ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第38回 シルクロードを超えて伝えられた悠久の美術品。東西の文化をつないだ「シルクロード展」開催中(東京都・八王子市)

中国、中央アジア、西アジア、ヨーロッパを横断し、東洋と西洋をつないだ古代の大交易路「シルクロード」。まだ自動車も汽車もない時代、砂漠や草原、雪山などが続く過酷で長い道のりを、人々はラクダや馬、そして自らの足で旅路を進みました。その距離は7,000kmとも9,000kmとも言われます。

phto by photoAC

中国から名産品のシルクをイラン、インド、そしてローマへと運んだことから「絹の道=シルクロード」と名付けられました。薄くなめらかな絹は、歴代のローマ教皇をはじめに上流階級の人々に愛され、大金をはたいてまで求められ取引されていたことから、危険を冒してでも絹の交易が続けられました。交易は絹織物にとどまらず、茶、磁器、金貨、装飾品、馬など多岐に渡り、また、製紙や火薬製造の技術、宗教、文化など、人と人との交流も盛んに行われました。そして道中には、水や食料を補給できる都市が点在し、交易により大いに栄えました。

「シルクロード展」展示風景。《車馬儀仗隊》漢 武威市雷台墓出土 甘粛省博物館

いくつかあるシルクロードの中でも、中国の漢や唐の時代に都だった長安(今の西安)や敦煌、天山山脈を通る「天山回廊」と呼ばれる約5,000kmのルートは、隊商路としても多く使われたそう。2014年には、「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」としてユネスコの世界遺産に認定されました。

そして、敦煌には2100以上の仏像が遺された巨大な仏教遺跡「莫高窟」、古代シルクロードの重要な関所として築かれた「玉門関」などの歴史遺産が点在。交易路のオアシスとして栄えたことがよくわかります。

莫高窟(phto by photoAC

現在、八王子の東京富士美術館で開催中の「日中平和友好条約45周年記念『世界遺産 大シルクロード展』」は、世界遺産認定後、中国国外で初めて開催される大規模なシルクロードの展覧会。洛陽、西安、蘭州、敦煌、新彊地域など計27ヵ所の主要な博物館や研究機関が所蔵する文物や関連資料など、シルクロードの名品200点が出展されています。

「シルクロード展」展示風景。 左上:《瑪瑙象嵌杯》5-7世紀
1997年イリ市昭蘇県ボマ古墓出土 一級文物 イリ州博物館 
右上:《草花文綴織靴》1-5世紀 
1995年新疆ウイグル自治区民豊県ニヤ遺跡1号墓地5号出土/新疆ウイグル自治区博物館
下:《マニ教ソグド語の手紙》11世紀
1981年トルファン市ベゼクリク石窟第65窟出土  一級文物 トルファン博物館

「シルクロード展」展示風景。敦煌莫高窟 第285窟 再現模型

3章で構成された会場では、キャラバンを組んでオアシス都市を往来した際に交易で得られた金銀宝飾品、青銅器、ガラス、陶磁器、壁画、絵画、染織などを展示。これらの展示品の数々が、当時のシルクロードの精華を雄弁に物語っています。日本にも多大な影響を与えたシルクロードの美術品を見に、ぜひ訪れてみてください。そしていつか現地へ!

 

海外文化交流特別展 日中平和友好条約約45周年「世界遺産 大シルクロード展」
会期:2023916()1210()
https://www.fujibi.or.jp/
※福岡、宮城、愛媛、岡山、京都へ巡回予定

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