前編でご紹介した「クレマチスガーデン」と共にゆっくり時間を取って過ごしたいのが、同じクレマチスの丘にある『ヴァンジ彫刻庭園美術館』と『ベルナール・ビュフェ美術館』です。
ヴァンジ彫刻庭園美術館は、イタリアを代表する現代具象彫刻家のジュリアーノ・ヴァンジ(1931年-)の個人美術館として2002年に開館しました。1960年代から現在までの作品が展示棟内と、クレマチスガーデンの自然と調和するように屋外に展示されています。
右奥の白い建物がヴァンジ彫刻庭園美術館
この美術館の創設にあたり、ヴァンジはこの地を訪れ、建築家と話し合いながら計画を進めました。自身の作品の配置を実際に見て決めたからこそ、これほど風景になじんでいるのですね。
チケットカウンターを抜けた先に広がる芝生の広場では『竹林の中の男』、人生の困難を乗り越えようとする、展示デッキの『壁をよじ登る男』などが存在感を放ちます。
ジュリアーノ・ヴァンジ『竹林の中の男』『壁をよじ登る男』
明るい陽光が降り注ぐ屋外エリアから一転、ヴァンジ彫刻庭園美術館の館内は静寂な空気に包まれています。館内の作品も、彫刻の置き場所や照明の当て方の隅々までヴァンジの意図が生かされています。照明が絞られていることもあり、無機質な空間にまるで彫刻が浮かびあがっているような印象。いったいこちらに何を語りかけているのか、ひとつひとつの作品と会話をしたくなる不思議な空気に満ちています。
一点一点丁寧に展示された作品たち(画像提供:クレマチスの丘 ※画像の転載・コピー禁止)
ジュリアーノ・ヴァンジ 説教壇
ヴァンジ彫刻庭園美術館から無料シャトルバス、または歩いて約15分の場所にあるのがベルナール・ビュフェ美術館です。以前、旅恋記事でその特徴あるサインを少しご紹介しましたが、ベルナール・ビュフェ(1928年-1999年)は戦後の具象画壇を代表するフランスの画家です。美術館の収蔵作品数は、油彩画、水彩画、素描、版画、挿画本、ポスターなど、合わせると2千点以上もあり、世界一のビュフェコレクションを誇ります。
ビュフェの世界へと誘われる(画像提供:クレマチスの丘 ※画像の転載・コピー禁止)
ビュフェの作品の特徴は、一度見たら忘れられない独特の構図や輪郭線。巨大な作品も多く、また彼の描くテーマもあいまって、美術館の静謐な空間で作品を見ていると、いつの間にか暗闇が侵食してくるようで心がざわざわとしてきます。でも、これほど相対する人物に影響を及ぼす作品もなかなかないもの。ご自身のどんな感情が呼び起こされるか、ぜひ実際に作品に会って確かめてみてください。
ちなみに、ベルナール・ビュフェ美術館の別館にあるビュフェこども美術館は、お子さんがアートとふれあって楽しめるスペースとなっていますので、ご家族で訪れた方はこちらへぜひ(予約制)。
《ピエロの顔》油彩 1961年(画像提供:クレマチスの丘 ※画像の転載・コピー禁止)
またベルナール・ビュフェ美術館には、カフェ&ショップ「TREEHOUSE」が併設されています。ビュフェ関連のグッズや画集はもちろん親子で楽しめる雑貨などを購入できたり、明るく開放的なカフェではカレーやパン、スイーツやドリンクなどをいただけます。店内にある薪を使ったステキなストーブは冬になったら実際に使われるとか。
また、クレマチスの丘には「長泉町井上靖文学館」もあります。純日本風のこちらの文学館を設計したのは、島根県立美術館や九州国立博物館などを手掛けた建築家の菊竹清訓(1928年-2011年)。ベルナール・ビュフェ美術館の特徴ある建築も菊竹氏によるもの。建築好きの方も興味を持たれると思います。井上靖文学館では、井上靖直筆原稿、万年筆、初版本の展示のほか、名言の架かれたしおりを引くことができるなど、気軽に楽しめる空間となっています。本好きの方はぜひ立ち寄ってみてください。
東京からでも日帰りで訪れることができるアートスポット「クレマチスの丘」。休館日を事前にチェックし、せっかくなら一日ゆっくりと過ごせるよう、時間を取って訪れてくださいね。こんなに美しい緑と作品を眺めていたら、気持ちも晴れ渡るはずですよ。
クレマチスの丘 http://www.clematis-no-oka.co.jp/
休館中でしたヴァンジ彫刻庭園美術館/クレマチスガーデンは、2023年9月30日をもって閉館してしまいます。
ベルナール・ビュフェ美術館と長泉町井上靖文学館は開館しています。
詳細は公式HPにて