インバウンド客でにぎわう箱根。「養生館はるのひかり」は、箱根では珍しく外国人客を受けていません。(今後は、特別なプランで一人旅の外国人ゲストのみ受け付ける予定だそうですが)。宿泊は一人または二人でのみ、12歳以下はお断り、もちろん宴会は論外という独自の運営スタイルをとっています。“静かな箱根”を体感できるので、ちょっと一人でひと休みしたいなと思った時に出かけたくなるお宿です。
ところで「養生」という言葉、江戸前期の本草学者・貝原益軒が『養生訓』という著書の中で、足るを知り、飽食をせず、かつ本然の楽を否定しないことが、幸せに長く生きる秘訣であると記しています。「はるのひかり」での滞在、特に食事は、養生にうってつけの献立です。畜産肉は使わず、魚は出汁と朝の焼き魚のみ、卵は平飼いのもので、食材の中心は近隣農家で採れる無農薬野菜。
今回、夕食でいただいたのは胡麻豆腐やきのこ汁、蕪の煮物や小鍋おでんなど8品。雑魚などでとっている出汁がおいしくて、煮汁などすべて飲み干してしまいたくなるほどでした。歯ごたえの残る野菜は、噛むほどに滋味が伝わってきます。お米は、夜は微発芽した玄米、朝はもち麦&白米&古代米の雑穀米。お腹に軽く、少食な人でも食べきれるぐらいの量がよそってあるので、追加で一膳のみお米のおかわりができます。
調味料まで含めて素材を吟味し、丁寧に調理された品々は、量はそう多くありませんが、お腹が満たされてきます。黙食が基本なので、皆さんモクモク&モグモグご飯を食べています。スタッフさんたちの明るい声は聞こえてくるので、それなりに賑やかですが、どこか禅寺での食事風景にも似ています。
同じくお風呂も黙浴が基本。浴槽は毎日お湯を抜いて掃除をしているそうで、清潔感があります。温泉は源泉かけ流しで、湯温は2〜3段階に分かれており好みの温度の浴槽に入浴ができます。石鹸シャンプーとリンス、ボディソープはありますが、洗顔や化粧品類はありません。
3つの浴槽に分かれているシンプルな浴室。こちらは夜まで女性用。
もう一カ所はもう少しこじんまりとしている
置いてあるものないもの、宿泊の際の注意点など、初めて泊まる時にはHPをよく読んでからお出かけを。かなり細かく説明が書かれていますが、これは、自分が快適に過ごすためでもあり、一人で箱根に土曜日に泊まっても2食付1万8740円(税込・和室の場合)という良心的な価格を維持するためでもあります。過分なサービスを期待さえしなければ、この上なく快適な宿です。
湯守の米山さんによると、「常連さんが5割ぐらいで、女性ゲストが7割ぐらい、連泊をする人も半数ぐらい」いるとのこと。ちなみに米山さんは、農学部のご出身で食材や発酵について深い知識をお持ちです。そうした知見を活かし、「腸の養生プラン」という連泊プランも作っています。日本では数少ない養生のための温泉宿、上質の食と湯とで、“本然の楽”を体感してみてください。
養生館はるのひかり