スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋。
いろんな秋の形があると思いますが、私の場合「読書の秋」が今年の気分。特にこの秋は児童文学にはまっています。明るく活発な主人公のローラを中心に、アメリカ開拓時代の家族の姿を描いた「大草原の小さな家」シリーズや、松谷みよ子さんの「モモちゃんとアカネちゃん」シリーズなど、子どもの頃夢中になって読んだ本を再読。物語当時の歴史背景や家族のあり方など、大人になったからこそ考えさせられるテーマが横たわっていると、気づきの読書になっています。
「三鷹市星と森と絵本の家」を訪ねて
三鷹市に国立天文台があるって、知っていますか?
浅草に日本初の継続的な天体観測施設として天文台が造られたのは、江戸時代後期のこと。紆余曲折あり、大正13年に三鷹へ移転したのだそう。約26万㎡ある広大な敷地内に、国の登録有形文化財に指定されている古い観測施設が点在。緑も多く、散策するのに絶好の場所でもあります。
そんな日本の天文学の中心施設内にある「三鷹市星と森と絵本の家」は、児童文学好きにはたまらないスポット。近代的なエントランス棟からひと続きになっている木造平屋建ての建物は、大正時代に国立天文台の官舎として建てられたもの。庭に面した書斎や二間続きの和室の奥に読書室があります。絵本や児童書など合わせて2500冊収蔵しており、「ほし」「もり」「しょくぶつ」「どうぶつ」「ひと・くらし」のテーマに分かれて本が並んでいます。読書室にはソファーや長椅子が置かれ、居心地のよい空間。理科室と名付けられた部屋には、大きなテーブルが中央に、壁際に作り付けられた机には地球儀や天体にまつわる本が置かれていました。
↑こちらが理科室と名付けられた読書室。もとは台所だったようで、作り付けの机の反対側には流しがありました。
休日の昼下がりのこと。館内に入ると、どこからともなくオルガンの音が聞こえてきます。どこで鳴っているのかと音をたどってみると、読書室のさらに奥に、広さ2畳ほどでしょうか、小さな部屋があり、足踏みオルガンと玩具が置かれた遊戯室がありました。こちらの施設にはほかにも、足踏みミシンや蓄音機など、古き良き時代の道具類がそこここに展示され、懐かしい雰囲気を醸し出しています。かつては物置として使われていたであろう場所も展示スペースになっており、扉を開けてみると...。ちょっと意外な仕掛けがあったりします(仕掛けについては、ぜひ現地でご確認を!)。廊下の壁面にも、宇宙にまつわる展示がされているなど、小さな施設ながらわくわくする工夫がそこかしこに施されているので、小さな子どものみならず大人も童心にかえって楽しめます。
↑壁にも絵本が。ディスプレイの参考になります。
↑足踏みオルガンが懐かしい!ちょっと弾いてみましたが、ほっこりする音色です。ちゃぶ台もキュート。
↑地球の位置で季節が決まることを説明する展示。さすが国立天文台に併設の施設です。
来年の6月30日まで開催されている絵本展「暦 かぞえるくらし」では、「いちにち」「いっしゅうかん」などに分け、テーマに沿った絵本を展示。その一角には、日めくりカレンダーが年代毎に並べられ、自分の生まれた日が何曜日だったかチェックできます(ちなみにわたしは日曜日でした!)。
↑写真左奥、壁面の並べられたピンクと水色の物体が日めくりカレンダー。
↑帰る時に、ウッドボードにぶら下げられたチップを、「市内」「市外」に分けられたポストに投函します。
三鷹駅周辺では、10月17日〜23日まで三鷹駅南口の商店街が中心となり、「三鷹まるごと絵本市mini!」が開催されています。商店街店舗の絵本の展示は、鍼灸院に「ほね・ホネ・がいこつ!」(中川ひろたか文・スズキコージ絵)、おそば屋さんに「落語絵本9 そばせい」(川端誠作)などなど、ちょっとクスリと笑ってしまう取り合わせ。23日の最終日には、絵本のようなバッグや豆本をつくるワークショップもあります。
絵本の家へ訪れる前に三鷹駅前をぶらり散策するのもおすすめです。
三鷹市星と森と絵本の家について詳しくは
http://www.city.mitaka.tokyo.jp/ehon/
(取材・文 川崎 久子)