今や年間45万人が足を運ぶというスペイン。そのスペインの中でもバルセロナと共に人気を博すのは、国のほぼ中心部に位置する都市マドリード。各国からのフライトも増え、たくさんの観光客を迎え入れる体制が猛スピードで整備されているこの街は、食にショッピング、歴史文化の魅力もたっぷり。さらに近年は世界中からビジネス目的の訪問者も増え続けています。
今回はそんなマドリードを3つの切り口で、フォトグラファーのyOUさん(http://www.youk-photo.com)が3回に渡ってそれぞれの魅力をたっぷりとご紹介します。
VOL.1 美食編
スペインの食事情は漠然とは知っていたものの、ここまで胃がびっくりするほど、長い時間かけてたくさん食べ続ける習慣があるとは知りませんでした。スペイン人の一般的なランチは大概14時から16時ぐらいまでゆっくり時間をかけて食べて、ランチタイムからビールやワインなどのアルコールを飲むこともしばしば、そしてその後はご存知シエスタで体を休め、再び仕事に戻り、終業後の21時ぐらいから深夜にかけてディナータイム。もちろん昼間にしっかりと食事をして、夜はバルなどで軽くつまむようなことが多いようなのですが、それにしても1日の食事の時間が長いような気がしてなりませんでした。
今では日本人にも多く知られ、人気のスペイン料理はピンチョスからタパス、パエリアから肉魚料理まで食材も食べ方も豊富な上、色彩豊かな様子はまさに五感で楽しめる食文化と言えるでしょう。
第1回目の美食編では今回訪れた中でも特別な場所を3箇所ご紹介します。
・マドリードのカスティーリャ地方の郷土料理を初体験!
老舗「LA BOLA」で食べるボリュームたっぷりのコシードはどこか懐かしい味
マドリードの中心部に位置するオペラ座からほど近いボラ通り。この通りにつながる細い路地をほんの少し入ったところで、真っ赤な外壁に目を奪われます。そこが1890年創業の老舗レストラン「LA BOLA TABERNA(ラ・ボーラ・タベルナ)」。店内のクラシカルな雰囲気も人気の、カスティーリャ地方の郷土料理「コシード」専門店です。
ボラ通りから一本入ると見える赤い外壁の店。とてもチャーミング
「コシード」はスペイン版ポトフと言ったところ。野菜や肉を小さな壺で炭火でじっくり長時間煮込んだコシードは食べ方もオリジナル。最初に細くて短いパスタのフィディオスが出され、そこにサーバーが持ってくる小さな壺から
煮込んだ具材を勢いよく一気にかけて熱々をいただく、それがコシード。
フィディオスはパスタのこと
壺から煮込みの具材とスープを一気にかける
煮込んであるのは鶏肉、牛肉に骨つき生ハム、チョリソー、じゃがいもやひよこ豆...など。多い時は一日230食出るというから驚きです。
こちらがコシード!
ご覧の通り見た目もボリュームたっぷり。ほろほろに煮込まれた野菜や肉はしっかりとした味付けで大満足。食べ進めるうちにちょっと味を変えたくなったら、チリソースをかけたり、ハラペーニョをかじったりするとピリッと口の中が締まって、またコシードに手が伸びて、「こんなにたくさん....」と思いながら、力強いリオハの赤ワインとの相性も良く、結局完食してしまいました(笑)
厨房で炭火にかけられた壺がズラリ
コシード単品だと21.5€〜ですが、人気のランチセットはハウスワイン(グラス)にスープ、オリーブとパン、そして食後のデザートとコーヒーまでついて35€〜40€ほど。日本語メニューも用意されているので、オーダーも間違えることなく安心。ただしクレジットカードは使えないため、現金を用意しましょう。
体があたたまるカスティーリャ伝統煮込み料理「コシード」。せっかくなら100年以上前の息遣いを感じられる老舗のレストランで楽しむのはいかがですか?
コンパクトな店内には絵や写真も飾られて昔の雰囲気が漂う
名称 ラ・ボラ(Restaurante LA BOLA)
住所 C/ Bola, 5 28013 Madrid, Spain
電話 (+34) 915 476 930
営業時間 ランチ13:00-16:00、ディナー20:30-23:00
休業 日曜日の夜(ディナータイム)定休
公式サイト https://labola.es/
・スペインならパエリアは外せない!
人気専門店「L'ALBUFERA」で大満足の昼下がり
パエリアはもともと東部のバレンシア地方の米料理。ジャポニカ米を魚や鶏肉などと一緒にスープで炊き上げてサフランで風味づけされ、大きな専用のパンで供されるパエリアは、日本でも専門店があるほどの人気スペイン料理。
ここでご紹介するパエリア専門店「L'ALBUFERA(ラ・アルブフェーラ)」はマドリードでも人気が高いランチスポット。
1983年に創業し、2015年の第55回国際パエリアコンクールで優勝した経験を持ち、ビジネスや観光に利用されるホテル「メリア・カスティーリャ」の1階にエントランスがあることから、昼時は多くのビジネスマンや観光客が訪れています。1階のエントランスから階段を降りて広がる店内は天井が高く、広くて明るく、とても清潔。
店内は明るくて清潔なイメージ
大きな丸テーブルに通されると、すぐ近くの厨房から運び出されるパエリアパンの大きさにまずは驚きました。それもそのはず、日本ではなかなかお目にかかれない特大パンには、みっちりと16人前のオレンジのお米の絨毯が引かれていました。この店ではパエリア以外にもカスティーリャ地方の伝統料理も楽しめ、パエリアをオーダーして出てくるまでの間、ワイン(もはやランチマスト!笑)とタラのカルパッチョやハモン・イベリコ・ベジョータなどじっくり前菜を楽しめるのも魅力。
こちらのパエリアはざっと16人前!
