8月は、広島・長崎の原爆の日に続き、15日の終戦記念日もあり、
戦争や平和についてより一層考える月ではないでしょうか。
昭和20(1945)年6月19日、福岡市街地にB29が飛来。
およそ2時間に渡る空襲で市内の繁華街が焦土と化し、
福岡の古き良き時代の建物の多くが消失してしまいました。
空襲を受けた福岡市街地に、被害を免れ、
今もなお、かつての輝きをまとっている洋館があります。
●旧福岡県公会堂貴賓館
明治43(1910)年に建造された旧福岡県公会堂貴賓館は、
天神中央公園のなかに立っています。
第13回九州沖縄八県連合共進会の会場として公会堂が建設され、
貴賓館は、来場者を接待するという名目で隣接して建てられました。
フレンチ・ルネサンス様式を取り入れた木造2階建ての外観は、
八角形の尖塔や玄関ポーチのバルコニーと、ロマンチックな佇まい。
ひっそりとした玄関を入ると、
正面に赤い絨毯を敷き詰めた階段ホールがあります。
階段のかたわらに掲げられた建物の歴史をまとめた案内版をふむふむと読んでいると、
突然、後から女性に話しかけられました。
観光地でボランティアガイドをよく見かけますが、
この女性もそのひとりで、貴賓館に常駐しているのだそう。
お時間があれば案内しますよ、の言葉にせっかくなのでお願いしました。
通常は1階から案内するそうですが、この日は撮影会が入っていたので、2階から見学。
2階のフロアには、寝室やバスルーム、談話室などがあり、
竣工当初には、閑院宮ご夫妻の宿泊所としても利用されました。
天井から暖炉にいたるまで、各部屋で意匠を替えており、
設計・監督を担当したという福岡県の土木技師であった三條栄三郎の
細やかな仕事ぶりが見てとれます。
見逃してしまいがちですが、ドアを支える蝶番にも彫刻が施されています。
とかく無味乾燥になりがちな現代の公共施設を思うと、
蝶番ひとつにもこだわることができるこの余裕はうらやましい限り。
この貴賓館には、ランチやディナーを楽しめるカフェレストランを併設しています。
洋館のクラシックなインテリアに囲まれて、のんびりくつろげますよ!
旧福岡公会堂貴賓館
http://tenjin-central-park.net/kihinkan.html
●福岡市赤煉瓦文化館
ボランティアガイドさんに、洋館が好きならぜひ行ってみてと進められたのが
福岡市赤煉瓦文化館です。
旧福岡県公会堂迎賓館から歩くこと数分。交差点の角にそれは建っていました。
赤煉瓦に白い花崗岩をあしらった外観は、どこかで見覚えが...。
それもそのはず、設計したのは東京駅や日本銀行本店の設計でも知られる
明治・大正の建築界の巨匠・辰野金吾。
中央にそびえる八角のドームがまた東京駅を思い起こさせます。
この壮麗な建物は、日本生命保険の九州支社として明治42(1909)年に建てられ、
1966年まで社屋として使用されていたそうです。
現在は、福岡市赤煉瓦文化館として広く市民に開かれています。
重厚な正面玄関を入ってすぐ左手は、かつて事務室だった場所。
アーチ型の窓口を設けた受付カウンターも往時のまま残され、
その奥は、福岡市にゆかりのある文学者を紹介する文学館になっています。
アールヌーボー調の照明や螺旋階段、大理石で飾られた暖炉...。
こんなステキな場所で働けたら、仕事へのやる気も増しそうです。
福岡市赤煉瓦文化館
http://www.yokanavi.com/jp/landmark/index/179
(取材・文 川崎久子)