Utagawa Hiroshige 1835–1858
Cherry Blossom Day on the Nakanocho of the Yoshiwara ART INSTITVTE CHICAGO
江戸名所 よし原仲の町桜の紋日 歌川広重 シカゴ美術館蔵
2025年の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』第1回は、火事から人々が逃げ惑い、“蔦重”こと主人公・蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)が火の見櫓から鐘を打ち鳴らし「逃げろ!」と叫ぶ迫力あるシーンから始まりました。明和9年(1772)の明和の大火です。
江戸幕府公認で吉原遊郭が現在の中央区人形町辺りに生まれたのは元和3年(1617)。その後、明暦3年(1657)正月の明暦の大火により、人形町から新吉原へ移りました。この新吉原が大河ドラマ『べらぼう』の舞台です。
浅草寺二天門からすぐ、台東区民会館9階に『べらぼう 江戸たいとう大河ドラマ館』があります。
エントランスを入ると、蔦重を演じる横浜流星さんのメッセージ映像により出迎えられ、そのまま進むと、蔦重の衣装やキャスト紹介などの入門編が続きます。今回のドラマは、吉原遊郭のガイドブック、人気力士や花魁などの今でいうブロマイドのようなヒット作を連発し、喜多川歌麿や写楽などの絵師を育て、一代で“江戸のメディア王”となった蔦重の波乱万丈の物語です。大河ドラマ館では、小道具や若き蔦重が働く「蔦屋」の再現セットなどの展示があり、鑑賞者はドラマの振り返りができたり、よりストーリーを楽しめるようになっています。
目を惹いたのが、第4話で磯田湖龍斎が描いた『雛形若菜初模様』の下絵と、水浸しになった絵を蔦重の小さな相方の唐丸が見事に再現してみせた美人絵。実際に撮影で使われた品々や複製品を近くで見られるので、ストーリーはもちろん番組美術にも力が入っていることがありありと伝わります。ドラマでは消息不明になった唐丸が、歌麿?写楽?はたまた別の絵師?としていつか蔦重の元に戻ってくるのでしょうか?楽しみです。話が進むにつれ、展示品の入れ替えがある予定なので、何度も訪れるのもいいですね。
他にも花魁の衣装展示、歌麿や写楽の高精細映像、出演者のサインの展示などもあります。
そしてより一層ドラマの世界観を深めるため、実際に吉原へ足を延ばしてはいかがでしょう。大河ドラマ館から歩いて20分超の千束4丁目交差点の角にオープンした「江戸新吉原耕書堂」は、蔦重が開業した「耕書堂」を模した観光案内所兼土産店です。
江戸新吉原耕書堂からすぐの吉原大門跡は、吉原遊郭の唯一の出入口であり、大門の先には女性の出入りを厳しく監視するために番所がかつて設けられていました。吉原大門から続く緩やかにカーブする五十間道は、日本堤から吉原の様子が見えないようにした工夫とも伝わります。吉原遊郭の中では、中央を貫く大通りの両脇に茶屋が並び、座敷遊びを楽しんでいたそうです。
吉原大門跡を過ぎると、そこは「お歯黒どぶ」跡。東京ドーム約2個分の広さがあった新吉原は、遊女たちが外へ抜け出すのを阻むため、ぐるりと囲むように黒板塀を巡らせ、堀も掘られました。埋め立てられた現在は交番も立つ小道ですが、なんでもない堀でさえ彼女たちにとっては外から隔絶された地であり、たった一歩でさえ踏み出せなかったのでしょう。胸がつまります。
下り坂になっており、かつて堀があったことがわかる「お歯黒どぶ」跡
吉原の出入口には、遊郭帰りの客が名残を惜しんでこの辺りで振り返ったことから名が付いた「見返り柳」がぽつんと1本立っています。
決して絢爛豪華な世界だけではなく、悲しき女性たちが多く棲んでいた新吉原。ですが、大河ドラマ『べらぼう』で描かれていくように、江戸文化がおおいに花開いた時代でもあります。生き生きとした江戸の町民や遊女たちの姿も大河ドラマで追っていきたいですね。
べらぼう 江戸たいとう 大河ドラマ館
https://taito-tsutaju.jp/features/exhibition
◇おひとり様ポイント◇
大河ドラマ館には、台東区や江戸に関連する土産を購入できる「たいとう江戸もの市(入場無料)」も併設しているので、お気に入りをじっくり探してみてくださいね。