里景色を眺めながら入浴できる男女別内風呂
群馬県南西部、山また山の美しい星尾集落に、一軒の温泉施設があります。2018年に復活した星尾温泉です。
明治初期には発見されていたこの温泉、かつては集落の人たちが共同で使ってきました。ところが戦後の物資不足により昭和25年に廃止となり、お湯だけが森の中で湧き続けていました。自然湧出するこのお湯に入れるようにと、有志13名が力を合わせて68年ぶりに施設を復活させたのです。
傾斜地の続く谷間の集落にある温泉
温泉施設は、堅牢な石垣の上に立つどっしりとした建物です。 今時のオシャレな古民家再生施設ではなく、築150年の養蚕農家を、自分たちの身の丈にあったように手直しして使っています。
浴室の出入り口はアコーディオンカーテンで、浴槽にはステップがわりに脚立が沈んでいます。この気取りのなさが星尾温泉の魅力の一つでもあります。日帰り入浴の営業は金・土・日曜と祝日。源泉地より傾斜を使ってお湯を引き入れ、薪で加熱し、かけ流しで檜の浴槽に注いでいます。
2年ぶりに再会した小保方さん。里人の風格が出てきているような…
薪は近くの製材所からもらってくる余材を利用。11時からの営業に合わせて、朝7時にはボイラーに火を入れ温泉をあたため始めます。運営している小保方さんによると「木の材質によって香りも違うし、燃え方も異なるんです。桜はいい匂いがしますし、杉は15分ぐらいですぐに燃え尽きてしまいます」。温泉営業時間中は、ボイラーの火が消えないよう常に気を配っているのだそうです。
化石燃焼をつかわず薪だけで温泉をあたためるのは、なかなかに大変なご様子。でもそのおかげで、香ばしい木々のアロマに包まれながら、肌あたりのいい温泉に浸かることができます。ほのかに鉄分の香る緑がかったお湯は、炭酸水素塩泉らしいスベスベ感と、塩化物泉らしいあたたまり感があり、気持ち良く入浴することができます。
2021 年に完成した離れの宿泊棟にある専用檜樽風呂。
好きな時間に温泉に入ることができます
ところで南牧村は、日本一高齢化率が高く、消滅濃厚とされてきた村です。ところが現在、転入が転出を上回り、年間6〜10名ほどの人たちが移住をしたり、新たに二拠点生活を営んでいます。小保方さんも10年前にこの村に移住してきました。温泉営業の傍ら、畑を借りてジャガイモやさつまいもを栽培し、一部は干し芋(南牧村では「切り干し」と呼びます)として販売しています。
花咲く美しい星尾集落
小保方さんが移住してきたきっかけは、「地元の人たちが親切でやさしかったから」。近年、南牧村は、研究者からも注目を集めており、元気な高齢者が多く、かつ住民の幸福度も高いのではないかと言われています。確かに、星尾温泉や南牧村で出会った人たちは、のんびりとしていて顔つきもおだやか、幸せそうに見えました。空気がキレイで風景も美しく、そして温泉もある、これはもう控えめに言っても桃源郷です。
温泉に浸かりがてら、村の暮らしに触れてみるのもおすすめです。
時々、温泉施設にやって来る大家さん家のまめちゃん(17歳)
星尾温泉 木の葉石の湯
電話:090-4733-4939 住所:群馬県甘楽郡南牧村星尾1162
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