エシカルトラベルオキナワ2025~世界から選ばれる持続可能な観光地をめざして~(後編)

画像提供:EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート(右)

「エシカルトラベル」とは?

エシカルトラベルオキナワは、沖縄の自然・伝統・産業を尊重しながら地域の人々と旅行者がともに“沖縄らしさ”を育み、発展させていく、未来に向けた旅のスタイル。地域の人々は沖縄の魅力を伝えるためのコンテンツを積極的に発信し、旅行者はその思いに触れながら旅を楽しみ、地域への思いやりをもつきっかけとします。

沖縄県では、離島を含めた約60の事業者によるコンテンツを8つのテーマに分けて提案しています。なかでも今回はそのうちの4つを体験。前編に続き、後編では県中部にある「アートと伝統文化」「宿泊」をテーマにしたスポットをご紹介します。

~アートと伝統文化~

壺屋焼陶眞窯/やちむん&カフェ群青

沖縄の言葉で焼物をあらわす「やちむん」。厚みのあるどっしりとした素地に力強い絵付けを施した素朴な風合いが特徴です。なかでも壺屋焼はその代表格で、約400年前、琉球王朝の時代に誕生したといわれています。

壺屋焼陶眞窯は、沖縄県中部の読谷村にある壺屋焼の窯元。伝統製法を貫いた手仕事によるモノづくりと、時代の流れに適った働き方とを両立しています。

窯主は相馬正和さん。那覇市壺屋にある名工の下で修業後、1975年に開窯。74歳の今も現役

現在、工房の中心を担うのは、窯主の長男であり、工場長の相馬大作さんです。“100年後もモノづくりができる場”をモットーに掲げ、8年前に工房を法人化して事業の安定化を推進。勤務待遇や生産ラインの改善も進め、職人たちが暮らしにゆとりをもち、長く、心地よく、安心して働き続けられる環境づくりに努めてきました。その結果、今では見習い工が練習や勉強に時間を費やせる時間が生まれ、習熟期間が短縮されるなどの成果があらわれているといいます。

相馬大作さん。職人として技術を磨く一方、工場長として経営にも携わる

時代を捉えるセンスはモノづくりにおいても同様で、伝統を重じつつ、新たな技法やデザインを追求することにも熱心です。もとより父で先代の正和さんは、海岸に漂着した大量の軽石から新たな釉薬を編みだすなど「好奇心の塊」と称されるほどチャレンジ精神旺盛。そのスピリットは工房全体に及び、最近では大作さんもガラスの廃材を活用し、地球に優しい釉薬の開発に取り組んでいるそうです。さすが親子ですね!

作業工程は「絵付け」「水挽き(ろくろ成形)」、白釉をかけて下地をつくる「白化粧」など約20に及ぶ

そして、大胆かつ伸びやかな筆使いによる美しい染付模様も、伝統技術と現代感覚の結晶。工房に隣接したギャラリーショップではとりどりの柄の器に出合え、見応えがあります。100年後と言わず、10年後、20年後、一体そこにはどんな素敵な器が並ぶのでしょう。未来に向けて邁進し続ける工房の姿にそんな期待も膨らみます。

5つの柄をもつ唐草模様や、繊細なデザインの魚紋など独自の意匠が特徴的。柄を立体的に描いたイッチンも得意とするところ

旅行者向けにシーサーや器をつくれる陶芸教室を開催していたので絵付け体験にトライしました。始めてみると、私のような初心者でも簡単。専用の道具を使い、素焼きの皿にスタンプを押すように色を載せていけばOKです。デザインは自由で、釉薬の配色や点の配置を考えるのが楽しいポイント。体験後は工房見学もおすすめです。

絵付けした作品は焼成し、約2ヵ月後に郵送してくれる。届くのが楽しみ♪

工房の隣には次男の正尚さんが営むやちむん&カフェ群青もあり、陶眞窯オリジナルの器に盛りつけた石窯焼きの自家製ピザを楽しめます。

オーナーシェフの相馬正尚さん。工房で出た陶器の欠片を貼り合わせて造ったシーサー型のピザ窯がユニーク

ピザはイタリア人シェフ直伝のナポリスタイルの生地に県産の食材を組み合わせたご当地ヴァージョン。常時10種類以上のバリエーションで提供しています。なかでも「窯焼き!島野菜」は人気が高く、裏が紫色の葉野菜のハンダマ、ゴーヤ、パパイヤなど旬の島の恵みが満載。沖縄の自然がギュッと詰まっていて、五感を目覚めさせる味わい深さです。ぜひ、器とのコラボレーションとともに楽しんでくださいね。

