旅恋公式チャンネルでも発信! 吞兵衛必見!!
ぎょろりとした大きな瞳の梟が印象的なボトル、常陸野ネストビール。日本を代表するクラフトビールのひとつです。製造元は茨城県那珂市にある木内酒造。1823年(文政6年)に日本酒造りを開始し、焼酎、そして1996年にビール事業に参入。さらに2016年には、ビールを製造する額田醸造所の一角でウイスキーの蒸溜をスタートします。2020年には筑波山を望む石岡市に八郷蒸溜所を開設し、日の丸ウイスキーやジンを生み出しています。つまりワイン以外の様々な酒を世に送り出しているという、なんとも画期的な酒造元なのです。
豪華で快適な特別仕様バスで茨城へ
左:ビールサーバーの梟くん 右:スペシャルタンブラーでぐいぐい
創業200年を迎え、新たな試みとして始めたのが、バーカウンター付きのバス、「BAR BUS HITACHINO」の日帰りツアーです。「これほど多彩な酒造りを行う現場を、多くの方に知っていただきたい」という想いから、東京から日帰りで蒸溜所、醸造所、酒蔵を巡るバスを運行。酒蔵巡りは車の運転が悩みのタネですが、これを解消し、おまけに車中でも木内酒造の酒が楽しめるというバスをつくってしまったのです!
では、そのツアーの全容をご紹介します。吞兵衛の皆さん、垂涎必至ですよ!
出発は東京駅、最初の目的地は八郷蒸溜所です。出発の30分前にバスに乗り込み、車内のタップ付きバーカウンターで最初の乾杯! 2種類の常陸野ネストビール、日の丸ウイスキー、ジン、梅酒など好みのお酒を選んで、お土産にもなるスペシャルなタンブラーにサーブしてもらいます。道中もバスが停車中の時にスタッフがサーブしてくれます。
左:ビールのほかウイスキーはロックや炭酸割りも 右:友部SAで休憩=おかわりタイム
車内は特別仕様だけあって、じつに豪華! 常陸野ネストビールの「ネスト」に因み、鳥の巣をイメージしたデザインで、落ち着いたオーセンティックバーのような雰囲気。シートもゆったりで、回転して利用ができるのでグループで盛り上がることもできます。途中、トイレ休憩がありますが、なんと車内にはトイレが付いているので、安心して飲めます(笑)。ポイント高いわ~
クラフトウイスキー3種飲み比べでご機嫌!
ポットスチルはストレート型
日の丸ウイスキーを造り出す八郷蒸溜所は元公民館だった建物をリノベーション。目の前には筑波山が美しい山容を見せています。この筑波山系の良質の水と、昼夜の寒暖差が大きい盆地という、ウイスキー造りに好適な条件を揃える地なのです。
見学コースに沿って原料の粉砕(ミリング)、糖化槽(マッシュタン)から単式と連続式がある蒸溜設備、熟成庫と蒸溜所内を巡りますが、このバスのツアー客だけが入ることができるポイントもあり、見ごたえ十分です。ウイスキーの香りに包まれて、幸福感アップ!
日の丸ウイスキーの特徴は、原材料は国産原料を積極的に取り入れていること。さらに各製造拠点の地元農家と協力し、国産ビール麦や小麦の栽培を行ない、麦芽粕は牛や豚の飼料にするなど、循環型の取り組みもしています。
左上:粉砕 右上:マッシュタン 左下:間近で連続蒸溜器も 右下:貯蔵庫
また酒米を配合して醸したもろみを使うという、原点が日本酒の酒造会社ならではのユニークな試みや自社酵母の開発なども行なっています。さらにモルトウイスキーのみを製造するクラフトウイスキーの製造元が多い中、こちらではグレーンウイスキーも製造。バーボン樽を中心にラムやシェリーワイン樽などを使い、様々な味わいを生み出しています。
酒造りの想いを話す木内敏之社長
3種類のウイスキー試飲と、シャルキュトリでランチタイムです。数種の生ハムやサラミ、ソーセージは、地元の常陸野ポークを使用し、麦芽粕を取り入れた飼料を与え、さらにスモークには熟成樽のオーク材を使うというもの。ウイスキーに合わないわけがありません。
シャルキュトリと3種のウイスキー。パンも美味しい
この日のウイスキーは、大麦麦芽のバーボン樽とラム樽、国産小麦と大麦麦芽を使ったラム樽の3種類。甲乙つけがたい、それぞれの味わいを行ったり来たり、加水すると口当たりも変化し、楽しいったらありゃしない。
ショップ内
ウイスキーはもちろん、美味しい生ハムやソーセージ類も併設のショップで購入できます。お気に入りをぜひ。
ビール醸造拠点や料理とのマリアージュに舌鼓!
次は常陸野ネストビールが年間約3000㎘製造される額田醸造所です。場所は那珂市、2007年に新設されました。ここで製造されるビールのうち50%は海外へ輸出、40か国へ羽ばたいていきます。糖化槽や発酵槽などを見て回りますが、スタッフの方の「ビール造りの9割は清掃です!」という言葉に驚きました。1日4時間かけて各タンク・各部品を洗浄し、ビールの品質を保つそうです。
どこもかしこもピカピカ
ビール造りに重要な役割を担うホップ。クラフトビールのバラエティ豊かな香りや味わいはホップの組み合わせが重要です。アメリカ産のモザイクは若々しい味わい、チヌークは柑橘系の香り、チェコのザーツはスパイシーなど、ホップの種類も様々。さらに山椒や柚子、オレンジピール、コリアンダー、コーヒー豆などがアクセントとして加わり個性を発揮します。出来立てのビールで喉を潤しました。
最後に向かうのは鴻巣の蔵、木内酒造創業の地です。敷地内には酒蔵、店舗、きき酒処などがあります。
木内酒造の原点、菊盛は造り続けて200年 左ビールタンでの貯蔵も
酒米は兵庫県産山田錦を主に、地元の常陸錦も用いるそうです。こちらでの試飲は主要銘柄「菊盛」のフルーティな香りの大吟醸、シャンパン風の濁り酒、春一輪。春にぴったりな爽やかさです。
ウイスキー、ビール、日本酒と木内酒造の情熱あふれる酒造りの現場と力量をたっぷり堪能。
そして、併設の「蔵+蕎麦 な嘉屋」で、料理とお酒のマリアージュも楽しみます。茨城産の旬の食材を用いた創作料理とそといち蕎麦。こちらの蕎麦は、常陸野ネストビールの原料にも使われるビール麦・金子ゴールデンの裏作として栽培されている常陸秋そば。香り高い蕎麦をすすり、さらにお酒が進みます。大正蔵を改装した店内の雰囲気も最高です。
前菜の盛り合わせから旬の食材を使った創作料理、そしてそといち蕎麦
朝からさんざん飲んでいるのに、バスに乗り込み、また、なみなみと注がれたタンブラーを手に、終点つくばエキスプレスのつくば駅へ向かいます。解散し、心地よい酔いのなか、帰路につきました。
この「BAR BUS HITACHINO」ツアー、運行は木曜・土曜・祝日の10時~19時(予定)。ひとり2万4800円。定員25名、4月26日までは平日割引も実施しています。タンブラーとミニトートバッグのお土産付きです。
また、トップシェフによるガストロノミーツアーなども実施。やばすぎます!
詳細はこちら
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)