京都の桜の開花時期は長いです。1か月以上どこかで愛でることができるようになっています。それでも紅葉に比べ満開は短いので、寺社をはじめ各所で盛んにライトアップをして人々を招き入れています。円山公園などは昼も夜もすごい人ごみの中で宴会をしています。祇園白川の巽橋の上で宴会をしているグループも見たことがあります。あれはさすがに大ひんしゅくでしたね。
このように人々を狂わせる京都の桜の中で、それほど混雑してなく静かに花見ができるのが京都御苑です。広い御苑の中で桜は点在していますが、最も有名なのは京都御所紫宸殿前の左近の桜でしょう。後水尾天皇があまりの美しさに、御車を引き返させたという逸話がある「車返桜」も見事です。
しかし今回の場所は、私も毎年撮影に行く旧近衞邸跡です。近衞家は関白・藤原忠道の四男・摂政近衞基実を家祖として平安時代末期に成立し、何人もの摂政関白を輩出した五摂家の一つです。ちなみに太平洋戦争前後の激動期に3度総理大臣を務めた近衞文麿は30代当主です。
御苑最北の今出川通中央にある今出川御門を入り南に行くと京都御所に突き当たりますが、入ってすぐ右に行きます。ちなみに、今出川通の北側には同志社大学のレンガ造りの校舎が建ち、さらに奥に相国寺南門が見えます。
鬱蒼とした森を左手に見ながらさらに西へ行くと、趣のある石橋が架かる枯れた近衞池が現れます。そこが近衞家の築山と回遊式庭園跡です。池の淵から西が旧近衞邸跡で、もともと現在の同志社大学新町校舎にあった邸宅を、豊臣秀吉によってこの場所に移転させられました。明治になり邸がなくなった平地に、残った桜と植えられた桜と合わせて約60本の枝垂れ桜があります。
(上:大きく枝を広げた中心にあるの糸桜 下:紅枝垂れ桜越しに見える京都御所)
この枝垂れ桜は「近衞邸の糸桜」と特別に呼ばれています。枝垂れ桜のほとんどは、他の桜のように接ぎ木で増やすクローンではなく、種から育ってゆくので個性があり、開花時期や色、花の大きさが違います。ただ近衞邸の糸桜の大まかな特徴として、開花時期は京都で最も早い部類で3月15日~20日くらいに満開になり、花は白く小さめです。
他に遅咲きの紅枝垂れ桜も植えられており、こちらは濃いピンク色で、4月に入っても咲いています。写真的には、近衞池にかかる桜の巨木の枝越しに石橋を入れるとか、竹柵をアクセントに入れて太い幹と下がった枝を入れるとか、とっておきは池南端の椿の落ちた花越しに桜の枝が下がっているなどがあります。
ベンチや草原にシートを広げて弁当を食べる人や、隣接した児童公園に子供を遊ばせてのんびりする人など地元の憩いの場所だったのですが、最近は情報が広がり、外国人にも人気があるようです。
(近衞池そばの糸桜、このようなポートレート写真が撮れるので人気。
2025年はロープが張られてここまでは近づけないと思われる)
2022年完成の近衞邸跡休憩所は、享保元年創業の和菓子の老舗「笹屋伊織」が手掛けるカフェを併設した無料休憩所です。有職菓子司なので御苑に入るのは自然な感じですね?和菓子の枠にとどまらない新しい試みを行うという意味を込めて、店名は「SASAYAIORI+ 京都御苑」です。
(左:休憩所の南入口、木をふんだんに使った和建築
右:夕暮れの雰囲気は素晴らしいが、この時間は入れない)
見事な上生菓子以外にパフェやあんみつ、抹茶アイスなどがありますが、基本的に和スイーツがコンセプトです。特に人気は「福来(ふっくら)どらやき宇治抹茶スペシャル」1050円で、トッピングによって値段と内容が変わります。
(左:休憩所内はこじんまりとしている
右:上生菓子とお薄のセット1350円、お菓子は3種類あるが選べない)
上生菓子の3月は「宴」「春の舞」「花筏」と桜がテーマ、4月は「落し文」「藤棚」「藤花の宴」と藤などをテーマにしたものです。弘法市に合わせて販売される代表銘菓「どら焼」1棹1944円も毎月20日21日22日に買えます。外向きの席に座り、お菓子を食べながら花見をしたいものです。
「SASAYAIORI+ 京都御苑」
電話: 075-256-7177
営業時間: 10:00~16:30(ラストオーダー16:00)桜の時期は~17:00になります
定休日: 月曜日(月曜日が祝日の場合は翌平日・年末年始 )