「窯焼き!島野菜」。ピザに使う野菜の一部はシェフが自家栽培

私のおすすめBEST3……に搾りきれず、BEST4(笑)。左上から時計まわりに「洋梨黒糖」、半熟玉子をのせた「ビスマルク」「バターチキンカレー&ガーリックチーズピザ」「しらすと旨辛ネギ」

 

~宿泊~

EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート/サンシャインファーム

沖縄県中部・北中城村にあるホテル、EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾートがめざすのは「病気にならない暮らしの発信拠点」。心身の健康が幸福につながるという「ウェルネス」の考えに基づき、発酵をテーマに健康と地球環境に配慮した“心地いい”ライフスタイルを提案しています。

前身は外資系ホテルなど。2021年に「暮らしの発酵」をテーマにリブランド

心地いいもてなしを実現するため、ホテルでは乳酸菌や酵母、光合成細菌といった善玉菌の集まり「EM」(Effective Microorganisms:有用微生物群)を取り入れ、その発酵パワーを館内のあらゆるシーンで活用しています。さらに地球環境や生物多様性に配慮したさまざまな取り組みも行い、サステナブルな社会づくりにも貢献しています。

環境浄化から肥料づくり、食品までEMの用途は幅広い

客室は、清掃やリネン類のクリーニングに合成洗剤を使わず、EM液を使用したケミカルフリー。壁紙や天井のクロス、家具もEM仕様です。また、無添加せっけんやオーガニックの竹製歯ブラシといった備品、客室のペットボトルを廃止するためのウォーターサーバーの用意もあり、環境への配慮も万全です。

客室にはルームウェアから照明まで、心地いいアイテムをセレクト 画像提供:EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

安眠にこだわった特別室では、調湿を考慮して壁に珪藻土を使用。空気清浄効果が期待できる植物「サンスベリア」も置かれ、室内には大きく息を吸い込みたくなるような清々しい空気が満ちています。さらに、この設備に電磁波対策を追加した客室もあるそうです。

眠りを追究した客室「珪藻土ハイフロア『いこい』」。4タイプから選べる枕やアロマの用意も 画像提供:EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

食事は朝食・夕食とも、EM栽培のオーガニック食材と発酵食をふんだんに取り入れたビュッフェスタイル。琉球料理伝承人の肩書きをもつ総料理長が監修しており、調味料やドレッシングまでほぼ自家製です。

特に朝食はホテルの自慢。自社農場産の野菜を揃えたサラダバーや沖縄の長寿料理「ぬちぐすい(命の薬)」のコーナーのほか、麹菌で発酵させた自家製ハム、発酵食品をトッピングして味わう玄米粥など、体が喜びそうな品がずらりと並びます。どれも体に染み入る優しい味わいで、気持ちもほっこりとします。

滞在により「お通じが良くなった」と話す人も多いそう 画像提供:EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート

<サンシャインファーム>

館内のレストランで味わえる野菜や卵は、自社農場のサンシャインファームで収穫したもの。ここではEMの力を使った循環型農業を行っており、ホテルで出る食物残渣を発酵させ、堆肥や養鶏場の床材に換えて利用しています。何と、食物残渣は1日約100kgも出るそうです!

20種類の野菜を自作の堆肥で有機栽培。鶏舎ではEM発酵飼料を与えながら約1400羽の雌鶏を平飼いに

 

このほか、フロント前にあるショップ「暮らしの発酵 STORE OKINAWA」へもぜひ。EM製品やフェアトレード製品など、帰宅後も持続可能な暮らしを続けるためのアイテムが多彩に揃い、個性的な沖縄土産を探すのにもぴったりです。

滞在するだけで、心身のブラッシュアップができ、地球環境の保全にも貢献できてしまうサステナブルなホテル。滞在後、「ちょっと生活を見直してみようかな」、そんなきっかけをもらえた気がします。興味のある方は、まず2泊、3泊と滞在し、日ごとに心身がよみがえっていく感覚を実感してみてはいかがでしょう。ホテルが主催する、発酵食品づくりのワークショップも楽しいですよ。

エシカルトラベルオキナワが提案する、地域に寄り添い、暮らすように過ごす旅。そんなゆったりと進む旅では、地域の魅力を深く知り、身近に感じることができます。伝統文化、自然、産業、暮らし、それぞれの営みに携わる人々の熱い思いに触れると、旅先でのふるまい方が変わり、未来に向けた大切なことにも気付かされます。旅をグッと心豊かなものにするために、今度の旅はエシカルにアップデートして楽しんでみませんか?

(取材協力:沖縄県/(一財)沖縄観光コンベンションビューロー)

 

文・取材:田喜知 久美

 

 

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