心と体によく効く、大人の山歩き by 西野淑子

第46回 苔と針葉樹の森を抜けて奥秩父最高峰へ 北奥千丈岳(山梨県県山梨市・長野県川上村)

暑い夏は標高の高い山や高原へ。さわやかな風を受けながらの散策が気持ちよい季節です。山梨県と長野県の県境の稜線に位置する北奥千丈岳(きたおくせんじょうだけ)は、標高2601m、奥秩父の最高峰。起点となる標高2365mの大弛峠までは、乗合タクシーやマイカーでアクセスできます。

夢の庭園、展望デッキから金峰山方面を望む

大弛峠から北奥千丈岳は歩行時間往復2時間強、登山としては短めですが、標高差はそれなりにあり、本格的な山道もありますので、登山専用の装備や服装が必要です。

登山になじみがない方なら、北奥千丈岳へ向かう途中にある「夢の庭園」まで足を運んでみましょう。丸太の階段や木の階段が設けられています。段差が大きいところもあるので、ゆっくりと足を運びましょう。

歩き始めは薄暗い針葉樹の森で、林床には倒木や岩などに苔が多く見られます。

標高を上げていくにつれて、白い花崗岩が露出しているのも見られるようになります。シャクナゲや針葉樹などの木々と巨石の配置が、まるで日本庭園のようです。ベンチのある展望デッキで一息。西側の眺めがよく、大弛峠から金峰山に連なる稜線、さらには南アルプスも見渡せます。

シラビソなどの針葉樹と苔が美しい夢の庭園

林床にはさまざまな種類の苔が見られる

大弛峠から夢の庭園の展望デッキまでは片道3040分ほどの道のり。夢の庭園までの方は、来た道を戻ります。北奥千丈岳へ向かう道は、ここから険しさを増してきます。段差の大きな階段や木の根、巨石の間をぬうように進むところもあります。足元に気をつけながら、周りの景色も楽しみつつ進みましょう。

最初に現れる山頂が前国師岳。西側の眺めがよい山頂で、大きな岩がごろごろとしています。

巨石がごろごろと連なる前国師岳

前国師岳からいったん少し下ると、国師ヶ岳と北奥千丈岳の三叉路にたどり着きます。右に進むと、10分ほどの道のりで北奥千丈岳に到着。平たい大きな石がごろごろとしている、不思議な景観の山頂です。360度の展望で、西側には金峰山や南アルプスの山々、東側には甲武信ヶ岳や雲取山も眺められます。ゆっくり休んで景色を楽しんでいきましょう。

本当に絶景なので、よく晴れた日に訪れることをおすすめします。

20年近く前にここを訪れたときは霧が深く、山頂に立ったものの、周囲は真っ白でした。天気のよいときに改めて訪れて、こんなにすばらしい山岳展望が広がっていたのか…と驚いたものです。

やむを得ず霧の日に歩くことになったら、夢の庭園までの往復がおすすめです。苔や針葉樹の森は、霧の日は幻想的な雰囲気になります。苔もみずみずしく、緑が鮮やかに感じられるでしょう。とはいえ、濡れた階段や木の根は滑りやすいので十分注意してください。

北奥千丈岳の山頂も巨石が多く見られる

北奥千丈岳山頂から金峰山方面を望む。山頂には山名盤も

山頂一帯は森林限界を超えており、関東近郊の低山とは違った植生が楽しめるのも魅力です。北奥千丈岳の山頂に茂っているのはハイマツ。背が低く、存在感のある姿です。

夢の庭園や山頂周辺で見られるシャクナゲはハクサンシャクナゲといい、森林限界を超えたあたりで見られます。例年の花の見頃は7月上旬から中旬にかけて。

 

北奥千丈岳周辺に茂っているハイマツ

帰りは来た道を戻ります。登山道や段差のある階段は、下りの方が傾斜がきつく感じます。足に疲れも出ていると思うので、慎重に歩きましょう。登山口の大弛峠には、大弛小屋という山小屋があります。喫茶・軽食の営業も行っており、人気が高いのはカレー。よく煮込んだシンプルなカレーが、疲れた身体に染み渡ります。国師ヶ岳の伏流水でいれたコーヒーとともにどうぞ。

大弛小屋は昔ながらの雰囲気の山小屋

【北奥千丈岳:山歩きデータ】
アクセス:JR中央本線塩山駅からバスと乗合タクシーで1時間20分、大弛峠下車
※塩山駅〜大弛峠のバスは6月上旬〜10月下旬の特定日運行、web予約のみの予約制
コース:大弛峠…夢の庭園…前国師岳…北奥千丈岳…大弛峠
所要時間:2時間30
体力度★★☆ 技術度★★☆

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