上野公園の大噴水池すぐそばにあるひときわ目立つクジラとSL。ここは通称「科博(かはく)」と呼ばれる、自然史・科学技術史などを扱う国立科学博物館です。昨年からのコロナ禍の元、自宅に居ながらにして3Dビュー+VR映像の高画質画像で科博を楽しめる「おうちで体験!かはくVR」も話題を集めましたよね。私自身も自宅で何度も鑑賞していました。
大きなシロナガスクジラが目印
科博は、明治10年(1877)に現在東京藝術大学がある場所に「教育博物館」として創立されました。ですが、関東大震災で被災してしまい、施設・標本のすべてを消失。その後、上野公園内に新たな敷地を得て、昭和6年(1931)に復興建築として現在の建物が建てられました。
正面からはわからないですが、上空から科博を見ると左右対称の飛行機のような形状になっています。主翼部分は展示室に、尾翼にあたる部分は事務・執務室など、大きく増えた来場者の動線を考慮して新しく建てられました。建築当時の科学技術の最先端の象徴であったであろう飛行機を模しているというのもうなずける話です。
上空から見ると形がよくわかる 画像提供:国立科学博物館※画像の転載・コピー禁止
威風堂々と建つこの建物を印象付けるのが茶色の外壁です。昭和初期に大流行した[スクラッチタイル]と呼ばれるこのタイルは、まるで櫛でつけたようなひっかき溝の模様が特徴。大正12年に竣工した旧帝国ホテルで使われた大谷石と常滑産の「スクラッチ煉瓦」が引き金となって、この外壁が生み出されたとも言われます。
さて、内部はもちろん見どころたっぷりです。科博の常設展は大きく分けて、「日本館」と「地球館」に分けられます。日本館は日本列島の誕生、日本人や生き物たちの進化を、地球館は恐竜や哺乳類、鳥類などのはく製などとともに生命の誕生と絶滅を学べるようになっています。どのように展示すればより効果的にわかりやすく見えるかなどプロによる展示方法も圧巻! 大迫力の恐竜の骨格標本も展示されているので子どもも大人も大興奮間違いなしです。
地球館3階「大地を駆ける生命」。哺乳類ごとのサイズ感もよくわかる
画像提供:国立科学博物館※画像の転載・コピー禁止
日本館3階北翼「日本列島の生い立ち」に展示されている、
福島県で発見された爬虫類化石「フタバスズキリュウ」の骨格標本
そして建築好きな方は、スクラッチタイル造りの外観だけでなく内部にも魅了されるはずです。地球館は平成16年にグランドオープンしましたが、日本館は竣工当時の昭和6年の建物。文部省大臣官房建築課設計によるネオルネサンス様式を基調としており、国の重要文化財に指定されています。
まず、入口を入ると、ドーム屋根を有する1階~3階の吹き抜けの壮麗かつ重厚な中央ホールが迎えてくれます。
大理石とタイル張りの床も美しい中央ホール。凝ったデザインの時計にも注目
漆喰の天井装飾、床のタイル、大正から昭和初期に活躍したステンドグラス作家・小川三知によるステンドグラス、ドーム型の明かり取り、大理石やタイルを用いた曲線を描く階段と手すり、堂々と建つ柱や数々の照明など、それらの美しさに感嘆の声が思わずもれます。西洋的なものだけでなく、天井の通風口や階段には法輪のようなモチーフも見られますのでチェックしてみてくださいね。
重厚かつ壮麗な日本館の装飾の数々に魅せられる
うれしいのは、自撮り棒やフラッシュなどの使用は禁止ですが、展示物含めて館内撮影OKなこと(撮影禁止表示のもの以外)。科学好きも恐竜好きも宇宙好きも魚や昆虫好きも、そして建築好きも何時間でもいられる博物館です。そうそう、ハチ公や南極観測で活躍したカラフト犬のジロにも会えますよ!
国立科学博物館 https://www.kahaku.go.jp/(事前予約制 ※2021年2月現在)
おうちで体験!かはくVR https://www.kahaku.go.jp/VR/
特別展「大地のハンター -陸の上にも4億年」展 2021年3月9日~6月13日開催予定http://daichi.exhn.jp/
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