前編では日本の近代化に大いに貢献した群馬県桐生市の織物産業の足跡をご紹介しましたが、後編では、さらにこの街の見どころを辿ります。
まず向かうのは桐生新町重要伝統的建造物群保存地区。江戸後期から昭和初期までの建物が並び、織物関係の蔵や町家も楽しめるエリアです。ここでひときわ存在感をしめすのは、「桐生市有鄰館」。レンガ造りをはじめ11棟の蔵が残り、かつて酒や味噌・醬油を醸造し保管するために使われていました。現在は様々な文化の発信の場となっています。
ここから北東へ大通り(本町通り)を歩きましょう。通り沿いには古い商家やかつての銭湯などが点在し、いい雰囲気。桐生天満宮が見えてきたら、その先は「群馬大学工学部同窓記念会館」があります。桐生高等染織学校の校舎として大正5年(1916)に竣工、イギリス・チューダー様式のデザインがちりばめられています。NHKの朝の連続ドラマ「花子とアン」ほか様々な映画やドラマの舞台にも使われています。内部見学もできますが2022年9月30日まで休館中。守衛所も同様の意匠ですので、お見逃しなく。
桐生駅前を東西に走る末広通り沿い、大正8年(1919)に完成した「桐生俱楽部会館」へ。ここは当時の地元の有力者たちが集い、鉄道や銀行などの誘致や、織物業を中心とした交流・発展の社交の場で、戦後には作家の坂口安吾らも集い、文化の向上に一役買った存在でした。
オレンジ色の瓦屋根が印象的で、列柱のある玄関ポーチや小さな切妻屋根を乗せた煙突など、いわゆるスパニッシュ・コロニアルのデザイン。当時のハイカラな気分を伝える大正モダニズムあふれる洋館です。
街中からはちょっと離れますが、小高い丘(山)の上に立つのが「水道山記念館」。昭和7年に配水事務所として建設されました。桐生の上水道は渡良瀬川左岸一帯を水源地とし、山の高所の配水池に水を送り、ここから低所の市内へ配水しました。建物の外壁はスクラッチタイル、屋根にはスペイン瓦を用いた瀟洒なデザイン。内部には往時の資料展示があります。昭和初期の桐生織物の全盛期は豊かな水で支えられていたのでしょう。この施設までは急な坂道が続きますので、電動アシスト付き自転車(レンタサイクル)で登ってみてください。
「近代化遺産拠点都市」だけあり、見どころ豊富な桐生。ご当地グルメの「ひもかわうどん」、幅広のコシの強いうどんもぜひ味わってみてくださいね。