ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第21回 ジュエリー、香水瓶、ガラスの花器、華やかな世界へと誘う箱根ラリック美術館へ(神奈川県・箱根町)

おこもり生活が続き、いつの間にか気持ちが沈んでしまっていることありますよね。そんな時、キラキラ輝く美しいものを見に行ってみませんか。フランスのガラス工芸作家であるルネ・ラリックが手掛けたジュエリーや香水瓶など、約230点もの作品を紹介する「箱根ラリック美術館」へ。

エントランスの扉のレリーフにも注目

華やかな19世紀末のフランス、ルネ・ラリック(1860-1945)はジュエリー作家として活躍しました。彼のインスピレーションの源となったのは、幼少期から身近な存在だった「自然」。例えば、花、鳥、蝶、トンボ、太陽や星。そして、女性や神話など。これらのモチーフを、アール・ヌーヴォーの曲線的で装飾性の高い斬新な作品へと昇華させました。その後、ガラス工芸家へと転身を遂げた彼の作品には、直線や流線形などの幾何学的かたちが数多く見いだされるようになり、アール・デコの時代の美意識に共鳴する作品へと変遷していきました。

香水瓶「三羽のツバメ」(画像提供:箱根ラリック美術館 ※画像の転載・コピー禁止)

箱根仙石原にある箱根ラリック美術館のメインゲートから緑豊かな庭園を抜けて美術館へ向かう途中、真っ赤なクラシックカーが迎えてくれます。何故ここにクラシックカー!?とも思いますが、注目は車の先端。優美なフォルムのカーマスコット(自動車のボンネットに付けられる装飾品)を見つけられます。実は、美術館の創業者がパリの蚤の市で見つけたラリックのカーマスコットに感動したことが、ラリックコレクションを始めるきっかけになったそうです。

新緑に映える赤いクラシックカー

美術館では、約1,500点のコレクションの中から常時約230点の作品が展示されています。それらをより一層引き立てるのが、美しい展示室です。丸みを帯びた優美な円形の展示室で見られるジュエリー作品、一点一点ガラスケースに収められたガラスの花器、明かりが灯され本来の使われ方がされているシャンデリア、1900年代の邸宅の一室を移築した部屋など、まるでラリックが生きたその時代に迷い込んだような雰囲気にあふれる空間に魅了されます。

丸みを帯びたジュエリーの展示室(画像提供:箱根ラリック美術館 ※画像の転載・コピー禁止)

個人的に好きなコーナーは香水瓶の展示室です。プライベートで香水をつけることはないのですが、見るだけでため息が出てきます。実は、香水のボトルデザインを現在のような装飾性の高いものへと変えたのもラリックなのです。まるで薬のようなシンプルな容器だった香水瓶を、妖精、花、ツタ、夜空などをイメージしたデザイン性の高いガラスの香水瓶へと生まれ変わらせたのです。調香師がつむぐ香りを、物語性のある繊細な香水瓶にとじ込めた香水は、またたく間に当時の人々の心をつかみました。小さな香水瓶に表現された華やかに広がる世界をぜひ、ゆっくりご覧ください。

優美な気持ちになったまま立ち寄りたいのが、併設のカフェ・レストランLYS(リス)。緑まばゆい前庭を眺めながら、ゆったりとランチやカフェタイムを楽しめます。こちらは朝8時45分から営業しているので、箱根の宿に泊まって朝食はこちらでいただく、という利用の仕方もいいですよ。

緑まぶしい庭園を望むカフェ・レストランLYS

残念ながら私はまだ訪れる機会を作れていないのですが、動くホテルとも称された豪華列車「オリエント急行」の車内でティータイムを過ごせる特別展示「LE TRAIN(ル・トラン)」もあります。車内はガラスの装飾パネルやランプシェードなど贅を尽くした空間が広がっています。68歳の時、オリエント急行の内装を手がけたラリック。憧れのオリエント急行の車内で優雅なティータイムをぜひお過ごしください(当日現地にて予約受付)。

  LE TRAIN利用者のみ入室可(画像提供:箱根ラリック美術館 ※画像の転載・コピー禁止)

また、美術館の敷地内では庭園散策を楽しめますが、特におすすめは5月の新緑の頃。画家クロード・モネの《睡蓮》をイメージした池もあるので、季節の花々や豊かな緑に癒されにぜひお出かけください。

箱根ラリック美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186-1
http://www.lalique-museum.com/

企画展「明日への祈り展 ラリックと戦禍の時代」展 開催中~2022年11月27日まで

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