西陣桜の隠れた名所の後編です。寺之内通堀川を西へ渡り、数10m行くと北側にあるのが本門法華宗妙蓮寺です。妙蓮寺は日蓮大聖人の孫弟子の日像が開基した日蓮宗の寺院で、何度か移転を繰り返したのち、秀吉によってこの場所に移されました。北の守りに、秀吉がいくつもの寺院を西陣の地に移転させましたが、多くが日蓮宗なのは何か意図があったのでしょうか?
狭い寺之内通から入り御所から拝領した格式高い薬医門と呼ばれる山門をくぐります。すると目の前に巨大な袴腰鐘楼が出現します。そばにある八重桜の巨木越しに見る鐘楼は重厚です。少し奥には10月ごろから咲き始めて、4月初めに満開になる珍しい御会式桜も有名です。東端にずらりと塔頭が並んでいますが、その参道の桜並木も趣があります。
妙蓮寺を西へ智恵光院通まで行き、上立売通まで下がり少し西に入ったところにあるのが北向山雨法院(西陣聖天)です。雨法院は弘法大師を開基とし、東寺とともに栄えた大伽藍でしたが、応仁の乱で荒廃し、その後再興されましたが火災などにより現在は住宅地の一角にひっそりと佇んでいます。
しかし桜の季節になると狭い境内の賑わいが凄いです。本殿前の歓喜桜と呼ばれる八重桜が有名ですが、塀際にある御衣黄と呼ばれる緑色の桜や観音桜、松月桜など狭い境内に様々な桜が見られます。主に遅咲きなので見納めの桜として有名です。
雨法院から1㎞あまり真西に行った西大路沿いに平野神社があります。もともと平城宮の宮中に祀られていましたが、平安遷都と同時に現在の地に遷座されました。社格は伊勢神宮や上賀茂・下鴨神社と同格の高さです。歴代天皇が桜を奉納したので、早咲きから遅咲きまで60種類400本もあり、中には平野神社発祥の品種がいくつかあります。
平野神社の中門で奥が本殿、神紋は桜です。桜苑入口で、入場料が必要
「平野の夜桜」として江戸時代から全国的に知られていました。以前は境内中に縁台が置かれ、京都では珍しい「桜茶屋」が開設されて大変賑わっていたのですが、令和4年から廃止され、今は静かな夜桜が楽しめます。