前菜のタラのカルパッチョにハモンイベリコベジョータ
それにしてもスペイン人は、こんな昼下がりからしっかり飲んで食べてが私達のような旅の非日常ではないのだと思うと、その気候の如く陽気で大らかな国民性がとても理解できるような。旅の間にスペインの美食生活を続けたら、大抵のことは「大したことない」ような気がしてきたから不思議でした。
そしてついにパエリアが登場!その種類は豊富な上に、お米の硬さも好みに合わせて調整のオーダーが可能です。今回オーダーしたのはアロスアバンダとバレンシーナの2種類。漁師飯「アロスアバンダ」は所謂魚介出汁で炊かれたシーフードパエリア。そして「バレンシーナ」はバレンシア地方で生まれた伝統的なパエリアで、ウサギの肉とサヤエンドウを使ったものが発祥ですが、今ではウサギの肉の代わりに鶏肉が使われることも多いとか。
右が「アロスアバンダ」左が「バレンシーナ」
日本でパエリアと言えば、ムール貝や海老など大きな具材がパエリアパンに立ち並び、一目見て何が入っているかわかるパエリアのビジュアルイメージがありますが、ここで見たパエリアは、炊き込まれていて具材の原型がないものがほとんど。実は本来のパエリアと日本のパエリアは少し異なるようです。
最後にデザート、アロスコンレチェ。ライスプディングにチョコをあしらい、マンゴソースをかけたものをいただいて、2時間!のランチタイムもようやく終了。
「アロスコンレチェ」
この日のコースは全部で54ユーロでしたが、通常ランチの目安はおよそ30ユーロ。世界レベルのパエリアをその他の伝統料理と共にいただける「L'ALBUFERA」。本来の伝統的パエリアの歴史を舌で知るいい機会となりました。
店名 Restaurante L’Albufera(レストラン アルブフェラ)
住所 Calle del Poeta Joan Maragall, 45 | Meliá Castilla, 28020 Madrid, Spain
電話 +34 915 67 51 97
営業時間 ランチ 13:00-16:00、ディナー 20:00-23:30
公式サイト https://www.melia.com/en/hotels/spain/madrid/melia-castilla/albufera.html
・市場のハシゴ酒で美味しいとこどり!
牡蠣に生ハムにピンチョス、日本の横丁使いができるサンミゲル市場
スペインの「バル」は今でこそ日本に浸透していますが、私達が普段遣いしている「なんでもある居酒屋」によく似ていると思いませんか? ところがマドリードの中心部には至る所にバルが立ち並び、夜が更けるにつれ賑わいを見せ、怪しい光を放つ街並みは日本のそれとは全く違う風情を醸していました。
そんな中、立ち並ぶバルとは一線を画し、2009年よりマドリード初のガストロノミー・マーケットとして誕生したのがサンミゲル市場。元々は1916年5月に生鮮食品卸売市場としてオープンした100年以上の歴史を誇るこの建物は、
市内では数少ない鋳鉄建築の傑作としても知られ、2000年には世界遺産にも認定されました。この施設の中には年間1,000万人以上が訪れる30の固定の店舗と、移動式のスタンドが所狭しとひしめきあい、今やマドリードを代表するガストロノミー施設として殿堂入りを果たしています。
ここでは今のスペインの食を代表するカスティーリャ地方、アスティリアス地方、バスク地方など各地の食文化を体験することができます。
旧市街の中心部に位置するサンミゲル市場
日々海外からの観光客で賑わっている
新鮮な野菜や魚介類を扱う店から、串に刺した一口サイズのおつまみ「ピンチョス」に小皿料理の「タパス」専門店、豚の脚が軒先に豪快に並ぶ生ハム専門店にチーズ、クロケッタ、スイーツまで楽しめる色鮮やかな空間にすっかり目移りしてしまいました。
ピンチョスや生ハム、チーズの専門店が並び目移りする
好きなものをそれぞれチョイスして楽しめるスペースも
サンミゲル市場はマドリードの中心地旧市街のソル市場からも徒歩圏内、マヨール広場からは徒歩2分という便利な立地。まさにスペインのガストロノミーを一度に体験し、満喫できる魅力的な場所は旅の間も何度でも訪れたくなること間違いなし。平日は基本的には午前10時から深夜0時までですが、週末にかけての木曜日金曜日土曜日は深夜2時までオープン。チュエカ地区に新しく登場したサンアントン市場と合わせて是非とも訪れて欲しい場所です。
所在地: Plaza de San Miguel, s/n, 28005 Madrid, Spain
時間: 日曜日〜水曜日:10:00~0:00
木曜日〜土曜日/祝祭日前日:10:00~2:00
電話: +34 915 42 49 36
WEBサイト:http://mercadodesanmiguel.es
写真/文:yOU(河崎夕子)
第二弾おしゃれ編もアップしました!