「住宅街にこんなステキな美術館があるなんて!」。それが第一印象でした。つくばエクスプレスの六町駅(ろくちょうえき)から歩いて約3分、周囲の住宅に溶け込むように「六町ミュージアム・フローラ」があります。低層の建物なので、なんだか突然四角い建物が現れたような気さえします。外から館内はうかがい知ることができないような構造なのですが、一歩館内に入った途端、驚きの声をあげてしまいます。
住宅街に現れるこぢんまりとした美術館。2012年に開館
明るいロビーから正面の大きな窓越しに目に入るのは、中心に水をたたえた池。その周囲は緩やかな芝の斜面が三方に広がっており、緑がまぶしい! 1階ロビーから屋外へ出ると、池の上を歩けるように石が配されており、それをたどっていけば2階へそのまま行けるようになっています。2階のテラスから見下ろせば、すり鉢状になっていることがよくわかります。なんとも不思議なカタチです。
1階エントランスから池を望む。館内に飾られている花にも癒される
この特徴ある建物を手掛けたのは、横河健氏。個人の住宅や別荘のほか、都営地下鉄大江戸線の大門駅や汐留駅の駅舎などを設計した建築家です。「六町ミュージアム・フローラ」では、屋上緑化を取り入れ、照明は太陽光を利用し、池は井戸水を循環させて、万が一の時は地域住民が生活用水として使えるようにしてあります。さらに、低層の建物なので、周囲の住宅街の環境にも配慮されています。ですので、2階のテラスからはお隣の民家のベランダに干してある洗濯物さえ見えるほど(笑)。元々こちらの土地は、地元の建設会社の資材置き場だったそうですが、今では地域の方にとっても、ここに美術館があるのがすっかり日常となっているのでしょう。
池側から望む1階のエントランスと2階の屋外テラス
展示室は池を囲むように1階にぐるりと広がっています。決して大きくないこぢんまりとした展示スペースなのですが、屋根のルーパーが放射状になっているからか、狭さを感じることはありません。回遊式展示室なので、一方通行で進んだり、気になる作品を見にもう一度戻ったりと自由気ままにアートにふれられます。
弧を描くような屋内展示室(過去展より)
企画展は、春(3~4月)、夏(6~7月)、秋(9~10月)、冬(12~1月)の年4回開催されています。コレクションは尾形光琳や伊藤若冲、葛飾北斎などの江戸絵画、竹内栖鳳、横山大観、川合玉堂などの近代日本画のほか、岸田劉生、梅原龍三郎など日本の洋画家、棟方志功や芹沢銈介など多岐に渡っています。
右から、田能村竹田《秋園菓花図(部分)》、竹内栖鳳《三狗八雀六曲屏風》、
竹内栖鳳《三狗八雀六曲屏風(部分)》
(画像提供:六町ミュージアム・フローラ ※画像の転載・コピー禁止)
私がこのミュージアムで一番気に入ったポイントは、あちこちに置かれているベンチやイスです。1階の展示室、2階の屋外テラスのほかにも池のほとりにもウッドテーブルとイスが置かれているのです。美術館でのんびり時間を過ごして欲しいという、ミュージアム側のあたたかな気持ちが伝わってきます。
そして、入館料300円にセルフサービスのコーヒーが付いてくるのもうれしいポイントです。基本的に館内も写真撮影OKですのでフォトジェニックなミュージアムを楽しんでくださいね。
次の企画展は、2022年9月9日(金)~10月29日(土)<日・月曜休館>に「実りの秋 稔りのあき」展を開催予定です。
六町ミュージアム・フローラ
http://rokucho-museum.sakura.ne.jp/