広島を後にしました。“食べる”ことを目的とした広島旅、おおいにアリだと思います。牡蛎やお好み焼きも外せませんが、ほかにも美味しいものが夢のようにたくさんあります!
住所:広島県東広島市西条本町9-7
営業時間(見学・売店):10:00 ~ 18:00(入場は~17:45)
住所:広島県東広島市西条岡町6-9(山陽鶴酒造内)
営業時間:11:00~14:00 17:00~21:00
定休日:日曜・祝日の月曜
取材・文/長谷川あや