琵琶湖疏水と聞いて思い浮かぶのは、動物園の北や平安神宮の大鳥居の前を流れてゆく姿でしょうか。しかし疏水は最後のトンネルを出た蹴上までの流れがあります。琵琶湖取水口からしばらく行くと、長等山を貫く第一トンネルがあります。このトンネルは当時日本最長でした。第一トンネルを抜けて日ノ岡山を貫く第三トンネルまでを通称山科疏水と言いますが、ここを散策します。
山科疏水の大部分には遊歩道があります。この約4kmの砂利道を行く人は、ジョギングや犬の散歩、自転車で抜け道する人など地元民がほとんどで、観光客はまばらで、岡崎界隈の疏水の観光客の何百分の一です。緑の歩道の途中には歴史的なものが埋もれています。それらを探すのも楽しみです。
岡崎の疏水と明らかに違うもの、それは水量の少なさです。なぜなら疏水には第一と第二があります。第二疏水は蹴上で第一と合流するのですが、観光的に話題に上がってきません。それは7423mのすべてがトンネルだからです。1885年(明治18年)着工の第一疏水、1908年(明治41年)着工の第二疏水の23年間に相当な土木技術の向上があったと思えます。第一疏水の当初の目的が水運だったのに対し、第二疏水は水道利用が目的だったので、汚染を防ぐため暗渠化されましたが、その後琵琶湖にアオコなどの水質悪化問題が起こるなど思いもよらなかったのでしょう。
山科疏水の正式名称は琵琶湖第一疏水です。余談ですが京都市は滋賀県に水代をいくら払っているかご存じですか?毎年2億3千万円で、これは法的な根拠のない感謝金だそうです。第三トンネル入口から大津に向かって歩いてゆきます。ノスタルジックなレンガ造りのトンネル入口には第4・6代総理大臣の松方正義揮ごうの扁額「過雨看松色」があります。すぐそばの日本初の鉄筋コンクリート橋「日ノ岡第11号橋」から見ると紅葉の巨木がかかり、一帯が紅葉します。日ノ岡取水池を通り過ぎ、公園沿いに第二トンネル出口があります。馬蹄形が特徴で、西郷隆盛の弟で、隆盛と覇権を争った西郷従道揮ごうの扁額「随山到水源」があります。
左は第三トンネル入口でここからスタート、右は馬蹄形の第二トンネル出口
入口はコンクリート造りで井上馨揮ごうの扁額「仁以山悦智為水歓」があります。そばに架かる山ノ谷橋を渡ると曹洞宗永興寺です。境内に歯車のようなモニュメントと日本一の木魚、道元禅師御一大絵巻などが寺宝です。
遊歩道を進むと朱塗りの正嫡橋を渡ると、鎌倉から六条堀川を経て当地に移ってきた日蓮宗本圀寺があります。
蹴上から大津までの疏水を走るびわこ疏水船
予約は「びわこ疏水船」Webで
古いコンクリート護岸を流れる疏水べりの木漏れ日の中を歩くと山科展望広場があり山科盆地を見渡せます。疏水が盆地の北側の高いところを掘削したのがよくわかります。真下にJR東海道線と京阪京津線が見えます。
ここから450m行くと「寺菓房せむい」があります。名前から想像できますが、高野山真言宗の安祥寺(あんしょうじ)内にあります。自分の子供に安心なお菓子を食べさせたいとの思いで始められ、添加物を使用していません。パイ生地以外米粉を使用し、素材にこだわったシンプルなお菓子が特徴です。庭の床几で食べられます。
寺菓房せむいの菓子、左は 生カスタードパイ350円
朝一作るこだわり米粉のカスタードに純生クリームを合わせたディプロマットクリームを
キャラメリゼしたパイの中に詰めてある
右はブラックココアマーブルシフォンケーキ 400円
新鮮な卵をたっぷりと使用し、オイルを使わずに仕上げたもので、
今まで味わったことのないシフォンケーキに出合える
寺の拝観に合わせた土日営業が多いです。必ずインスタ@terakabou_semuiか電話075-581-0853で問い合わせてください。住宅が迫ってくる毘沙門通に架かる安朱橋を山に向かうと毘沙門堂があります。毘沙門通を渡ると花の道、桜並木が続き、諸羽トンネルがあります。これは湖西線開通のため、昭和45年(1970年)に新たに作られたバイパストンネルです。ここにある諸羽船溜は昭和30年代小学校のプールになっていました。
元の疏水沿いに行くと四ノ宮船留、やがて自動車道が現れ高い土手の下に第一トンネル出口があります。
扁額は第3・9代総理大臣の山縣有朋の「廓其有容」です。