平安時代より皇族や貴族が別邸を構えていた京都の嵐山に、日本画を集めた私立美術館「福田美術館」があります。それもなんと!渡月橋や大堰川を望む絶好の場所に位置するのです。
福田美術館が開館したのは2019年。美術館の構想は、京都で生まれ育った実業家の福田吉孝氏が「京都へ恩返ししたい」という思いから始まったそうです。2003年頃に嵐山の土地にご縁ができたことにより、本格的に美術館開館へ向けての事業がスタート。それからじっくり約15年かけ、約1,500点にものぼる作品を収集。
新しく美術館を作るのも、作品を保存するのも、維持するのもかなり大変なことだと思いますので、相当な覚悟も持って開館されたのだと想像できます。
京都画壇を中心としたコレクションは多岐に渡ります。美術にそれほど詳しくない人でも名前を知っているであろう俵屋宗達や伊藤若冲、日本画好きは必ずおさえたい円山応挙、与謝蕪村、竹内栖鳳、上村松園、速水御舟、横山大観、さらに竹久夢二の作品は国内有数のコレクションを誇ります。また、存在は知られていてもそれまで行方不明だったり、数十年ぶりに公開されるものだったりと、 “幻の作品”と称される作品が多いのも福田美術館の特徴かもしれません。
「群鶏図押絵貼屏風」〈1797年〉
紙本墨画 屏風六曲一双 伊藤若冲〈1716年〜1800年〉
(画像提供:福田美術館 ※画像の転載・コピー禁止)
美術館の外観は、“モダンだけど嵐山という風光明媚な地に溶け込むように”と京町家のエッセンスを踏まえたデザイン。また、京町家の坪庭のような中庭、蔵をイメージした展示室、嵐山の借景を望む縁側のような廊下など、日本的な意匠がそこかしこに盛り込まれています。
よく見ると、廊下のガラス窓は網代模様から着想を得た柄になっています。そして、同じ網代模様なのですが、実はガラスの上・真ん中・下と模様の大きさが異なっています。目線の高さになる真ん中のエリアのガラスは模様を細くし、少しでも嵐山の景色を見やすいようにと設計者と相談しながら決めたそうです。
エリアによって網代模様の大きさが異なる
アート初心者でもうれしいのが、日本の美術館にしては珍しく、ほぼすべての作品が写真撮影OK(フラッシュ・動画禁止)、SNS拡散もOKなこと。展示作品のほとんどが自館のものだからなせること。自由な鑑賞ができるのも、豊富なコレクションを誇る福田美術館の強みです。さらに、展示ケースも高い透過率を誇る上に継ぎ目がかなり少ないドイツ製の大きなガラスが使われています。たまに展示ケースの存在を忘れてしまい、頭をゴツンとぶつけてしまう人もいるほどです。また、ぜひ持参して頂きたいのが、スマホとイヤホン。この2つを持っていけば、音声ガイドを無料で使えるというのもポイント高いですよ!
展示室
常設展示はありませんが、1年に3~5回ほど企画展が行われます。今月23日(土)から 7月3日(日)までは企画展「やっぱり京都が好き ~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち」が開催されます。京都画壇のメンバーたちの作品を京都で見る。なんて贅沢な企画展なんでしょう!
「やっぱり京都が好き」展
(画像提供:福田美術館 ※画像の転載・コピー禁止)
また、入館者のみ利用できるミュージアムカフェ「パンとエスプレッソと福田美術館」もおすすめです。パニーニやパフェなどがおいしくて、ついつい寄ってしまいます。
窓際の席から渡月橋を望む
さらに、福田美術館から歩いて3分ほどの場所には、お得な二館共通券を発売する美術館「嵯峨嵐山文華館」がありますのでぜひハシゴしてみてください。
福田美術館 https://fukuda-art-museum.jp/
「やっぱり京都が好き ~栖鳳、松園ら京を愛した画家たち」
2022年4月23日(土)~ 7月3日(日)
前期:4月23日~5月30日/後期:6月1日~7月3日
10:00~17:00(最終入館16:30)休館:毎週火曜日(G.W.中は休まず開館、5/10、11は休館)