現在1007件ある世界遺産のなかでも、50件と一番多いのがイタリアです。第2位の中国は47件で、国土の広さや、近年追い上げてきていることを考えれば、近い内にイタリアを抜くかもしれません。
イタリアの世界遺産50件の内訳は、文化遺産46件、自然遺産4件です。
この中には、「サン・ジョルジオ山」(スイス)や「ローマの歴史地区」(ヴァチカン市国)のように国境を越えて共同で登録される物件も含まれています。
そんなイタリアの世界遺産の中から、今回は「ピサのドゥオモ広場」を取り上げたいと思います。
「ピサ」といえば、「斜塔」が有名ですよね。当時、ピサ大学で学んでいたガリレオが斜塔で行った「落下の法則」の実験の逸話とともに知られていますが、この斜塔があるのがドゥオモ広場です。
ピサはイタリア中部のトスカーナ州にあり、海に近い都市です。11世紀に自治都市となり、地中海貿易の拠点として大いに栄えました。その富をふんだんに注ぎ込んだのがドゥオモ広場の建築群です。
1063年、シチリア島のパレルモ沖で、サラセン(イスラム教徒)の艦隊に勝利した記念にドゥオモ(大聖堂)の建築が始まったそうです。白亜の大理石のドゥオモは、イタリア・ロマネスク建築の傑作といわれています。西正面には、白大理石の4層の柱列が飾られ、ロマネスクの像も入口や正面に並びます。
ドゥオモの隣に斜塔が立っています。ドゥオモとは別に鐘塔や洗礼堂を建てるのがイタリア・ロマネスク建築の特徴だそうです。
こちらも白大理石の柱列で囲まれており、高さは北側で55.22m、南側で54.52mあります。
1173年に着工されましたが、地盤沈下のため建築当時から傾き始めていたそう。当時の技術でよく最後まで完成したなと感心してしまいます(当初の予定より高さはかなり低くなったのだとか)。
年々傾きが大きくなっていましたが、倒壊を防ぐ工事が施工されました。ガイドさんによると、この倒壊防止の工事を行ったのは日本の建設会社とのこと。真っ直ぐにすることもできると提案したそうですが、さすがにそれは断られたらしいと笑っておられました。
ピサの斜塔は中に入り、約300段の階段で屋上まで上ることができます。1階も傾いているのか、中に入るや否や軽い車酔いのような違和感をもちます。すぐに慣れるのですが。
屋上までの階段は手すりもなく、人がやっとすれ違えるぐらいの幅しかないので慎重に上ります。
屋上には鐘が掛けられています。
ピサの街並みも一望。360度ぐるっと回ってみましょう。
ドゥオモも上から見下ろすことができ、建物の全体像を確認することができます。
また、斜塔を望む前面の芝生でもお楽しみがあります。多くの観光客が斜塔を支えるポーズなどで撮影をしていました。ぜひお試しを。
最後に洗礼堂です。洗礼堂は12世紀に建設が始まったのですが、完成までに200年もかかったのだとか。そのため1階部分はロマネスク様式、2階部分はゴシック様式という珍しい建造物になりました。内部の中心には洗礼の際に体を水に浸すための水槽があります。
ここは音響効果にすぐれていることでも知られます。スタッフの方が声を出して、エコーのパフォーマンスをしてくれます。時間が合えば、ぜひその耳で確認してみてください。
■イタリア・1987年登録・文化遺産
■ ピサのドゥオモ広場
(Piazza del Duomo,Pisa)
(文・山本 厚子)