西オーストラリア州の州都・パースは「世界で最も美しい街」と形容されています。街は近代的なビルと歴史的な建物が調和し、さらに緑と花々があふれているから。そしてインド洋を望む海岸線や人々が寛ぐ広大な公園などが集約し、歩いているだけで笑顔になれる街なのです。
左上から時計回りに、海岸沿いに立つベルタワー、街中に立つ重厚なウェスレイ教会、インド洋を見晴らすキングスパーク、路地には多彩なアートが。
さらに市街地から30分ほど車を走らせると、歴史的なワイン産地・スワンバレーも。スワン川の畔に広がるスワンバレーは西オーストラリア州最古のワイン産地で、現在も多くのワイナリーが点在しています。地中海性気候と水はけのよい土壌で、昼夜の気温の寒暖差が大きいことが特徴で、古くからある品種のグルナシュやシュナン・ブラン、シラーやシャルドネなどがつくられています。また家族経営のワイナリーが多く、気取らない長閑な雰囲気も魅力です。ワイナリー巡りには多数のツアーバスがあり、気軽に手軽に楽しむことができるのも嬉しいポイント。今回は半日日帰りの旅をご紹介します。
フレンドリーなツアーガイドのMattと。
ミーティングポイントで待っていたのは、フレンドリーなツアーガイドのMatt。参加者はシドニーからの旅行者のほかイギリス、スイス、インドネシアからの面々。各国からワイン好きが集います。
バスが最初に向かったのは、広大な敷地にワイナリー、レストラン、ウェディング施設がある「NIKOLA Estate」1929年創業で、オーストラリアで2番目に古いワイナリーとのこと。紫色の春の花の代表・ジャカランダが敷地内を彩ります。
ワイナリー内はスタイリッシュ
さっそくチーズを楽しみながら、5種類のワインの試飲です。すっきりとしたシュナン・ブランのスパークリングから始まり、シュナン・ブランの白、テンプラニーリョなどを使った赤、スパイシーなシラーの赤、モンテプルチアーノの赤。なかでもイタリアワインで人気のモンテプルチアーノはベリーの香りとふくよかな味わいがありバランスの取れた一本で、オーストラリアで造るとこうなるのかあと。ワインはほぼ30~60オーストラリアドルです。
ワイン試飲はチーズとともに
次のワイナリーは「Mandoon Estate」。ワイナリーをはじめ、ビール醸造所とレストラン、イベント会場、宿泊施設などもあり、多くの人で賑わいます。施設の前には青々としたブドウ畑が広がります。
ワイナリー前のブドウ畑
まずはティスティングコーナーへ。スパークリングと2種類の白、ロゼ、2種類の赤を味わいます。お値ごろ(25オーストラリアドル)で興味をそそられたのがロゼ。カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、メルローを均等に使ったもので、天気のいい昼に陽光を浴びながらワイワイ飲むのにぴったりな感じ。古いブドウの木(シラー)の赤も力強く洗練された味わいでした。
エチケットもカラフルで可愛い
そろそろほろ酔い気分になってきたところで、ランチです。同ワイナリーのカジュアルなレストランでいただきます。ホームメイドのビールも楽しめるのですが、やっぱりワインと合わせて、ハンバーガーやピザ、フィッシュ&チップスなどからチョイス。参加者の皆さんと賑やかに、ワインの話から旅や自国の話題など。滞在日数の話になった時は、1か月~数か月のバカンスの方もいらして、滞在5日の私としては羨ましい限りでした。
オージービーフのハンバーガーが美味
ワイナリー巡りも3軒目へ。「Lancaster Wines」は広いブドウ畑のなかにテイスティング用の質素な小屋という、なんとも素朴な雰囲気のワイナリーです。しかし、ワインは受賞歴を持つ高品質なもの。こちらではなんとスパークリングワインからデザートワインまでプレミアムワインを含む11種類の試飲をすることができました。
ブドウ畑に囲まれてテイスティング
それぞれのワインの丁寧な説明書きもあり、充実度満点。これまでも個性豊かなワイナリーのテイスティングの嵐でしたが、このワイナリーもしかり。フレッシュなロゼのスパークリングやグルナッシュ・シラー・マタロで造る熟成感のある赤、柑橘系のデザートと合わせたいマスカットのデザートワインなどどれも秀逸。白が25オーストラリアドル~というリーズナブルなのも魅力でした。
個性豊かなワインばかり
気持ちのいい青空の元で、酔い(良い)心地、満点です。ワイン以外のものも…と思っていたところで、チョコレートショップ、そしてブリュワリーへ。チョコレートショップはランカスターのほど近くにある「The Margaret River Chocolate Company」。ハンドメイドの有名チョコレート店で、とにかく所狭しとチョコレートが並びます。パッケージデザインも洒落ていて、そうそう、試飲したチョコレートドリンクも美味でした。
取材時はクリスマスシーズンで、ツリーも。
スワンバレーはワイナリーだけでなく、ブリュワリーも多く点在。とにかく酒好きにはたまらない場所なのです。ツアーの最後に訪ねたのは「Duckstein Brewery」。ドイツスタイルのピルスナーやモルトの風味が豊かなデュンケルなどを醸造。最後の最後にいただくビールの美味しいこと! さすがに飲み疲れて眠そうにしている参加者もいましたが、またここでビール談義なども。酒は世界を結びますね笑
タップから注がれるクラフトビール
帰りのバスの中は皆さん熟睡、あっという間にパース中心部に戻ってきました。ホテルでひと休み後は美味しいディナーを求めて街中へ。充実のワイナリー巡りとともに、パースの奥行きある自然景観にふれて、心身がしなやかになった気分。せめてもう2、3日延泊したいと、パースの街が大好きになりました。
パースの情報と街歩きモデルコースはこちらも。
取材・文/関屋淳子