あなたも「近代化遺産」萌え! by 関屋淳子

第12回 あなたの街の庁舎は名建築かも?身近にありすぎで気づかない歴史的近代建築(神奈川・茨城・宮崎・愛知)


建築当初の姿に復元された茨城県庁舎(現三の丸庁舎)

県庁や市役所といった庁舎。近年、耐震性やIT化などを考慮し、新築されるケースが増えてきています。あまりにも豪華な庁舎には反感が持たれてしまうこともありますが、歴史的に価値を持つ建物は街の宝として大切にしてほしいと願ってしまいます。

地方行政の近代化は廃藩置県に始まります。例えば、明治9年(1876)に初代山形県令となった三島通庸(みちつね)は近代化の象徴として山形県庁舎(現存せず)を中心とする新市街地の建設を進めました。次々と現れる西洋風の建築に当時の人々はさぞ驚いたことでしょう。現存する県庁舎で最も古いものは、博物館明治村にある旧三重県庁舎。明治12年(1879)完成の木造建築です。

さて今回ご紹介する県庁舎は、昭和初期、関東大震災後の鉄骨鉄筋コンクリート造の建物です。県庁舎といって、真っ先に思い浮かぶのは”キングの塔“こと、神奈川県庁舎ではないでしょうか。昭和3年(1928)竣工、表面に溝を刻んだ茶褐色のタイルと、独自の幾何学的な装飾模様が特色で、昭和初期に大流行した建築様式。威風堂々とした佇まいはハイカラな横浜の街に馴染みます。舎内細部の装飾も豪華ですので併せて見学してみてください。

「ザ・県庁」の威厳ある神奈川県庁舎(画像提供:横浜観光情報)

 現在、茨城県三の丸庁舎として機能するのが昭和5年(1930)完成の茨城県庁舎です。東日本大震災の被害を受け、9年前に耐震補強と復元工事が終わり、建築当初の姿になりました。やはり塔の部分が県庁の威厳を感じさせます。正面入り口を抜けると、中央階段や踊り場があるのも、県庁らしい特徴ですね。

茨城県庁舎の中央階段。映画のロケも行われた

茨城県庁舎を設計したネオ・ゴシックを得意とする建築家・置塩章の手による宮崎県庁舎。昭和7年(1932)、宮崎県民の熱い思いにより完成しました。茶色のスクラッチタイルが施され、柱が天に伸びるようなデザインが、南国の包容力を感じさせます。県木のフェニックスや噴水がウェルカム感を出していますね。東国原知事の時に県庁への来訪者が増え、建築としての歴史的価値も見直されたそうです。

南国の明るさがやさしい印象を加える宮崎県庁舎(画像提供:宮崎県)

昭和13年(1938)完成の愛知県庁舎。注目は名古屋城大天守風の屋根を乗せたデザインです。テラコッタタイルと瓦屋根という取り合わせは日本趣味満載で、和洋が見事にマッチした帝冠様式の典型、重要文化財です。近くには、先に建築された名古屋市役所本庁舎があり、頭頂部に四方にらみの鯱が載っていますので、合わせて楽しんでみてください。尾張名古屋は城でもつ、を象徴する2棟です。

三方に天守のような破風付きの入母屋造屋根を載せる愛知県庁舎(画像提供:愛知県)

何かとお世話になっている行政機関の建物。ちょっと目線を変えると面白い発見があるかも、です。

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