「やさしい温泉」人、動物、地球にも! by 西村理恵

第12回 百年の森構想を軸にカーボン・ニュートラルを目指す「あわくら温泉元湯」前編(岡山県・西粟倉村)

「あわくら温泉元湯」の男女別内湯。朝風呂は宿泊者のみ、16時30分〜は日帰り入浴もOK 

先日、岡山県最北東にある西粟倉村に出かけた時のこと、村役場のエネルギーのご担当者から「加温している温泉は日本にどのぐらいあるんですか?」と質問を受けました。後日、環境省の統計資料をチェックしてみたところ、42度未満の源泉数の割合は44%(令和元年度)。ざっくりとではありますが約4割の源泉は加温が必要と言えそうです。

泉温の低い温泉をどうやって適温にするのか? これまであまり考えてこなかったのですが、「地エネの湯」というインターネットサイトに出会ってから、がぜん興味が湧いてきました。

サイトを運営している大久保芳洋さんによると、「地エネの湯」は「地域エネルギーを活用し、地元を元気にする温泉・銭湯」のこと。現在、約420軒の温泉・銭湯が掲載されています。「木材を加工した薪やチップなどを使ってお湯を沸かす方法が多いのですが、天ぷら油の廃油を活用したり、太陽熱を使ったり、様々な沸かし方がありますよ」と、大久保さん。

薪やチップを使うと、元々木材が吸収していたCO2と、燃やすことで吐き出されるCO2とのバランスがとれるため、「カーボン・ニュートラル」が保たれるのだそうです。また地元材の需要が生まれ、それが山の整備にもつながり、環境保全が進む上、地域内で良好なお金の循環が生まれるという面も大きいと言います。

お勤めのかたわら「地エネ」活動を行っている大久保さん。
お仕事は林業にちなんだ会社なのだそうです

そうした取り組みを村全域で行っているのが西粟倉村。「百年の森構想」を軸に、2008年より小型水力発電や、木材によるエネルギー供給など、自然資本を活かした先進的な取り組みを行っています。こうした取り組みに惹かれてかIターンする若者も多く、人口1400人の村に40ものローカルビジネスが花開いています。

元湯周辺の美しい田園風景。木と水の資源が豊かな村です

今回紹介する「あわくら温泉元湯」(以下、元湯)も、移住組が運営する温泉ゲストハウス。村の真ん中を南北に走る智頭急行線あわくら温泉駅から徒歩15分。塩谷川に面したのどかな場所に位置しています。

玄関口となる智頭急行線「あわくら温泉駅」。
温泉発見伝説にちなんでタヌキの置物やステンドグラスが飾られています

元湯は、鎌倉時代、傷ついたタヌキが見つけたとの伝承があります。元湯近くにまつられているお薬師様は今から260年前のもの。古くから利用されてきた温泉です。子どもの頃から元湯に浸かってきたご近所さんによると、「温泉に入ると虫刺されのあとの痒みがとれる」「ポカポカが長続きする」とのこと。地元の人にとっては大切なお湯なのです。と、「お湯」と書きましたが、元湯の泉温は14度。そのままではとても入浴できません。そこで登場するのが薪ボイラー。元湯のキャッチフレーズは「森を味わう薪の宿」。どんなお宿なのか、期待が高まります。次回後編でたっぷりご紹介します。

地エネの湯 https://local-energy.sakura.ne.jp

あわくら温泉元湯 電話:0868-79-2129 住所:岡山県英田郡西粟倉村影石2050
https://motoyu.asia

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