前回紹介した乗鞍高原温泉の宿「Raicho」は、古い旅館を事業継承しリノベーションした施設です。そのため、まずは経営を軌道に乗せることを第一に運営してきたのだそうです。
3年が経ち、お宿の経営が安定してきた2019年、「Raicho」オーナーの藤江さんは、乗鞍観光センターにカフェ「GiFT NORiKURA」を開業しました。ここは大駐車場があり、乗鞍山頂畳平へと向かうバスが発着、乗鞍の玄関口とも言える場所です。多くの人にアピールできるこのカフェでは、「最初からやりたいことを打ち出していこう」と決め、環境への取り組みを前面に出して運営を行っています。
ジェラートのカップやスプンは木製、テイクアウト用は紙製、そしてタンブラーのレンタルもあり
基本コンセプトは「地産地消」「Going ZeroWaste(ゴミや廃棄物を出さない)」「売り上げの一部を地域の環境整備のために使う」こと。容器は紙や木製、ストローは繰り返し使えるステンレス製、ドリンクをテイクアウトするときには. マイボトル(50円引)、ステンレスボトルのレンタル(無料)または紙カップ(+20円)から選べる、ボトルを持参すれば乗鞍のおいしい水を自由に汲むことができるなどなど。みんなで知恵を出し合って,メニューの開発や取り組みを行っています。
ヤギミルクを使ったチャイとスイーツ。トーストやベーグルなどの軽食もあり
乗鞍の野草や和ハーブを使ったお茶。店長の牧野さんを中心に新しいメニュー開発を行っています
「GiFT NORiKURA」の看板メニューはヤギミルクを使ったジェラート。クセがあるのでは?と思う人もいるかもしれませんが、意外や意外さらりとしていて香りもさわやか。牛乳が苦手な人でもイケる味です。店長の牧野さんに話を聞いたところ、「おいしい草を食べ、繋ぎっぱなしにせず、草原を歩けるようにして大事に育てられているヤギたち」とのこと。飼育状況が分かるのも地産地消ならでは。環境だけでなく動物にもやさしいと言えそうです。
乗鞍高原は、2021年、日本で初めての「ゼロカーボンパーク」に登録されました。「GiFT NORiKURA」は、こうした環境への取り組みの発信基地としての役割も兼ねています。気象学を学び、待ったなしで気候変動への危機を感じている藤江さんが、「いつまでも雷鳥が暮らせる乗鞍であってほしい」と、生涯をかけて取り組んでいるフィールドです。
その熱意に惹かれるように、乗鞍を愛する若い人たちが集まってきています。地元の人たちとの理解を深めるため、地元新聞活動(地元への情報発信)も行っています。乗鞍高原に宿泊したのは20年ぶりでしたが、大きな自然の中で、すばらしい活動が始まっていることに心動かされました。硫黄の匂いのする源泉100%かけ流しの自然湧出泉や、高原のおいしい空気、そして明るい希望に包まれた2日間、すぐにでもまた行きたいなぁと思える魅力のある高原温泉地です。
オシャレな店内。天気が良ければ乗鞍岳を眺めながら外のテラス席で過ごせます
「GiFT NORiKURA」
住所:長野県松本市安曇4306-5
https://giftnorikura.com