甑島ってご存じですか?
読み方もなかなか難しいですよね。「こしきじま」と呼びますが、鹿児島県の東シナ海に面した、上甑島・中甑島・下甑島の有人島と無人島から成る、薩摩川内市(さつませんだいし)に属する列島です。鹿児島県人でも、なかなか甑島へ遊びに行く人も多くないという島です。
でも実は、甑島は、海に面したダイナミックな大自然と、離島ならではののんびりとした空気、そして美味なるグルメにあふれた島なのです。
砂州が4kmに及ぶ景勝地
上甑島の「長目の浜」
太古からの風や波の力によって作られた、長さ4km・幅50mの砂州のことで、上甑島屈指のビュースポットです。この砂州によって海と仕切られ、海と反対側にはなまこ池と貝池の2つの池が並んでいます。さらに長目の浜の先には、鍬崎<くわざき>池と須口池を抱く砂州もあります。これら大小4つの池は、砂州に仕切られた海に同じように面していながら、それぞれ塩分濃度や透明度などが違うので、棲息する生物も異なるそうです。浜を見下ろす鍬崎展望台、長目の浜展望所、田ノ尻展望所の展望ポイントがありますが、なまこ池、長目の浜、東シナ海を一望できる田ノ尻展望所が一番のオススメです。
高さ100m級の断崖絶壁クルージング
下甑島の「ナポレオン岩」
甑島には、東シナ海の大自然によって造られた奇岩や断崖が多く、特に下甑島の西海岸線沿いは断崖絶壁が約16kmにも渡って続きます。一番高い絶壁は約200mにも及ぶそうです。陸上から見られないこの景観を船上から見られるのがクルージング。海蝕洞や奇岩の数々、断崖など、次々と現れるダイナミックな景色は圧巻!
最大の見どころは、ナポレオン岩。高さ127mの奇岩で、横から見るとナポレオンに似てる!?
また、下甑島の手打集落には、約700mに渡って続く旧武家屋敷の町並みもあります。住居はほぼすべてが改築されてしまっていますが、藩政時代の面影を残す玉石積みの石垣は趣きがあります。ほんのりと外灯がともる中、遠い昔に思いを巡らしながらの静かな月夜散歩なんていかがでしょう。
他にも甑島では、釣りやシーカヤック、ダイビングやキャンプも人気のアクティビティです。さらに、瀬尾の観音三滝、断崖の上に立つ甑大明神、夕陽が沈む全長420メートルの甑大明神橋、6月末〜8月上旬に見頃を迎えるカノコユリの自生地、6〜7月にウミガメが産卵する手打海水浴場など見どころいっぱいです。
甑島の光る宝「キビナゴ」
対馬海流によって年間を通じて水温が高いので、一年を通してさまざまな魚介類が獲れます。中でも、島の宝とも呼ばれるのが「キビナゴ」。一年中味わえますが、「産卵期には主要な産卵場は禁漁区にする」「小さな目の網は使わない」「稚魚育成のために保護区を設ける」など、キビナゴを守り続けるための様々な「漁師の約束」の取り組みがなされています。漁師たちによって守られている高品質のキビナゴは、甘めの鹿児島醤油に漬けた漁師漬けや漬け丼にしたり、軽く焼いてショウガ醤油で食したり、刺身、煮付けや天ぷらで、地元の食事処や宿で味わえます。地酒や焼酎にもぴったりです。子持ちキビナゴは5〜6月が狙い目。
こんがりキツネ色の「つけあげ」
全国的には「さつま揚げ」の名前で知られていますが、鹿児島では「つけあげ」と呼ばれています。これも名物。カワハギやブダイ、スケソウダラなど旬の魚のすり身を油で揚げたものですが、本土のものよりやわらかく、ふんわり。魚の風味たっぷりで、ほのかな甘さが口に広がります。きつね色に丁寧に揚げたつけあげは、そのままはもちろん、少し温めてもたまらないおいしさです。
太陽と海の恵みたっぷりの「干物」
岸壁から海に突き出すように設けられた干し場にずらりと並ぶのは、朝獲れのキビナゴや近海で獲れたサバやアジ、カマスなど旬の魚です。それらを天然ミネラル塩を使って、丁寧に手で開き、干し場に並べていきます。干し場が海上にあるので遮られることがなく、風が直接当たり魚がよく乾くのです。乾くのが早い=新鮮なうちに全国発送が可、ということなんです。
他にも、甑島近海で養殖されている「こしきヨコワ」というクロマグロを使った寿司、さつま甘エビとも呼ばれる深海の「たかエビ(漁期は3〜6月と9月〜12月)」、ミネラル豊富な海洋深層水、7月上旬に出荷されるパッションフルーツ、地酒や焼酎など、甑島ならではの特産品が豊富です。
甑島へは、鹿児島本土の串木野新港から高速船かカーフェリーで向かいます。上甑島と下甑島の移動も高速船またはカーフェリーとなります(高速船シーホーク所要約50分・1日2本運航/フェリーニューこしき所要約70分・1日2本運航)。島内観光に便利なレンタカーもあるので、自由きままに島旅を楽しんでみてくださいね。
(取材・文 塩見有紀子)